ひとりで十分、戦闘も料理も
敵対国や魔物の脅威の少ない辺境、人口も少なく大した産業もない村しかないような地域に大軍が守備に就くことはない。この地の防衛を任せられているのは少年士官である。
しかし誇り高き帝国士官は少数だろうが若造だろうが、強大な戦力となる。
「……なぜ応援を呼びにいかないんだ?」
たった一人の少年士官はそうつぶやく。相手は5体のゴブリンだ。
守備隊の少年士官アスカが持つ武器はレイピアだ。小柄な彼にはお似合いの武器、刀身も彼の身長に合わせて小ぶりで技と速さを活かした戦法を使うアスカに合致している。
そんな小さい兵士ひとりに5体で挑めば簡単に倒せそうと思うのは当然だが、アスカの瞳はレイピア以上に冷たく鋭い眼力を放ち、敵の威圧する。
5体のゴブリンは瞬時に切り伏せられた。
その時、アスカの背後からナタを振り上げたゴブリンが飛び出す。が、アスカが反転して一突きする方が早かった。
「オレに触れられるものなどない」
アスカはそう宣言してレイピアは鞘に納めた。そして拠点へ帰還する。
「アスカくん、おかえりー!」
アスカと一緒に配属されている同僚の天瀬翼。彼はアスカを笑顔で出迎えた。翼は料理をしているらしく、片手にお玉を握っている。
翼の笑顔にアスカはふっと笑みを浮かべる。
アスカはバッグを置いて開ける。
「森林で木の実を採取してきた」
バッグの奥から木の実を取り出して渡す。
「ありがとー!」
翼はそれを受け取るとすぐに調理を始める。
「何か手伝おうか?」
「へーきへーき、アスカ君は剣のお手入れを済ませたら?」
「悪いな」
アスカは翼の後ろで、レイピアの手入れを始める。
「さっき、村の人たちが差し入れしてくれたよ、だからそれでスープ作ってるんだ」
「ありがたいことだ、本部からの食糧配給は期待できないからな」
それは味の良さのことである。だから翼のような、マズい配給食糧を美味しく調理できるスキルを持つ料理上手な者は部隊では人気がある。
「ここは平和でのどかな場所だけど、魔物がいないわけじゃないから、ボクたちには期待されているんだろうねー。だからこうしてよく差し入れしてくれるんだろうね」
それは違うだろう、アスカはそう思った。この翼という少年の愛嬌の良さゆえだ。
「ん、良い味に仕上がったかな? アスカくんも味見してみる?」
小皿を渡されるアスカ、受け取る時、ふたりの手が触れる。ささいな出来事だ。
「期待通りだ」




