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君を好きになるのは、何度目だろう。 ~一週間ループの先に待っているのは、ハーレム天国!?それとも……~  作者: 月雲 天音
第4章

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第49話 一筋の光(A Ray of Light)

 真央は、一人でステージの上に立っていた。

 Re:inの他のメンバーもスタッフも、真央なしでどうやって今日の公演を乗り切るか、緊急ミーティング中だ。


 真央は白い衣装を着ていた。

 それは、奏多が最初の周にテレビで観た衣装だった。


 オレは真央からもらったチケットの席、最前列の中央に立つ。


 真央は、ラップパートが終わり、自分のパートが始まる前のポーズを取る。


 そして、歌い始めた。


 『A Ray of Light』


 広いホールにオケも無く、真央の歌声だけが響き渡る。


 力強くも繊細に、気持ちを込めて真央は歌っていく。



 何も希望を見つけられず、くじけそうになっていた少女が歌と出会う。

 彼女が口ずさんだ歌声は、やがて人々の心を動かしていく。

 彼女の歌声は希望になる、死の淵をさまよった病気の少女の、目の前の現実に絶望した青年の。

 かつて、希望を探し続けていた少女自身が、いつしか多くの人にとっての『一筋の光』になっていた。

 そして、その事実が今度は、少女自身を導く希望の光になる。



 そんな内容の歌詞だった。


 この曲は、Maoがメインボーカルを務めることを前提として作られた、Maoのための曲だった。


 真央はたった一人の観客と、自分自身のために最後まで歌い上げた。



 オレは、精一杯の拍手を送る。


 真央は最後に丁寧にお辞儀をした。


 マイクを持ったまま、ステージ上の一番前、オレの目の前まで来る。


「先輩、今日はありがとうございました」


「お礼を言うの、今日、何度目?」


「何度でも言わせてください」


「うん、何度でも言ってよし」


「もうホール周辺には多くのファンが集まっています。Re:inの歌声を聴くために」


「うん」


「今日、歌えないことは本当に残念です。ファンの皆さんに申し訳ないです。メンバーやスタッフさんたちにもたくさん迷惑をかけてしまいます」


「うん」


「それでも私は選びました。今日、歌わないことを」


「うん」


「きっかけは先輩にかけられた言葉でした。でも、私は自分で選びました」


「うん、そうだね」


「褒めてください、私のことを。今日の私のこと、褒めてください」


「うん、よく決めたね。真央、偉いよ」


「ありがとうございます、先輩。私は、自分の病と闘います。きっと打ち勝ってみせます」


「うん、真央ならできるよ」



「できません」



 思いがけない真央の言葉に驚く。


「え?できないって……」


「……私ひとりじゃできません……だから、先輩が隣にいてください」


 真央が、かがんでステージの上から手を伸ばす。


 オレはステージに上がり、真央の手を取る。


 そして、二人で立ち上がる。


「先輩、これからずっと、私の隣にいてくださいね」


「うん、約束する。真央もオレの隣にいてくれるの?」


「もちろんです。私もずっと先輩の隣にいます」


 真央が笑顔で答えた。その直後だった。


 真央が、動きを止める。



「え、何、これ……」



 オレは知っている。何度もこの光景を見てきた。


 オレはもう真央の頭上の数字に目を向けない。


 真央を見ていればわかるからだ。


 過去の記憶がどんどん真央に流れ込んでいく。


 遠くを見つめる真央の表情が、微笑んだかと思えば、苦しそうに歪む。


 しばらく経ち、真央の目がしっかりオレを捉える。


「先輩……」


「真央、大丈夫か?」


「先輩……」


「どうした?ほんとに大丈夫?」


「先輩!」


 真央は、両手でオレの両手を掴む。


「先輩!何度もズルしてたんですね!」


「えっ?」


「『えっ?』じゃ、ありませんよ。チョコレートも、デモテープもズルじゃないですか!」


「き、記憶、戻ったんだね」


「『記憶、戻ったんだね』じゃ、ありません!ごまかさないでください」


 真央は、オレの言い方真似した後、楽しそうにオレを問い詰めてくる。


「あれだよ、楽しくするための冗談。真央も楽しかっただろ?」


「楽しくないです。見てないはずなのに当てられたら、ビビりますって。もう!ホントに先輩は……」


 笑っていたはずの真央の目から涙がこぼれ始める。


「でも、ズルしたこと、許します……先輩は、何度も何度も苦しんでいる私を助けて、声の出ない私と連絡先を交換して……何度も何度も笑わせて、励ましてくれました」


 笑いながらも、涙は止まらない。


「そんな先輩が、私は好きです。記憶が戻った今だから、はっきり言えます。私は、先輩のことが大好きです」


 真央の突然の告白にオレは驚く。


 オレは、頭の中で真央との思い出をたどる。

 そして、自分の正直な気持ちを伝える。


「オレも真央のことが好きだ。これからもずっと隣にいてほしい」


 少し恥じらいながら、オレは続ける。


「そして、これからもオレに甘えろ」


 ぱぁっと、真央の表情に花が咲く。


「う、嬉しいです。これからもずっとずっと隣にいます。いっぱいいっぱい甘えます」


 握り合っていた手は自然と解け、抱きしめ合う。


 真央が耳元で囁く。


「先輩は、真央にとって、かけがえのない光です。ずっとずっとそばにいてください」


「うん、わかった」


 オレは抱きしめる手に力を込める。


 真央はもう、一人で光を探し続ける少女ではない。

 そしてオレにとっても、真央はかけがえのない一筋の光だった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

月曜日と木曜日の21時に投稿します。引き続き、お読みいただければ嬉しいです。

ブックマーク、リアクション、評価、感想等、とても励みになります。いただけたら有難いです。

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