第44話 『約束ですよ、先輩』
火曜日の登校時。
いつもの曲がり角で、凛と合流する。
「「おはよう」」
二人の声が重なる。
いつも通り学校へ向かう。
その時だった。
「おっはよーー!!」
この元気のいい声は一人しかいない。
「あやむん、おはよう」
「おはよう、早いね」
「ふっふっふ、二人と一緒に登校するためにいつもより10分早起きした!」
「無理しなくていいのに、ね」
凛が珍しく少しいじわるを言う。
「りんりんにばかり、かなたんを独占させる訳にはいきませーん」
「下校は、いつも、二人きりだよ、ね?」
「だって、お弁当はかなたんとりんりんが二人きりじゃん?」
「二人きりじゃない、よ。教室にたくさん人がいる、ね」
「ブブー。かなたんを独占していることには変わりありませーん。あ、あたしも二人と一緒にお弁当食べるようにしようかな?名案じゃない?」
「あやむん、それは、ダメ」
「えー、なんで?」
「朝の登校は一緒でもいい、よ。でも、お弁当の時間は私の物」
「ちっ、りんりんが譲らないなら仕方ないかー。下校時間だけで我慢するよ」
「そうして、ね」
近頃、凛もしっかり主張するところは主張するようになってきたな。
そんなことを思いながら、歩いていると、ひかりが見えた。
ひかりは、オレに気付いて一瞬目が合う。そして、オレをほんの一瞬、睨みつけたように見えたが、すぐに目を逸らして、校舎の中へ消えていった。
遠くてもしっかり見えた。ひかりの親愛度は『20』に下がっていた。
凛はクラスの友達と合流することはせず、彩芽とやりとりしながら、昇降口へ歩いていく。
オレはひかりのことは、二人には話さず、一緒に昇降口へ向かった。
――――――――――
二時間目の休み時間、真央と『修行僧』のメッセージで盛り上がった。
昼休みは凛とお弁当を食べ、放課後は彩芽と下校した。
自分の部屋に着いてから、まずひかりにメッセージを送った。
『ひかり、最近元気?』
あえて、朝の出来事には触れなかった。
しばらくして、既読が付き、そこからまたしばらくして、返事が来た。
『うん』
ただ、その一言だけだった。
明らかに様子がおかしい。ひかりの親愛度が下がった影響だろうか。
以前のひかりなら、『急にどうした?思春期の少年』とか、返してきたはずだ。
それが今は『うん』だけ。
あまりにもひかりらしくなかった。
それ以上送る言葉が思いつかず、ひかりとのやりとりは一往復で終わった。
次に、真央にメッセージを送った。
『修行は順調?』
既読が付き、返事が来る。
『絶賛、業火の中で修行中です』
メラメラと背景と目が燃えているうさぎのスタンプが届いた。
『ほ、ほどほどに頑張ってね』
『ほどほどなんて、無理です。トップアーティストになるため、私自身も燃えていきます』
『燃え尽きないようにね』
『心配は無用です。私は時には、光になり、炎にもなります。私は不滅です』
何言ってるのかわからなかったが、無理していることだけは伝わってきた。
『オレがついてるからな』
『ありがとうございます、先輩。頼りにしてます』
――――――――――
水曜日は、朝、昼、夜と前の周と同じやりとりを繰り返した。
木曜日。
この周でも、あれこれ聞いてみる。
『おはよう、今日は何の修行をしてる?』
『秘密です』
『収録?』
『秘密です』
『レッスン?』
『秘密です』
『レコーディング?』
『秘密です』
『じゃあ、学校?』
『秘密です』
『もしかしてデート?』
『……ご想像にお任せします。(笑)』
何だ、それ。
結局木曜日に何をしているのか、この周でも明かされなかった。
――――――――――
金曜日。
久しぶりに、『ドゥ・アメール』に3人集まり、作戦会議をしていた。
真央とは、朝から過去2周と同じやりとりをして夕方のメッセージにたどり着いていた。
『先輩、お疲れ様です』
『リハーサル終わって、次はボーカルレッスンです』
『今日、コンビニで買ったチョコ、おいしかったです』
オレは画像が送られる前にメッセージを送る。
『期間限定マロンチョコかな?』
『ブブー、外れです。マロンチョコは期間終了しました』
スタンダードなミルクチョコを掲げた写真が届く。
『ちっ、外れたか』
『当てに来るの面白いですね。』
『何か当ててほしいことある?』
『今からあるボイスレーニング、どのくらい怒られますか?』
『ふむ……雷警報が出てるけど、その後、オレが慰めてあげるから大丈夫』
『うう、本当に慰めてくださいね』
『任せて!』
『約束ですよ、先輩』
火曜日の『先輩、頼りにしてます』は社交辞令ぽかったけど、今回は少し変わって来ているように感じた。
真央は少しずつオレを頼ろうとしている。
その期待を裏切りたくないと思った。
こちら木曜日分です。予約せずに投下してしまいました(汗)
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
月曜日と木曜日の21時に投稿します。引き続き、お読みいただければ嬉しいです。
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(こっそり)山登りの2話に挿絵を入れています。興味ある方はぜひご覧ください。




