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この異世界でかりそめの君と〜最悪の悪魔になった幼馴染を元に戻すため、僕は彼女と世界を壊す旅に出る〜  作者: 鳴尾リョウ


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第31話 パートナー

 ダンスホールには仮面を着けた来客がたくさんいた。彼らの誰もが仕立ての良いスーツやドレスで着飾っている。


「すごいね、みんなお金持ちなんだろうなあ」


「ふん、私のドレスも負けていない」


 胸を張ってそう言ったダリアを見て、僕は少し笑ってしまった。内心では僕もそう思っていたからだ。


「ところで、無事城の中に入れたが、策はあるのか?」


 封印である宝玉の破壊。それが僕らの目的だ。そのために僕はこの国に来てから、役に立ちそうな情報を仕入れていた。


「舞踏会では毎回、最優秀ペアが選ばれるんだ。そのペアには宝物庫で希望する品が贈られるらしい」


「なるほど。それで宝玉を頂くのか」


「それは無理だよ。国宝だからね。でも、うまくいけば宝玉を壊せるチャンスがある」


 ダリアは頷き、僕の意見を聞き入れた。


「わかった。残る問題は精霊使いがいつ襲ってくるかだな」


 ローレル。彼は必ず宝玉の破壊を阻止するだろう。だが、彼もこの国の守護者である限り、被害は出したくないはずだ。襲ってくるなら……。


「おそらく、舞踏会が終わるまでは大丈夫だと思う。そのあとは……」


「そのあとは?」


「……気合いかな?」


 そう言うと、ダリアは愉快そうに笑い、「だな」とだけ言って、食事が乗ったテーブルに向かった。開始時間までに食い貯めておくつもりらしい。


「さて、僕は庭までの道順を確認しておくか」


 仕込んである弓矢を取りに行く時間は最短でなくてはならない。いくらダリアでも一人ではそう持ち堪えられないはずだ。僕はホールから出て、庭へと向かった。


 確認が済み戻ってくると、ダンスホールの時計がボーンボーンと鳴り響き、進行役らしい男が来客に向かって話し始めた。


「本日はお越し頂き誠にありがとうございます。これより舞踏会を始めさせて頂きます。その前に国王陛下からのお言葉です」


 ホールの上部に向けて進行役が手を指し示すと、派手な衣装を身に着けた立派な髭の人物が立っていた。


「おほん。堅苦しい挨拶など不要。皆さん、今宵はダンスに興じましょう!」


 その言葉をきっかけに楽器の演奏が始まり、僕ら参加者はホールの中央付近に円になる様に集まった。


「それじゃあ、よろしく頼むよ」


「ああ」


 僕が伸ばした手をダリアが握り返し、舞踏会が始まった。


 

 大勢の中で踊ることに慣れていなかった僕らは、立ち上がりは不調だった。ホールには参加者がひしめき合っており、ステップを踏むと手狭に感じた。


「あっ、すみません」


 何度か隣にいるペアにぶつかりそうになり謝罪する。しかし、熟練者の余裕からか「大丈夫?」とこちらを気遣ってくれる。


 まずいぞ、こんなんじゃとても最優秀ペアなんて……。


 冷や汗をかきながら手足を動かしていると、急にダリアが立ち止まった。


「どうしたの?」


 こちらを見ている彼女の目は、仮面越しでもわかるほど真剣だった。


「落ち着け、飲まれるな。まずは深呼吸をしろ」


 鼻から息を大きく吸い込み、口から吐き出す。


「よし、次は姿勢の確認だ。背筋を伸ばし、肘の位置は高く保つ」


 僕は彼女と組んでいる手を高い位置にして、背筋を伸ばした。すると、さっきよりも視界が開けたような気がした。


 観客が楽しそうにダンスの参加者たちを見ている。踊りに参加していない人たちもこの空間を楽しんでいるんだ。……そうだ。今この場所には他人を非難するような人間はいない。思いっきり自分たちの踊りをすればいい。


「いけそうか?」


「うん、ありがとう。もう大丈夫!」


 パートナーに感謝し、再びステップを踏む。右足、左足と前後左右に足をさばいていく。よし、動ける。


 気持ちに余裕が出てくると、演奏されている音楽にも耳を傾けられるようになってきた。


 管弦楽の伸び伸びとした華やかなメロディ。聞いているだけで気分が高揚する。それにつられて、僕らの動きも動きが大きい、伸び伸びとしたものになっていった。

「なんだか楽しくなってきた」


「私もだ」


 ダリアは僕の動きに身を任せてくれ、しなやかに体を運んでいく。心なしか笑みがこぼれているようだ。


 曲も終盤に差し掛かり、つい思っていたことが漏れてしまった。


「いろいろあったけど、君がパートナーで良かった」


 彼女は返事をしなかった。聞こえていなかったのか、それとも、返答に困ったのかはわからない。


 最後のフィニッシュでダリアは体を大きく反らし、僕は彼女をしっかりと両手で抱え込んだ。周りからは参加者たちに大きな拍手が送られた。


「すばらしいダンスだった! それではさっそく審査を開始する。参加者たちはしばらく待機するように」


 酒を飲んでいるのか上機嫌になった王がそう宣言すると、参加者はそれぞれ散らばっていった。


「ダリア、僕たちも一息つこうか」


 一仕事終えほっとしたところで、二人で食事が乗ったテーブルの方に向かおうとした時、背筋が急に冷たくなった。


 見られている。それも相当な敵意を持って。


「……仮面を着けているとはいえ、目立ちすぎたな。すぐに仕掛けてくるぞ」


「えっ」


 まさかここで? 審査が終わり、再び王と司会が戻ってきて結果を発表する。


「えー、皆さま大変お待たせ致しました。それでは審査結果を発表します。今回の舞踏会、最優秀ペアは……」


 司会はその先の言葉を続けられなかった。ホールの後方で騒ぎが起こったからだ。


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