第51話 早めのクリスマス会(前編)
5人でドゥ・アメールで会ったあの日から、1ヶ月余りが過ぎた。
今日から12月だ。季節はすっかり冬になっている。
ひかりの話はいったん置いておこう。
今日は特別な日だからだ。
真央が再び上京し、再出発する日。
そんな大切な日に、オレたち5人は集まることになっていた。
真央以外の4人は、迎えに来た黒いワゴン車で移動した。
着いたマンションの5階の一室に案内された。
扉を開くと、暖房がすでに効いている。
茶色が基調のモダンな作りのマンションだ。
玄関で靴を脱いで上がり、リビングの扉を開く。
「先輩方、こんにちは。ただいま帰って来ました」
「真央、おかえりなさい」
「真央ちゃん、おかえり、だよ」
「まおまお、待ってたよー」
「おかえりなさい、真央ちゃん」
「はい、ただいまです」
4人が真央を囲む。その後方から声がする。樫木さん、真央のマネージャーだ。今日も黒いスーツを着ている。
「今日は、この部屋で楽しい時間を過ごしてください。ですが、くれぐれも勝手にマンションから出ないようにお願いします。特に、早川さんは学校の騒動でマスコミからも世間からもマークされてますので、最大限の警戒をお願いします」
「わ、わかりました」
「自業自得」
凛が添える。
「それから、トイレはもちろんですが、お話をいただいていたキッチンもシャワーも全て自由に使っていただいて構いません。宅配ピザには白草さんが、対応をお願いします。住所と名義は早川さんにお伝えした通りです」
「わかりました」
優花さんが丁寧に答える。
「その他、わからないことがありましたら、私に電話をください。くれぐれも、早川さんは気をつけてくださいね。それでは、失礼します」
樫木さんは、一度オレに視線を送った後、部屋を出ようとして、もう一度、振り返る。
「真央、今日は楽しい時間を過ごしてね」
「はい、今日はありがとうございます」
樫木さんは、お辞儀をした後、部屋を出て行った。
彩芽が目をキラキラさせる。
「それじゃあ、『ちょっと早いけど、まおまおおかえりなさい!クリスマス会』の準備を始めよう!」
右手の拳を突き上げながら、楽しそうに彩芽が言った。
「長い名前、だね」
「でも、楽しそうだからいいんじゃないかしら」
「先輩、素敵です。ありがとうございます」
3人がそれぞれ答える。
オレが、話を進める。
「それじゃあ、役割分担を確認しようか?優花さんと凛が、料理担当」
「うん、任せて」
「凛ちゃん、がんばりましょうね」
「で、オレと真央が飾り付け担当」
「わ、わかりました」
「以上」
「ちょ、ちょっと待って。あたしは?あたしの担当は何?」
「あ、忘れてた。あやちゃんは……盛り上げ担当」
「ぷっ、何ですか?その担当」
初見の真央が吹き出す。
「あやちゃんの定位置だから」
「あやむん、よろしく、ね」
「あやむん、頼むわよー」
「任せてー!じゃんじゃん盛り上げるからねー!タンバリン叩こうか?」
「先輩……それでいいんですね。うふふ」
また真央が笑う。
ーーーーーーーーーー
それぞれに分かれて準備を始める。
優花さんと凛は、ここに来る前に買ってきた材料を確認する。
オレは、真央に買ってきた飾りを見せながら、一緒に作戦を練る。
彩芽は、冷蔵庫に入ってるケーキの箱を見つけて大はしゃぎしている。
「これ、有名ホテルのケーキじゃん!樫木さん、ナイスぅうう!!」
彩芽は担当らしく無意識に場を盛り上げている。
優花さんと凛が調理に取り掛かる。
凛が、オレとのデートのために料理を覚え始めてから、まだそれほど経っていない。
優花さんは、大学生になってから、朝食と家族分のお弁当を作っているそうだ。
「凛ちゃん、包丁使い上手ね!」
「えへへ、ありがとう。味付けのコツ、教えて、ね」
二人は仲良く調理を進める。
オレと真央は飾り付けを始める。
「先輩、ここ届かないです。助けてください」
つま先立ちの真央が助けを求める。
オレはすぐに駆け寄り、真央が抑えてる飾りに手を伸ばす。
「先輩、助かりました」
「おう、まかせろ」
そんなやりとりをしている横で、彩芽が鼻歌を歌いながら、何やら作業をしている。
「ルンルルン、ルンルルン」
細長く切られた白い紙に、カラフルな字を書いていた。
『ちょっと早いけど、まおまおおかえり!クリスマスパーティー』
彩芽らしく、可愛く書いていく。トナカイやツリー、サンタのイラストを添えていく。
そんな中、キッチンから声がかかる。
「奏多くん、ちょっといいかしら」
優花さんだ。
「うん、いいよ。どうしたの?」
「奏多にちょっと味見してほしい、よ」
凛が少し頬を染めて答えた。
「え、味見?するするするー!ここはあたしの出番でしょ?」
横断幕を書いていたはずの彩芽がすぐにキッチンに駆けていく。
「奏多に味見してほしかった、のに」
凛は不満を漏らす。
「うふふ、残念だったねー」
優花さんが苦笑いをしながら凛を慰める。
そんなこんなでパーティーの準備は進んでいった。
いよいよパーティーを始めようかという時、優花さんが楽しそうに話し始めた。
「みんな、ちょっと待って。今日は用意してあるものがあるんだー」
優花さんは大きな袋を取り出した。
優花さんに促され、彩芽と凛が袋に手を伸ばす。
「こ、これは……」
「サンタクロースの衣装、だね」
「せっかくのクリスマス会だからと思って。女性陣はみんなサンタさんになっちゃいましょ!奏多くんも喜んでくれるでしょ?」
優花さんは最後いたずらっぽくオレに視線を送る。
オレは、ドキリとしながら返事に困っていた。
「わ、私の分もあるんですか?」
戸惑いがちに真央が尋ねる。
「もちろんよ!」
「わ、わかりました」
真央は恥ずかしそうに答えた。
「ちなみに奏多くんも衣装あるよ。サンタじゃないけど」
「えっ?」
オレは衣装を見て固まった。
長くなったので2話に分けました。
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