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君を好きになるのは、何度目だろう。 ~一週間ループの先に待っているのは、ハーレム天国!?それとも……~  作者: 月雲 天音
第5章(別視点)

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第54話 ひかりの軌跡2

 季節はどんどん過ぎてく。

 4月に咲いていた桜はとうに散り、すっかり葉桜になっている。


 5月25日、土曜日。

 なんとなく、かなたのことが気になり、かなたのマンション周辺に来ていた。先週の土曜日から2週続けてだ。

 先週は結局、かなたがマンションから出てくることはなかった。

 今日もまだ空気がひんやりする時間から、マンションの前に来ていた。


 私は何をしているんだろう、と思っていた。

 そんな時だった。


 かなたがマンションから出てきた。私は電柱の影に隠れる。

 かなたは駅の方へ向かって歩き始めた。

 

 私は見つからないように距離を置いてついていった。

 尾行なんてするのは初めてだった。


 かなたは駅に入り、切符を買い、電車に乗る。

 私は、交通系ICカードで改札を通り、かなたと同じ電車に乗った。


 3駅、移動し、かなたは電車を降りた。私も後を追う。

 

 改札で誰かを待つかなた。

 誰を待っているのかは、わかっている。


 待っていると、改札口から思った通りの人が出てきた。


 凛ちゃんだ。


 凛ちゃんは、水色のワンピースに、クリーム色のカーディガンを羽織っている。清楚で美しい。


 二人は少し会話をした後、バス停の方へ移動した。

 さすがに同じバスに乗るのは難しい。

 バスの行き先から、二人の行き先は予想ができた。

 あの大きな公園だろう。

 二人がバスで去った後、二人がいたバス停の時刻表を確認する。

 17分後に同じ行き先のバスが来る。

 私はそのバスに乗ることにした。


 バスが公園に着いた。

 公園は多くの人で賑わっている。

 この季節は、昼でもそこまで暑くはなく、公園を散歩するには最適な季節だ。


 この公園には小さい頃、かなたと何回か来たことがある。どちらかの親の車で連れてきてもらっていた。

 花見に来たこともあるが、私はこの季節に来るのが好きだった。

 新緑が風に揺れて綺麗で、かなたと一緒に走り回ってもそんなに暑くない。

 この公園には、かなたとの思い出が詰まっていた。


 懐かしんでいる場合ではない。

 私は、かなたを探す。きっとまだ桜並木の散歩コースを回っているだろう。

 私は、警戒しながらも早足で探す。

 5分ほどして、かなたを見つけた。もちろん凛ちゃんも一緒だ。

 

 バスに乗る前には握られていなかった二人の手が、今は繋がっていた。


 ああ、胸が痛い。


 私は、二人から離れる。

 中央の噴水広場付近の木陰で、息を整える。


 これぐらい、予想していたことだ。

 気持ちを強く持たなくちゃ。


 でも、私は何をしにここに来た?

 二人を見つけて何がしたかった?


 答えは出ない。


 40分ほどして、二人も噴水広場に到着した。


 私は、木陰から二人の様子を観察する。


 二人はベンチに座り、楽しそうに話していた。少し経ってから、凛ちゃんがバッグから何かを出した。


 かなたはそれを受け取る。何かの容器のように見える。

 ここまで来れば予想できる。お弁当か何かだろう。


 二人は何かを話している。


 その後、遠目でもわかった。


 凛ちゃんの目から光が消えた。


 ご飯系ではなく、サンドウィッチだったようだ。

 かなたはサンドウィッチを食べながら、必死に場を盛り上げようとしている。

 しかし、凛ちゃんは俯いたままだった。



 ああ、このデートは失敗だな。



 私はなぜか、かなたが可哀想に思えた。


 かなたも次第に元気を失っていく。


 二人とも口数が少なくなる。そして、二人は帰路に着いた。


 可哀想なかなた。でも、私は悲しくない。

 やはり、無理があるのだ。

 かなたは何度も繰り返していても、凛ちゃんにとっては、たったの一週間。そんな限られた時間で、お互いのことをわかり合い、恋に落ちるなんて不可能だ。


 この公園は、私とかなただけの、良き思い出の場所であればいい。


 私は、元気を取り戻し、かなたたちに遅れて帰路に着いた。



ーーーーーーーーーー


 5月27日、月曜日。

 

