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君を好きになるのは、何度目だろう。 ~一週間ループの先に待っているのは、ハーレム天国!?それとも……~  作者: 月雲 天音
第5章(別視点)

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第57話 ひかりの軌跡5

 7月22日、月曜日。


 学校は夏休みに入った。

 情報コースは、課外はない。

 どうするか、悩みながらも、10時過ぎにかなたにメッセージを送った。


『思春期の少年、課外がんばっているか?』


『眠い。一応起きてる』


 かなたからの返事が来てホッとする。


 私のかなたとの接点は、ループしかなくなっている。


 だから、私はループのフリを続けるしかない。


 課外終わりのかなたを張り込んだが、普通にマンションに帰るだけだった。



 かなたは、今誰も攻略していないのだろうか?



 だったら、私を攻略すればいいのに。

 私にたくさんメッセージを送って、私に会いにくればいい。

 なぜそれをしないのだろう。

 まぁ、簡単に攻略されるつもりはないが。


 8月10日、月曜日。

 この日から、かなたのクラスの課外は休みに入った。


 私は、暑い中、かなたのマンションに向かう。

 かなたに動きはないまま、この周も過ぎて行く。


 8月15日、土曜日。

 この日は、動きがあった。

 午後3時、かなたは甚平を着てマンションから出てきた。


 夏祭りに行くのは、間違いない。

 今日、夏祭りが近くであるのは、凛ちゃんが住んでいる町だ。

 花火も上がる大きな祭りがある。


 かなたは凛ちゃんと夏祭りに行くのか。

 

 夏祭りの思い出を辿る。かなたがマンションに引っ越してから、マンションの近くで行われる夏祭りに行くようになった、1年目は、かなたが迷子になって大変だった覚えがある。二人で浴衣と甚平を着て、毎年かき氷を買ってもらって、並んで食べた。

 私たちが小学6年生の年から夏祭りは無くなった。でも、3年前から、秋祭りとして復活したという話を母から聞いた。


 秋祭り、かなたと行くことはできないだろうか、とふと思う。


 かなたの動向が確認できた私は、家に帰って、休んだ。



ーーーーーーーーーー


 8月19日、月曜日。

 この週から、かなたの課外は再開した。


 だが、私は朝の登校時間も放課後の下校時間も、張り込みはしなかった。

 かなたが彩芽を攻略してから1ヶ月が経っている。

 この間、かなたが、誰も攻略しようとしていないとは考えにくい。


 攻略しているのが、夕方や夜なのかもしれない。学校の生徒じゃないのかもしれない。

 

 そんなことも想定して、今日は夕方6時から、マンションの前の張り込みを開始した。


 


 何も動きがないまま、時間だけが過ぎていく。


 22時を過ぎ、さすがにもう帰ろうかと思っていた時だった。


 マンションのエントランスに、かなたが現れた。


 そして、まもなく一人の女性が外からエントランスに入ってきた。


 私は、その女性を知っている。


 

 確か、『優花』という名前だったはずだ。

 かなたがマンションに引っ越して、初めての夏祭りでかなたがはぐれた。その時、手を引いてかなたの親を探してくれたのが、優花という、その時はまだ少女だった。

 それから、私がマンションに遊びに行くと、よく優花と遭遇した。その度に彼女は愛想良く挨拶をしてくれた。それは、かなたと私が中学、高校と大きくなっていっても変わらなかった。かなたは優花に挨拶されると、少し恥ずかしそうな仕草をするようになった。年上の女性に照れているだけなのか、恋心が芽生えていたのかは、わからなかった。


 かなたは、優花に声をかけ、楽しそうに話す。かなたが待っていたのは優花だったのだろう。

 話は弾み、二人は一緒にマンションを出た。


 私は離れてあとを追う。

 二人が向かったのは、マンション裏公園だった。

 小さな公園だ。すべり台とブランコとベンチが一とつずつある。


 二人は並んでベンチに座った。


 私には虫の声と、遠くを走る車の音が聞こえていた。


 耳を澄ますと、二人の声がだいたいではあるが、聞き取れるようになった。

 二人は、夏祭りの迷子の時の話をしていたのがわかった。


 その思い出話に、もちろん私は出てこない。


 話は弾み、約1時間ほど話して、二人はマンションに戻った。


 

 この周は金曜日まで毎日、かなたは夜の公園で優花と会い、思い出話に花を咲かせた。



 次の周回でもかなたは、夜の公園で優花と会った。


 前の周に比べて、かなたがぐいぐい行っているのがわかった。

 しかし、そんなかなたを優花は、余裕を持って笑顔でかわしていた。



ーーーーーーーーーー



 8月が終わり、9月に入る。


 月曜日、新学期最初の朝。

 学校前の道路のいつもの場所。


「お、思春期の少年、おっはよー」


 私は、直接会ってのループの演技を再開した。


 そして、昼休み。

 私は、進学コースの教室の方の廊下で待機する。


 かなたが教室から出てくると、私は偶然通りかかったフリをする。


「順調そうね」

「何が?」

「学校生活、かな?」


 このループも、半ば強引に復活させた。


 ループが今、私とかなたを繋ぐ、たった一つの糸のように思えた。


 

 下校時間。かなたは彩芽と楽しそうに帰った。


 そして、夜22時過ぎ。かなたは、エントランスで優花さんと会い、夜の公園へ向かった。

 この週も、かなたは優花と木曜日まで会ったが、進展はなかったようだった。


 次の週もかなたは同じことを繰り返したが、進展はなかった。


 優花という女性は、本当に攻略対象なのだろうか?

 ただの同じマンションの住人。年も少し離れている。


 そんな人の攻略は諦めて、私にすればいいのに。


 

 この周になると、私は二人の会話を聞くことに飽きていた。

 公園から少し離れた電柱の影で二人を観察する。

 

 相変わらず、二人は楽しそうに話しているが、これまでの周回と何も変わらないようだった。



 9月21日、土曜日。


 私は、また朝からかなたのマンション前に来ていた。

 朝はパンを一つかじり、昼食を抜くのが当たり前になっている。

 家を出るとき、最近はやたらと母がうるさい。

 でも、そんなことは関係ない。


 私は、かなたから目を離すことはできない。


 午後6時前、優花がエントランス前に現れた。髪を綺麗に結い、メイクもしっかりとしている。

 それを引き立てるのが、紺色の浴衣だ。大柄の牡丹の花が上品に描かれている。


 私は、嫌な予感がする。

 だって、今日は秋祭りの日だ。

 優花がマンション前で待ち合わせするなんて、相手は一人しかいない。


 予感は的中した。甚平姿のかなたが現れ、優花と合流した。


 ああ、私の思い出が霞んでいく。

 あのお祭りは、かなたと何回も行ったお祭りだ。中止になる前の最後の年、小学六年生の時は、二人で行った。クラスの男子たちに目撃され、囃し立てられて、私は文句を言い返していた。かなたは何も気にしていないのか、その光景を見て笑っていた。


 私とかなたとの思い出が、優花という女性に、塗り替えられてしまう。


 私は、意識が遠くなる感覚がして、家に帰った。



 こんな世界、無かったことにしてほしい。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

月曜日と木曜日の21時に投稿します。引き続き、お読みいただければ嬉しいです。

ブックマーク、リアクション、評価、感想等、とても励みになります。いただけたら有難いです。

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