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この異世界でかりそめの君と〜最悪の悪魔になった幼馴染を元に戻すため、僕は彼女と世界を壊す旅に出る〜  作者: 鳴尾リョウ


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第34話 破壊の力を振るう理由

「来い、デカブツ!」


 ダリアに向かって、巨大な拳が振るわれる。体の大きさに似合わず、動きが速い。僕ならあのプレッシャーだけで体がすくんでしまいそうだ。一発ももらえないことは彼女もわかっているのだろう。相手を引きつけながらも、間合いには入らないようにしている。


 彼女の奮戦に応えなければ。僕は弓を構え、矢をつがえる。エラーブ山地で精霊憑きのヤギを倒した時のことを思い出す。


 あの時は無我夢中だった。ダリアを傷つけられ怒りのままに矢を放つと、僕の感情に呼応したのか、破壊の力が矢に乗ってヤギの角を破壊した。あの時の力を意識的に使うんだ。


 深呼吸をして、意識を集中する。破壊の力を役立てるんだ。ダリアを助けるために。シズクを助けるために。


 大丈夫だ、出来る。ローレルの鎧に狙いを定める。


「ダリア、避けて!」


 僕の叫び声を聞くと、彼女は後ろに飛びのき、距離をとった。すかさず、僕は矢を放つ。対象に向かって真っすぐ飛んで矢は腕部に直撃した。


「やった!」


 これで暴走も止まる。そう思ったが、獲物を捕らえたはずの矢は鎧を破壊することも、突き刺さることもなく、床にぽとりと落ちた。


 嘘だろ。こんな時でも上手くいかないのか。


 精霊使いになれず、オリバーとシズクも助けられず、今まさに体を張って僕に託してくれたダリアにさえ報いることができないのか。


 ホールの床に膝をつき、高い天井を仰ぎ見る。やっぱり僕は……。


「諦めるな!」


 遠くから叫ぶような声が聞こえた。止むことがない猛攻をしのぎつつ、ダリアが声を張り上げている。


「まだ終わっていない。もう一度だ! お前は私を助けただろう。だから出来る。諦めるな、ラック!」


 彼女に初めて名前を呼ばれた気がした。強大な力を持つ悪魔であるダリアは人間に興味がないのだと思っていた。だが、どうだろう。彼女は僕に望みを託し、戦ってくれている。諦めるなと励ましてくれている。そこまでされて、ここで終われない。


 立ち上がり、再び弓矢を構える。やってやる。成功するまで何度も。


「しかし、こいつの攻撃も読めるようになってきた。いくら破壊力があったとしても、間合いにさえ入らなければ……」


 ダリアが紙一重で攻撃を避けようとしたその時、ローレルが繰り出した鉄の拳が刃の様に伸び、彼女を切り裂いた。


「くそっ、そんなのもありなのか」


 予想外の一撃で動きが鈍ったダリアに、追撃の手が迫る。このままではやられる。弓を引く手に力を込める。次の矢はミスできない。


 僕は不意にシズクの言葉を思い出していた。あれは精霊を呼ぶための修行に付き合ってもらった時だっけ。彼女は精霊を操るにはイメージが必要だと言っていた。僕の破壊の力も同じではないか? 僕が力を出せたのはどんな時だった? その時の条件を理解し、再現する。


 思わず笑ってしまう。本当に僕はどうしようもないほど馬鹿だった。


「くらえ!」


 僕の手から離れた矢は青白い光を帯びて、一直線に飛んでいく。ローレルを覆っていた鎧に直撃すると、結晶が砕けるような音を立て壊れた。


 考えるまでもなかった。僕の力は目の前の彼女を助けたいと強く思った時にだけ発動していたのだから。



「やった」


 ドレスを血で染めながらダリアはあっけに取られたような声を出した。


「まさか本当にあのデカブツを倒すとは」


「君とシズクのおかげだよ」


 近寄ってかけた言葉に彼女は不思議そうな顔をしていたが、照れくさいので説明は省いた。それに勝利に浸っている場合じゃない。最大の懸念がなくなった今、急いで宝玉の破壊に向かわなければ。


「急ごう、兵士が戻ってくる前に」


「わかっている。それでどこにあるんだ、宝玉は?」


 あれっ、何となく場所わかるっていってなかったっけ? ええい、勘で行くしかないか。


「……通路を進んだ奥にある鍵付きの部屋だ」


 声に驚き、振り返るとローレルが意識を取り戻していた。


「もう回復したのか」


「そんなはずあるか。もう体は動かない。とどめを刺すか?」


 彼は仰向けの状態で、かろうじて口だけを動かす。


「僕がそんなことをしないのは、君なら知っているだろ」


「……そうだな。お前はそういう奴だ」


 彼は少しだけ笑みを浮かべ、懐から鍵を取り出した。


「持っていけ。これで扉は開く」


 僕は鍵を受け取り、彼をじっと見つめて言った。


「ありがとう」


 精魂尽き果てたような彼の姿からは、国の守護者として戦うことの過酷さが感じられた。国のために戦うとはこういうことなのだ。自分を犠牲にし、民のためにその身を捧げる。障害となる者は排除する。たとえ愛する家族であっても。僕がローレルの立場であったら、国の命に逆らうことが出来ただろうか。


「……行こう」


 ダリアと共に宝玉へ向かうため立ち去ろうとした時、彼はぽつりと語りかけてきた。


「ラック、お前は間違えるなよ」


 これから悪魔の力を解こうとする僕は、その言葉には返事ができず先を急いだ。


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