村の人たち
小さな村の昼間は人口が少ないながら賑やかだ。賑やかでありながら和やかな雰囲気が満ちている。
「この村の穏やかな時間を守らないとね!」
翼は村の大通りで隣のアスカにそう語った。ふたりは地域の防衛監視任務を交代要員に任せ、村で休暇を楽しんでいる。
「敵が来れば倒す、それだけだろう」
辺境のダコ村、ただ一本の大通り兼広場に建物を並べただけの集落だ。村の周囲に畑でその向こうは里山。これらは村の産業の資源を提供する。
「あれは里山で採取をしにいく人たちかな」
翼は鉄砲とカゴを背負った人を指す。
「あ、あなたたちは守備隊の人ですよね?」
「わたしは雪内桃花、この村の住民です」
桃花はピンク色の髪をツインテールにしている少女。髪型だけは都会のイマドキ娘のようだが表情や服装は控えめだ。
「桃花ちゃん、この前は差し入れありがとね」
翼が笑顔でお礼を述べる。桃花は無言で一礼して答える。
「今日、村の集会所で小さな宴をやるんですよ、よかったらお二人も……」
アスカはそっぽを向く。
「遠慮していいか? オレは現地住民との交流は苦手だ」
「もーアスカくん、誇り高き帝国士官がそんな逃げ腰でどうするの!」
「あ、ああ……そうだな。人々の心を得ることは領土保持より重要だ」
士官学校で教わったことを口にするアスカ。
「そ、それで……おふたりにお願いしたいことが」
「ん? なになに、ボクたちじゃないとできないこと?」
翼は興味深そうに尋ねる。
「村のニワトリが逃げてしまったんです、それをみんなで探しているんですけど、手伝ってくれませんか? タマゴを産むニワトリはこの村の大切な存在ですので……」
「捕獲作戦か」
アスカは翼とアイコンタクト。
「うん、オッケーだよ」
「ありがとうございます、それでは詳しく説明しますね」
桃花はニワトリが何羽いて、どこで目撃されたか等の情報を教える。
「うちの村のニワトリたちには大きな体のボスがいるんです。他の子は村の人ならだれでも対処できるんですけど、あのボスは少々大変で……あなたたちに捕獲してほしいと思って」
「なるほど」
アスカは知り得た情報から推測する。
しばらく探し回って大きな体を持つニワトリを発見する。
「見つけた」
「わー、あれはタマゴを採るための家禽とは思えないね」
翼はそう感嘆の声をあげつつも近づく。
「さあ、お散歩は楽しかったでしょ~? そろそろ帰ろうか?」
翼は笑顔で近づく。すると飛べない鳥のわりに鋭い瞳のボスニワトリが警戒心なく近づいてきた。
「あはは、かわいいなー」
「お前、ニワトリの方から近づいてきたな」
翼の腕に優しく抱かれた大きなボスニワトリだった。




