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君を好きになるのは、何度目だろう ~リセットを乗り越えた者だけが辿り着けるハーレム天国~  作者: 月雲 天音
第2章

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第8話 縮まらない距離

 凜と別れて、家に帰ると夕食の時間だった。


 食べ終えた後、ひかりにメッセージを送ってみる。


「今日はどうだった?」


 すぐに既読になり、返事が返ってくる。


「いきなり何?」

「今日は……」

「幼稚園から知ってる男子が、朝から鼻の下伸ばして、女の子に見惚れてたぐらいよ」

「思春期かしらね?」


「思春期じゃねーよ、ばーか」


「いや、かなたが、ばーか」


 いつもの通りだ。ひかりは、文字ではオレのことをひらがなで「かなた」と呼ぶ。

幼稚園の頃から変わらない。


 その後も何回かメッセージのやりとりをしたが、自然と途切れた。



 まぁ、ひかりへのメッセージはこんなもんか。



 優花さんがもし今日もバイトなら帰って来るのは10時過ぎ。まだ一時間以上ある。

 凛にメッセージを送ったり、お風呂に入ったりして、その時を待った。


 ドライヤーで髪を乾かしながら時計を見る。


――もうすぐ、10時。



――――――――――


 玄関のエントランスで待っていると、その女性は現れた。


 爽やかなライトブルーのカーディガンに、グレーのパンツを合わせ、きれいめで落ち着いた服装だ。


「優花さん、こんばんは」


「奏多くん、今朝ぶりね。こんばんは。こんな所で待ちぼうけ?」


「……うん、優花さんを待ってた」


「え?何?大人をからかっちゃダメよ」


「からかってないよ。本当だよ……今朝、久しぶりに優花さんと話したら、もっと優花さんと話したくなった」


「ふーーん。どういう風の吹きまわしかわからないけど、私で良ければ話し相手になるわよ」


 優花さんは、優しい。昔と変わらず。


 そんな優しい優花さんの心に踏み込むように、オレは次の言葉を投げかける。


「ねぇ、優花さんは彼氏、いるの?」


「うふふ。あらあら、この前までこんな小さかった男の子が、いきなりそんなこと聞いてくるなんて。時が経つのは早いなぁ」


 優花さんは、手で子供の頃の奏多の身長を示しながら、微笑んで答えた。


「で、いるの?」


 オレはさらに踏み込む。


「ふふふ。さぁ、どうでしょうね?そういう奏多くんは彼女いるんじゃないの?」


「オレはいないし。ねぇ……」


 そこまで、言いかけた時、優花さんが人差し指をオレの口元に近づけた。


「そこまで。しつこい男の子は嫌われちゃうぞ」

 

 軽くあしらわれただけなのに、妙に距離を感じた。


 優花さんは持っていたポーチの中を探り、ラップで包まれたドーナツを取り出した。


「今日の売れ残り。これあげる。今日はドーナツでも食べて、ゆっくり休むんだよ」


「あ、ありがとうございます」


「高校生もいろいろあるだろうし、今度ゆっくり話を聞いてあげるから、今日はこれでおしまいね」


 一度微笑んだあと、優花は背中を向けてバイバイと手を振る。


「じゃあね、高校生になった奏多くん」


「うん、またね、優花さん」



 優花の頭の上には、何も表示されていなかった。


――――――――――


 火曜日の朝。

 傘を差して登校していた。

 数日後には梅雨入りも発表されることだろう。

 

 オレはいつもの500メートルで凛と鉢合わせないようにゆっくり登校していた。

 


 昨日の喫茶店での別れ際、凛から提案があった。


「明日から学校では話さないようにしよう、ね。誰が攻略対象かわからない、から」


 凛の声は淋し気だった。


 電車で通学している凛は毎日ほぼ同じ時間にあの道を通る。


 この世界が始まってから、登校時に凜と会話をしない日は一度もなかった。


 それなのに、凛と一緒になって会話もしないで、知らないふりをするのは、かなり切ない。

 だったら、いっそのこと会わない方がいい。どうせ教室では顔を合わせることになるが。


 そんなことを考えながら歩いていると、交差点に到着し、学校に向かって曲がる。


「お、思春期の少年、おっはよー」


「おはよー。だから、思春期じゃねーし」


凛と会わない代わりに、声をかけて来たのはひかりだった。


「それにしても、よく降る雨ねー。雨もしたたるいい女とは私のことよ。おほほほほ」


 昔から知ってる花咲ひかりだ。そこには何も不自然なところはなかった。

 昨日一瞬感じた、わずかな違和感も、こうして話していると、気のせいだったように思えて来る。


 ひかりと昇降口まで一緒にしゃべりながら登校した。


 ただ、頭上の数字は昨日と同じとおり、緑色の『40』だった。




 教室に入ると、すぐに窓際の一番後ろの席を見る。


 凛と視線がぶつかる。


 

 凛が微笑み、オレも軽く微笑み返す。



 スマホが震える。


「おはよう、奏多」

「おはよー、凛」


 メッセージで挨拶を交わした。


 せっかく恋人になれたのに、


 こんな距離でいるなんて。


 ……近づけない。


 『攻略』のためだとしても、簡単に割り切ることができない。


 切ない思いが胸の中を支配していた。


ここから第2章です。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

17話まで、毎日21時に投稿予定です。良かったらブックマークして読みに通っていただけるととても嬉しいです。


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