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君を好きになるのは、何度目だろう。 ~一週間ループの先に待っているのは、ハーレム天国!?それとも……~  作者: 月雲 天音
第5章(奏多視点)

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第60話 ありのままの笑顔

 1月1日。


 オレは地元で一番大きな神社の鳥居の前にいた。

 多くの参拝客が、オレの前を行き来している。


 その人混みの中、近づいてくる彩芽を見つけた。


 彩芽は、オレより先に気づいたようで手を振りながら、駆け足でやって来た。


「かなたん、お待たせー。待ったでしょ?」


「いや、全然」


「うそだー。待っててくれてありがと。道が混んでてさ」


「そんなことより……髪飾り……」


「お、さすが、かなたん、気づきましたか。かなたんからもらった髪飾り、もらった時以来のお披露目でーす」


 今日の彩芽は、イヤリングも付けず、シンプルに髪を下ろしていた。それもあって、花柄の髪飾りがとても綺麗に彩芽の髪の上で、本当に一輪の花のように咲いていた。


「ね、似合ってる?可愛いでしょ?可愛い以外、選択肢ないでしょ?」


「選択肢、あるよ」


「えっ、いまいちとか言わないでよ」


「あやちゃん、めちゃくちゃ可愛い」


「結局、『可愛い』じゃん!」


「『めちゃくちゃ』が大事なんだよ。なんで今まで付けなかったの?山登りの時とか」


「えー!!山登りの時に付けられるわけないじゃん!!私だけかなたんからの髪飾り付けて行くなんて、そんな恥ずいことできないし!!」


「えー、そこで付けてくるのがあやちゃんじゃない?」


「できなーーい!!」


 言って、彩芽はケラケラと笑う。つられるようにオレも一緒に笑った。



 鳥居に向かって一礼した後、くぐる。

 参拝の列は、鳥居のすぐ手前まで長く伸びていた。

 オレと彩芽はその最後尾に並んだ。


 割とスイスイと列は進んでいく。

 参道の両脇には、たくさんの露店が並んでいる。


「ねぇ、かなたん、参拝した後、イカ焼き食べない?」


「え、イカ焼き?オレはりんご飴食べたい」


「えー、りんご飴?」


「オレ、甘いの好きだから」


「あはは、知ってるし。なら、イカ焼きとりんご飴ね!」


「いや、りんご飴とイカ焼きは同時に食べれないでしょ?まずはりんご飴だけね」


「な、何だと!?なら、イカ焼きが先でいいじゃん!イカ焼きの後のデザートでりんご飴」


「うーん。りんご飴から食べたい」


 二人は、笑い合いながら、他愛もない会話で盛り上がり、あっという間に参拝の順番が回ってきた。結局は、彩芽案を採用し、イカ焼きを二人で食べてから、りんご飴を1個ずつ買うことで決着した。



 いよいよ参拝の順番が来た。

 二人で一本の鈴緒を握り、二人で鈴を鳴らした。


 礼と拍手の後、手を合わせ、心の中でお願い事をした。


 参拝の後、彩芽が聞いてきた。


「ねぇ、かなたん。かなたんはどんなお願い事したの?」


「え、オレはいろいろ」


 彩芽は意味ありげに目を細める。


「いろいろねー。そりゃ、たくさんの女の子たちがいるから、願い事も多くなりますよねー」


「そ、そんなんじゃないし!」


 彩芽はケラケラ笑う。


「そ、そういう彩芽は、どんなお願いしたんだよ?」


「あたしは一つよ。来年もかなたんと初詣に来れますようにって」


「来年も……」


「そう、来年も」


 彩芽と一緒に初詣に来る来年を、オレたちは迎えることができるのだろうか……


 少しオレの顔が曇ったのかもしれない。

 彩芽は明るく言ってきた。


「あ、『二人きりで』とは、お願いしてないからね!凛ちゃんたちと一緒でも全然構わないからね。この色男!!」


 彩芽はまた笑った。



 彩芽は、学校の廊下で会ったときからよく笑っていた。そして、一緒に帰る帰り道でも、ひたすら笑っていた。

 なのに、親愛度は全く現れなかった。

 オレは、繰り返すうちに、彩芽の笑顔は周りを心配させないための笑顔、自分を守るための笑顔であることに気づき始めた。

 それに気づいたオレは、彩芽の心に土足で踏み込もうとして完全に拒絶された。


「……なんか残念。かなたんとは仲良くやっていけると思っていたのに」

「ううん、いいよ。かなたんの優しさだったと思うし。じゃあ、今日はこれで帰るわ。学校で会ったら、また楽しく話そうね。バイバーイ」


 そして、受け止めることの大切さに気づいた後の、プールでのデートを経て、次の日の彩芽の笑顔はそれまでと違っていた。


 今は自然と見せるようになった柔らかい笑顔。

 誰かを心配させないためでもない、自分を守るためでもない、ありのままの笑顔。


 彩芽は今でも、過去のことや、今苦しんでいることをオレに話すことはない。

 でも、それでいい。

 いつか話したいと思ったら話してくれればいい。話したくないなら、話さなくてもいい。


 オレはただ、ありのままの彩芽を受け止める。




 オレたちはお守り売り場に移動した。たくさんの人でごった返している。


「ねぇ、かなたん、おみくじ引こっ?」


「うん、いいね」


 お守り売り場の正面にあるおみくじコーナーを見る。子供おみくじ、恋愛おみくじ、たくさんのおみくじが並んでいる。オレたちは普通のおみくじを引くことにした。


「せーの、で同時に引くよ」


「待って、よく選ぶから」


「いくよー」


「「せーの!」」


 二人同時に掴んだおみくじを引き上げる。


「ではでは、かなたんから開いて!」


「え?そこは同時じゃないの?」


「だってドキドキするじゃん!」


「オレから開いたらドキドキしないの?」


「先にかなたんの大凶見といたら安心じゃない?」


「はぁ?何それ?てか、大凶は出ないだろ?」


「まぁまぁ。とにかく開いてくださいまし」


 納得はいかないが、彩芽に促されるまま、おみくじの紙を開いた。


 そこに書かれていたのは……


ーー凶。


「う、うわぁ」


「ちょ、ちょっと引き直していい?」


「ダメに決まってるでしょ。かなたんの今年の運勢は凶に決定でーす」


 彩芽はケラケラ笑う。


「じゃ、じゃあ、彩芽も開いてよ」


「あはは、かなたんの凶の後は気持ちが楽だわー。あたしが大吉引き当てて、かなたんにも運を分けてあげる」


「お、おう。よろしくな」


「それでは開きまーす!」


 彩芽は、目を輝かせながら、おみくじを開く。


 おみくじの結果は……



ーー凶。


「……」


「……」


「まぁ……」

「と、とりあえず……」


「りんご飴食べよ?」

「イカ焼き食べよ?」


 この後、二人が何を食べるかで再び揉めたのは、言うまでもない。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

月曜日と木曜日の21時に投稿します。引き続き、お読みいただければ嬉しいです。

ブックマーク、リアクション、評価、感想等、とても励みになります。いただけたら有難いです。

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