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僕は勇者の勇者になる  作者: 三浦サイラス
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25話 戦い後

この後、那谷羅を生き返らせたオレは、直後にぶっ倒れて病院に運ばれた。反動とのことで、それが何の反動なのかは説明されなくてもわかる。身体はあくまで普通の人間なのに無茶苦茶やったからな。数日間眠りっぱなしになってしまった。


 淀高も大騒ぎで、運動場が穴だらけだわ、全校生徒が倒れたわ、教師の役職が混乱してるわ、休校になるわ、オレが寝てる間えらい騒ぎだったらしい。まあ、もう全ては過去となって落ち着きを取り戻しているが。


 ここ何日かは嘘みたいな出来事の毎日だったが――それはきっとこれからも続いて行くだろう。ここで事件がピタッと止まる方が不自然だと思うしな。


 だって、どうしても勇者パーティについて予感がしてしまうのだ。勇者、剣士、魔道士と三人もコッチにやって来ているのだ。これで終わりとは思えない。剣士も魔道士も形は違えど勇者が大好きなヤツなので、次もその類いか? ま、なんでもいいけどな。


 面倒事がやってくるならどんとこいだ。ああ、いくらでも巻き込まれてやる。那谷羅も霧も燕崎も蕾も、知り合ってる人物が困ってるなら力になるさ。


 もちろん、それはオレ一人じゃとても解決できないモノだろう。というかそればっかりだと思う。

 だから、その時は誰かに頼る。オレは頼りまくる。


 以前、霧が言っていた。


 誰かに頼れば、その誰かがいないと何もできなくなると。


 でも、それは逆に考えれば、誰かに頼れば必ず何かができるようになるって事だ。それは素晴らしいことだとオレは思う。


 オレには友達(パーティ)がいるんだから、頼らないでどうすんだ。


 一人で解決する。一人で何でもやろうとする。オレはそんなおごりをもたない


 総理大臣になる男の器とはそういうモノだ。








「俺が渡したスマホには護符の効果があってな。道人、心梨ちゃん、朝霞ちゃんのスマホは、持ち主が状態異常の類いを受けると、それを防いでくれるんだ」



 オレは自室のベットで仰向けで寝ながら、新しく買ったスマホのスピーカーをオンにしていた。現代を生きる学生にスマホは必需品なので、退院してすぐに買った。最新とは程遠いが、これまで古すぎる機種を使い続けていたので最新機種にしか見えない。やったー! 念願のおニュースマホだー! はー、ネットがサクサクだぁ! これで最新じゃないとか、科学の力ってスゲー。


 「護符効果は所持した日数が経過するほど強くなっていく。だから長期間所持してた道人には催眠はきかず、短期間だった那谷羅ちゃんや燕崎ちゃんは途中で解ける、って結果になったんだ。もちろん、本人の気合いって部分もあってこその催眠解除だとは思うがな」



 電話相手は親父だ。新調したスマホの通話相手第一号は、砕けたスマホの謎を語ってくれている。


 ちなみに、なんでスマホが護符仕様なってるんだと聞いたら「今のガキんちょがいつも持ち歩くのはスマホだから」らしい。納得。オレにスマホを買ってなかったのも理屈では納得。



 「アンヴィラの催眠が効かなかったのはそういう理由だ。ああ、なんで防御効果を上回る攻撃をくらったらスマホが壊れるんじゃなく、砕けたのかは言わなくてもわかるだろ?」



 「いや、わからんけども」



 「おいおい、身代わりアイテムが強力な効果に耐えられず砕けるのはお決まりだろうが。もっとエンタメ読んでくれよ」



 身代わりになるから納得ではあるのだが、その知識元がエンタメでいいのか。



 「しかし、道人のスマホを砕くとはな。ルスパリトの所持者とはいえ、さすがは勇者パーティの魔道士って事か。道人の護符スマホは、並の魔道(デバフ)なら本人へ倍返しするくらいの効力があったんだがな。完全に無力化できない分を、体調の悪さに変換するのが精一杯とは恐れ入る」



 「あー、あの時最悪な気分になったのはそういう事か」



 ちなみにまた護符スマホを用意するのは難しいらしい。素材が希少品な上に、制作にも時間が必要で、何より今最もソレを欲してるのは親父だからと言われた。冒険家には危険がつきモノだからスマンと、わかるようでわからん理由を説明されている。