 通学路でかなたを見つける。

 かなたは、先週と同じように、凛ちゃんに声をかけている。


 まだ諦めないのか、先週つらい思いをしたのに。


 かなたは、いつの間にこんなに根気強くなったのだろう。


 この週、かなたは先週までと同じように凛ちゃんと仲良くなっていったようだった。



 そして、土曜日を迎える。


 私は、先週と同じように、マンションの前でかなたを待つ。

 かなたは先週と同じ時間にマンションから出てきた。


 電車で移動し、駅の改札口の前。かなたは凛ちゃんを待つ。


 凛ちゃんは、先週と同じように改札口から駆け寄ってきた。


 先週と同じ水色のワンピースにカーディガン姿だった。


 二人は公園へ移動する。私も一本遅いバスで追いかける。


 今日は二人を探すことはせず、噴水広場の木陰で待つ。


 噴水を見ていると思い出す。夏場にかなたと来たときは、二人とも噴水の周囲の浅い、水が溜まるエリアで水遊びをして遊んだものだった。

 水浸しになり、二人ではしゃいで遊んだものだった。

 ちゃんと着替えは持ってきており、着替えて帰った。


 夏も楽しかったな。

 でも、やっぱり好きなのはこの季節だ。


 思い出に浸っていると、手を繋いだ二人が噴水広場に到着した。


 ベンチに座り、少し会話をした後、かなたはタッパーを受け取る。


 タッパーを開き、かなたが何か言葉を発する。


 凛ちゃんの表情は曇る。


 ああ、先週とまた同じか。


 そう思っていた。


 でも、そこからが違った。


 凛ちゃんの表情は先週と同じように曇っている。


 かなたは、何かを一生懸命語っている。


 かなたは、サンドウィッチを口にする。


 また、会話をする。


 かなたはサンドウィッチを一つ取り出し、凛ちゃんの方に向ける。


 かなたが手に持ったままのサンドウィッチを、凛ちゃんは食べた。


 二人は笑い合う。


 そして、凛ちゃんは涙を流した。


 成功した。

 二人が何かを乗り越えたのがわかる。


 かなたは、先週の失敗から何かを修正した。それが功を奏したのだろう。

 

 こんなのズルだ。現実世界ではあり得ない。

 かなたは、一週間ループを見事に利用し、ゴールに向かっている。


 そんなの許されるのだろうか。


 わかる、かなたはこの世界を理解し、この世界の仕組みを最大限に生かしているだけだということは。

 それでも受け入れ難い。

 先週失敗したデートをループで成功させる。

 そんなのが正しいとは思えない。


 私の思いなど知らず、二人は楽しくサンドウィッチを食べ終え、しばらく会話した後、手を繋いで公園の緑の中へ消えていった。


 もうここまでで十分だ。

 かなたは、今日か明日にでも、凛ちゃんの親愛度を『100』にするだろう。


 私は、どうしたらいい?

 月曜日にでも真相を明かして、私の親愛度を『100』にしてほしいと、かなたに言う?

 それは、何か違う気がする。

 

 この世界が無ければ、かなたと凛ちゃんが結ばれることはなかったはずだ。

 

 じゃあ、私とかなたは結ばれていたのか?

 確実とは言えない。でも、その可能性は低くはなかったはずだ。

 私はかなたの恋人のうちの一人になりたいわけじゃない。

 

 ただ一人のかなたの恋人に……私はなりたい。



ーーーーーーーーーー


 6月3日、月曜日。


 通学路でかなたを見つける。

 後ろから、かなたの頭上を確認する。

 親愛度は『50』のままだ。

 私はホッとする。


 いつも通り距離を置いて歩く。


 学校500メートル手前の交差点。

 かなたが、凛ちゃんを探すまでもなく、凛ちゃんが待ち構えていた。


 二人は会話を交わす。

 先週までの二人ではない。

 確かな信頼関係が二人から、感じられた。


 二人は正門前まで会話を続けた。

 二人が別れた。


 私はどうすべき?


 一瞬考える。

 でも、考えている暇はない。


 慌ててかなたの前に飛び出す。


「……かなた、おっはよーー!」


 何とかいつもの言葉を振り絞る。


 いつもと言い方が、違った。

 フレーズは同じだが、いつものあっけらかんとした雰囲気で声をかけられなかった。

 でも、続けるしかない。


「……何、ぼーっとしてるの?早く行かないと遅刻するよ」


 かなたに一瞬、間があった。

 だが、


「おう、おはよっ。てか、別にぼーーっとしてねーし」


 いつもの返事が返ってきた。

 私は調子を取り戻す。


「嘘ばっかり。美女に見惚れてたでしょ?このひかり様の目はごまかせませんことよ」

「おほほほほ」

 私は何とか乗り切った。

 そのはずだった。


 かなたが、確認するように私の頭上を見る。


 その後だった。


 『50』だった、かなたの頭上の数字が黄色から緑に変わる。


 そして、


 『49』『48』『47』……


 数字が、下がり始めた。


 何だこれは?

 何が起きている?


『46』『45』『44』……


 私は、なす術もなく数字を見続ける。


『43』『42』『41』……


 私は、気分が悪くなる。


『40』


 その数字はピタリと止まった。

 私は吐き気がする。


 かなたも立ち尽くしている。

 かなたの目には何が見えている?


 私は状況を打開すべく、やっとの思いで、


「ほら、行くよ」



 私はかなたの手を引いた。

 下がった親愛度にショックを受けながらも、私はなんとかループを継続した。


 そんなことなど何も知らないかなたは、いつものようにすぐに手を離し、校舎に向かった。


 待って!かなた!

 私を助けて!


 私の心の声はかなたには届かない。


 かなたが教室に向かったのを確認し、私はトイレへ行った。



 そして、嘔吐した。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

月曜日と木曜日の21時に投稿します。引き続き、お読みいただければ嬉しいです。

ブックマーク、リアクション、評価、感想等、とても励みになります。いただけたら有難いです。

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