第41話 山登り(前編)
日曜日。
朝8時前、マンションの前で待っていると、彩芽が歩いてやって来た。
「おっはよー、かなたん!」
「おはよう。ってか、その服装……山登りだよ?」
オレは思わず聞いてしまった。
髪は下したままでウエーブがかかっていて、左目の上のあたりに、水色の髪留めをしている。上着に水色と白の組み合わせのカラーブロックのウインドブレーカーを前開きで羽織り、中には白地に派手目のヤシの木の絵がプリントされたTシャツを着ている。
下は、デニムのショートパンツに白地のベルトを巻き、ベルトの余りを前で垂らしている。そして、足元には、ナイキのシューズを履いている。ロゴは水色で、靴下も白地に水色の2本ラインが入っている。
全体的に、水色で統一されたコーデで彩芽の明るさと可愛さをひきたてている。
だが、山登りにはどうなのだろう。
「えへへ。可愛いでしょ?かなたん、惚れ直した?」
「可愛いけど、登山道で目立ちそう」
「みんなの注目の的になってみせる!」
「山登りだよ?」
「頂上で写真撮るでしょ?絶対盛れる方がいいじゃん!」
「それが目的か……」
彩芽と会話が盛り上がっていると、白の軽自動車が、オレたちの前で止まった。
窓が開き、
「奏多くん、あやむん、おはよう!」
優花さんが声を掛けて来た。
今日は母親の車を借りてきてくれている。
「おはよう、優花さん」
「おっはよー、ゆかたん、今日はよろしくねー」
「あら、あやむん、可愛い服装ね。一日楽しもうね。さぁ、乗って乗って」
優花さんに促されて、車に乗り込む。オレが助手席、彩芽が後部座席に座った。
「優花さん、運転よろしくね」
「うん、まだ初心者だから安全運転を心がけるわ」
「それでは、しゅっぱーーつ!」
「さすが、盛り上げ担当ね」
彩芽を中心にわちゃわちゃしながら、まずは凛の住む町を目指した。
――――――――――
車を30分ほど走らせると、凛の家の前に着いた。日曜日の朝ということもあり、予定より10分ほど早く着いた。
戸建ての家の前で凛は、佇んで待っていた。
髪はポニーテールにし、アイボリーのパーカーにベージュのショートパンツ、黒のレギンスを履いている。靴は奏多が選んだピンクの模様が可愛いコロンビアのトレッキングシューズを履いている。バッチリ山登りの服装をしていた。
車に乗り込むと、凛は、顔を優花さんに近づけて、
「迎えにきていただいてありがとうございます。今日はよろしくお願いします」
と、丁寧に言った。
「おはよう、凛ちゃん。同じハーレムメンバーなんだから、そんなに畏まらなくても大丈夫よ」
優花さんの『ハーレムメンバー』発言がまた出た。
「そうだよ、りんりん、気楽に行こう!」
「そうだね、あやちゃんほどじゃなくても、もうちょっと楽に構えていいよ」
「う、うん。わかった、よ」
凛が、まだ少し戸惑った様子で答えた。
全員揃ったところで、目的の山へと向かう。
凛が加わっても、お構いなしに彩芽が騒ぎ、優花さんは運転に集中気味で、オレと凛が会話に混ざる感じで、ドライブは続いた。国道の坂道を上っていき、途中から、曲がり、山へ近づいていく。紅葉した木々の美しい景色から、しだいに、金色の草原が広がり始めた。
――――――――――
凛を拾ってから、1時間半ほどで目的地に着いた。
目の前には草原が広がり、遠くに火山、近くに今日上る山がそびえている。
草原では、乗馬を楽しんでる人たちの姿も多い。駐車場周辺も、多くの観光客で賑わい、外国人の姿が半数以上を占めていた。
「すっごーい!もう十分、景色いい!!」
「空気が気持ちいい、ね」
彩芽と凛が感想を述べる。
「おまたせー」
運転用のスニーカーからトレッキングシューズに履き替えた優花さんが車から降りて来た。
優花さんは、髪は一つ結びにしていた。お化粧はいつもより、薄めのように感じる。上には、レッドワインの登山用のウィンドブレーカーを纏い、下は、黒いストレッチパンツを履いている。靴はブラウンのハイカットのトレッキングシューズ。さすがワンダーフォーゲル部だ。
「凜、お弁当はオレのリュックに入れるよ。重いだろ?」
「ありがとう。奏多にお願いする、ね」
「素直でよろしい」
4人分の昼食が入った弁当箱をオレのリュックに入れる。
さぁ、準備は整った。
ビジターセンターや店舗の並びを奥まで進む。すると、『日阿岳火山道入り口』の看板が掲げられていた。
いよいよ山登りが始まる。
「よーし、みんなー、山頂目指して、レッツ、ゴー!!」
「「「おーー!!」」」
秋色に染まった山道へ、4人の最初の一歩が刻まれた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
月曜日と木曜日の21時に投稿します。引き続き、お読みいただければ嬉しいです。
ブックマーク、リアクション、評価、感想等、とても励みになります。いただけたら有難いです。