 「スマホの事はわかったよ。でも、オレが一番聞きたいのはソレじゃない」



 隠す気はないんだろう。護符、ルスパリト、勇者パーティなんて単語を出す親父は、もう間違い無い。



 「親父もディライドの裂け目に落ちてこっちに来た人間なのか?」



 親父は那谷羅や燕崎と同じく、マルリリク王国の出身者だ。



 「ああ、ずいぶんと前だがな。もともと国の相談役みたいな事をしてたんだが、疎まれちまったんだ。所謂、政争ってのに負けて裂け目に落とされたんだよ」



 昨日の夕飯でも語るかのように親父は自身がマルリリク人だと認めた。



 「驚いたか?」



 「那谷羅達と出会う前に聞いてたら驚いたかな。いや、それ以前に信じないか」



 燕崎やアンヴィラの一件に関わった当事者としては、親父がマルリリク人ってくらいじゃパンチが足りない。せめて那谷羅が倒した魔王は親父だった、くらいないとな。って、なんでオレは父親にエンタメ求めてんだ。



 「裂け目に落ちたヤツは世界各地ランダムに降ってくるから、できる限り見つけてやらなきゃならん。俺が冒険家やってる理由の一つだ。心梨ちゃんみたいな子には助力してあげたいし、アンヴィラみたいなヤツは捕まえとかないとマズい。まあ、今回はそのマズいせいで事件が起きちまったが」



 オレがその事件に巻き込まれた人間なので、親父はバツが悪そうに語る。



 「気にする必要なんかねぇよ。しょうがないだろ」



 具体的な事など何も知らないが、落ちたマルリリク人が起こす事件を全て未然に防ぐのは絶対に無理だ。犯罪ってヤツを防ぎきれないのは警察が証明している。抑止力にはなっても、事件そのものは消滅させられないのだ。親父がどんなに頑張ろうと、“漏れ”が発生するのは仕方無い事だった。



 「しかし、よく那谷羅と燕崎を見つけたよな親父」



 「それはたまたまだな。たぶん、二人が落ちたディライドの裂け目の場所が同じだったんだろう。だから、俺のいた所に心梨ちゃんと朝霞ちゃんが時間差で降ってきたんだ」



 二人が同じ場所に降ってきたのは理由ありだが、そこに親父がいたのは偶然だったのか。那谷羅が降ってきたおかげで蛇が食えてよかったな親父。



 「でも、なんで二人にイセカイへ行くよう言ったんだ?」



 「そんなの、イセカイにお前がいるからに決まってるだろ」



 さも当然のように親父は言った。



 「心理ちゃんが王国から逃げてきたの察せたからな。それならこの世界を楽しんでほしいと思ったんだ。それなら道人のいる所に行ってもらうのが一番だ。お前なら間違い無く心理ちゃんの友達になってくれるし、霧ちゃんもいるからな」



 一応、そうなんじゃないかとは思ってたが、はっきり言われると恥ずかしいな。



 「朝霞ちゃんも似たようなもんだ。お前なら二人が仲直りするきっかけなり、取り持つなりしてくれる確信があった。いやー、あの子怖かったなぁ。ギラついた目で俺に星剣突きつけて、心梨ちゃんの居場所聞いてくるんだもん」



 「そんなことされてたのか親父……」



 オレと似たような事をされてたらしい。たぶん、他にもオレの知らない被害者多数。



 「でも、オレって二人のきっかけになったか? 攫われただけだと思うが」



 「結果良ければ全て良しだ。攫われただけでも、それは立派なきっかけだよ。お前がいなきゃ二人は仲直りできなかった」



 まあ、言われればたしかに。妄想でしかないが、もし那谷羅と燕崎だけだったら、那谷羅はずっと燕崎から逃げていたと思う。会話どころか、会う事すら拒否してる気がする。



 「しかし、まあ今回は苦労かけたな。助かったよ」



 「勇者と剣士と疑似勇者がいたからな。魔道士くらいなんてことねーさ」



 「さすが総理大臣を目指す我が息子。頼もしいな、っと」



 親父は会話を中断すると、通話向こうにいる誰かと話し始めた。知らない言葉だ。少なくとも英語ではない。今、何処にいるんだろうか。



 「すまん。父と息子の水入らずな通話はここまでだ」



 「一応聞くけど、何やってんの?」



 「とある村にいてな。そこに裂け目から落ちて来たヤツがいるんだが、そのバカが魔獣召喚したせいで、怪獣大決戦が始まりそうに――あ、バカ! 何やってんだコラ! もう許さねえぞ! てめぇ覚悟しとけ――」



 「――切れた」



 通話向こうでスゴイ何かが起きたっぽいが、もう知る事はできない。 また親父と通話できるのはいつの日になるのか。その日が来たら顛末を聞くとしよう。



 「あ、そろそろ時間か」



 オレはベットから身を起こすと軽く自身の服や髪型をチェックして、自室の戸を開けると外へ向かった。


 今日はオレ、那谷羅、燕崎、霧、蕾の五人で北淀鹿島に遊びに行く。

 那谷羅の服を買いに行く、約束の日が今日なのだ。


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