動く山を動かす者
辺境守備隊、アスカと翼は今日も詰め所で警備する。翼は本部への通信に用いる無線機を整備する。
「わかってはいたが、ここは日常だな」
外を見ながらアスカがつぶやく。かつて先輩から言われた【常在戦場】という格言を思い出す。帝国士官たる者は常に厳しい戦場にいるように自らを律せよ。という教えだが、この重要度の低いこの地域では大して敵も来ない。
「昨日の宴な一番の思い出だったねえ」
翼は無線機の整備を終えてボルトを締める。そのとたんに通信が入ってきた。叫び声で自動的に音量が調整された。
“山が動いている!”
「ねえ、キミは村の自警団の人でしょ? 落ちついて、状況を説明して」
翼は真面目な顔をして冷静に説明することを求める。ゆっくりした声に相手も落ち着いたようだ。
“え、えーと……ノキーラ山の近く、バカでっかいヤツがでかいオノを振り回してるんだ!”
「それはオーク軍団の兵士じゃないかな? 詳しく教えて」
通話する翼の後ろでアスカは戦闘準備を整える。
「装備は斧だけ? それなら弓や投石器で対処できそうだね、命中しなくても足止めはできるはず」
アスカと翼は出撃。先頭を歩くアスカが双眼鏡で敵を確認する。
「自警団が弱体化させてくれたな、オレがトドメを刺してやる」
アスカはレイピアの柄を握り、翼に目配せする。その翼は魔法銃を構える。
「攻撃範囲内に入り、一瞬で仕留める」
ふたりは草むらをほふく前進で進む、小柄な少年士官であるふたりは巨大なオークに気づかれずに接近できた。
アスカが跳躍し抜刀する音が響く、オーク戦士がそちらを見上げる、翼の魔法銃が発砲、ヘッドショットで打撃を与え、直後にアスカのレイピアが貫いた。
「片付いたとはいえ、これは本部へ臨時報告するべきだね」
「……村への報告が先だ、あの慌て者の連中に教えてやれ」
「うん!」




