第40話 未来のために
水曜日。
登校中に、真央にメッセージを送る。
『おはよう。今、登校中だよ』
すぐに返事が来る。
『おはようございます』
うさぎが背伸びをしながら、『おはよう』と書かれたスタンプも届いた。
『先輩は、今日は何するんですか?』
『何って?授業、授業、授業、授業、お弁当、授業、授業、下校、だよ』
『高校生してますね、先輩』
『高校生だからね。真央ちゃんの今日の予定は?』
『レッスン、打ち合せ、収録、移動、レッスン、自主練です』
『……芸能人してるね』
『芸能人ですから』
『ちゃんとご飯食べるんだよ』
『時間を見つけて何か食べます』
『そんじゃ、学校着くからまたね。真央ちゃん、頑張ってね』
『先輩も頑張ってくださいね』
――――――――――
昼休み、彩芽とお弁当を食べ終えて自分の席に戻った頃、メッセージが届く。
『証拠写真です』
直後に写真が送られてきた。
写真には、コンビニのおにぎり弁当にミネラルウォーターが写っていた。
『芸能人だよね?』
『はい』
『お昼、それだけ?』
『何か問題ありますか?』
『もっと豪華なもの食べてるかと思った』
『現実はこんなものですよ、先輩』
『まぁ、お昼食べれてるなら、良かった。午後も頑張ろうね』
『はい!先輩も頑張りましょうね』
――――――――――
夜9時過ぎ、入浴を終えたオレのスマホにメッセージが届く。
『レッスン、終わりました』
『遅くまでお疲れさまぁ』
『今からちょっとだけ、ダンスの自主練します』
『ほんとにちょっとだけ?』
『ちょっとだけです』
『本当かな?終わったら、メッセージちょうだい』
『疑り深いんですね、先輩。わかりました』
その後、オレは勉強して、そろそろ寝ようかという頃だった。
『自主練、終わりました』
『は?11時半だよ!今まで自主練してたの?』
『今日は早めに切り上げました』
『全然早くないし!働きすぎ!』
『自主練は仕事じゃないですよ、先輩』
『いやいやいや……体壊さないようにね』
『大丈夫です。先輩からのメッセージがあれば頑張れます』
少しドキリとする。
『それは良かった。オレも真央ちゃんとのやりとり、けっこう楽しんでるよ』
『嬉しいです、先輩』
『じゃあ、少しでも寝るんだよ』
『次の新曲のデモ聴きながら、シャワー浴びて、寝ます』
『おやすみ、真央ちゃん』
『おやすみなさい、先輩』
―――――――――
木曜日もメッセージをやりとりした。
でも、この日はどこにいるかも、何をしてるかも、『秘密です』と送られてきた。
金曜日も朝から合間合間にメッセージのやりとりをした。
今日は、明後日のハイキングに備えて、作戦会議は中止となっていた。
夕方、先週と同じメッセージが届く。
『先輩、お疲れ様です』
『リハーサル終わって、次はボーカルレッスンです』
『今日、コンビニで買ったチョコ、おいしかったです』
オレは画像が送られる前にメッセージを送る。
『期間限定マロンチョコかな?』
『!?何でわかるんですか?』
びっくりしたうさぎのスタンプが届く。
直後に先週と同じ、チョコを掲げた写真が届く。
『預言者ですか、先輩?』
先週、見たから、とは言えない。
『勘だよ。勘』
『……先輩、怖いです。他に預言できますか?』
『何なりと申してみよ』
『今からあるボイスレーニング、どのくらい怒られますか?』
『ふむ……雷警報が出るぐらい怒られるでしょう』
『それ、嫌すぎます。でも、私の歌声で黙らせます』
『ほんとに黙らせられるの?』
『嘘です。黙らせられません。泣』
『よしよし』
『先輩、優しいのか、いじわるなのか、どっちですか!』
『どっちも』
『もう!あ、もう時間です。楽しかったです。また連絡しますね、先輩』
『がんばるんだよ、後輩』
その日は、夜遅くまで真央とのやりとりは断続的に続いた。
――――――――――
翌日、土曜日の凛とのデート。
この日は、図書館ではなく、駅前のショッピングモールに二人で来ていた。
「うーん、これも違う、かな」
三本ラインの入った靴を握り、凛は首を傾げている。
「オレは、その靴もいいと思うよ」
「うーん、でも、なんか違う、な」
今日は、凛がハイキングで履く靴を買いに来ていた。
「この店の運動靴はだいたい見たし、別のショップに行く?」
「うん、アウトドアの専門店に行こう、かな」
「優花さんは、運動靴でいいって言ってたよ」
「でも、きっとまた山登り、行くと思う、よ」
「そうかな?」
「約束したから」
「約束?」
「うん、奏多は女の子みんなを大事にするって約束した、よ」
「うん、したけど。それと関係ある?」
「ある、よ。奏多がひかりちゃんと今やりとりしてる子も攻略したら、私たちの関係はずっと続く。そしたら、これから何回もみんなで山登りに行ける、よ」
「そうだね」
「だから、ちゃんとした靴を選びたい、よ」
「そだね。わかった。2階のアウトドア店に行こう」
凛と、2階のアウトドア専門店に向かった。
そこには、たくさんの登山グッズがあり、靴も壁面にずらりと並んでいた。
ハイカットの本格的な登山靴から、ミッドカット、ローカットの靴も多くある。
その中で、オレは一つ気になる靴を見つけた。
「凛、これはどう?」
「ん?」
有名なアウトドアブランドのローカットのファストハイクシューズだ。全体的に薄いグレーで、外側の側面にロゴがあり、その下にひし形の小さなピンクの模様がライン上に散りばめられている。底はしっかりと厚みがある。
凛は、靴を動かしていろんな角度から見た後、
「これ、可愛い、ね。気に入った、よ」
と、言って微笑んだ。
「うんうん、オレが選んだだけはあるな」
「うん、奏多が選んでくれた靴、可愛い、よ。これを買う、ね」
靴が決まった。凛は店員を呼び、試着しながらサイズを選んだ。そして、会計を済ませた。
その後、フードコートでランチをとり、ショッピングモールを出た。
「凛、これからどうする?」
「地元のスーパーで、明日のお弁当の材料を買って帰る、よ」
「なら、一緒に行くよ?」
「え?私の地元、だよ?電車に乗らなきゃいけない、よ?」
「全然いいよ。4人分のお弁当なら材料も多いだろうから、家まで荷物持ちになるよ」
「いい、の?重いし、遠い、よ?」
「遠慮するなって。オレに任せて」
「うん、わかった、よ」
こうして、午後の予定が決まった。
駅から電車に乗り、凛の住む町まで行き、スーパーで一緒に材料を選びながら買い物をした。
そして、凛の家の前まで一緒に歩いた。
「奏多、今日はありがとう」
「いえいえ、楽しかったよ」
「遠くまで、一緒に付き合ってくれて、嬉しかった、よ。奏多が選んでくれた靴、大事にするね」
「必要があれば、いつでも来るよ」
「うん、わかった、よ」
こうして凛との買い物デートは終わり、翌日の4人での山登りを迎える。
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