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君を好きになるのは、何度目だろう。 ~親愛度100で記憶を共有したヒロインたちと、一週間ループを攻略する〜  作者: 月雲 天音
第3章

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第24話 記憶の断片

 屋台の明かりの中を、三人で歩く。


「かなたん!あれやろうよ、ヨーヨー釣り!」


「えー、子どもっぽくない?」


「いいじゃんいいじゃん、こういうのは雰囲気だって!」


 彩芽はすでにしゃがみ込んで、真剣な顔で水面を覗いている。


 ぽちゃん、と音を立ててヨーヨーが揺れる。


「よし……今だ!」


 すくい上げようとして、あっさり紙が破れた。


「あーー!破れた!」


「そりゃそうだろ」


「もー!かなたんやって!」


 オレと彩芽がやりとりをしている横で、凛がしゃがみこんでいる。


「あ、取れた、よ」


 あっさりと凛が水風船を釣り上げた。


「りんりん、すご!」


「……えへへ」


 凛は、控えめだけど、どこか得意げに笑った。



 次は、わたあめ。


 大きく膨らんだ虹色のわたあめを、彩芽が嬉しそうに掲げる。


「これ絶対インスタ映えするやつ!」

 そう言って、スマホで撮影をする。


「食う前に溶けるぞ」


「それはそれでいいの!」


 凛も同じわたあめをもぐもぐと食べている。

 

 凛の小さな顔は、巨大なわたあめに隠れて見えない。



 二人がわたあめを食べ終わると、彩芽はキョロキョロと、次何をするか探す。


「あ、かなたん、りんりん。次、これやろう!」


「射的?いいけど、難しそうだな」


「私、自信ある、よ。毎年やってる、から」


「お、ここに常連さんがいた!かなたん負けられないよ!」


「オレかよ。あやちゃんがやりなよ」


「ねー、かなたんー。あの大きいぬいぐるみが欲しいなぁ」


 わざとらしい甘えた声で彩芽がおねだりしてきた。


「いやいや、あんなの無理だろ」


「男の子でしょ?根性で取って!」


「あー、わかったよ。やればいいんだろ!」


 オレは投げやり気味に射的の鉄砲を取る。


 一発目はぬいぐるみの右腕をかすった。

 かすっただけなのに、ぬいぐるみは、右に少し傾いた。


「かなたん、これ行けるんじゃない?」


「うん、次で取る!」


 また右腕に狙いを定て撃つ。

 見事に命中した。

 が、今度は、ぬいぐるみはびくともしなかった。

 

「くー、おしい!かなたん、もう一回!」


 結局三回、お金を投入したがぬいぐるみを取れることは無かった。


 その横で、


 パン、パン、パン。


 3連発。


 3個のお菓子が、見事に倒れる。


 凛だ。


 「ふっふっふっ、これが実力だ、よ」


「りんりん、すごい!どこかのかなたんとは大違い」


「ぬいぐるみが、無理なんだってば!」

 


 その後も笑いながら、三人で並んで歩く。


――楽しい。



 その時だった。


 少し離れたところで、小さな子どもが立ち尽くしているのが目に入る。


 きょろきょろと周りを見回し、今にも泣き出しそうな顔。


「……迷子かな」


 足が、自然とそっちに向く。


「大丈夫?」


 しゃがんで、目線を合わせる。


 子どもはびくっと肩を震わせて、こちらを見る。



――その瞬間。



 どこかで見た光景だと、思った。

 ざわざわと、胸の奥が騒ぐ。



――迷子。


――夏祭り。


――泣きそうな顔。



 重なる。



「大丈夫だよ」


 声が、勝手に出た。


 頭の中で声が響く。


『お姉ちゃんがついてるから、大丈夫だよ』



 その瞬間、


 世界が、ぐらりと揺れた。


 息が止まる。

 心臓だけが、やたらとうるさかった。


 忘れていた景色が、頭の中に流れ込む。



 泣いている小さな自分。

 優しく手を引く、誰か。

 柔らかい声。



――ああ、これは。



「……優花……お姉ちゃん」



 気づけば、そう呟いていた。


 胸の奥で、

 ずっと止まっていた何かが、

 静かに動き出した気がした。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

33話まで毎日夜9時に投稿します。引き続き、お読みいただければ嬉しいです。

ブックマーク、リアクション、評価、感想等、とても励みになります。いただけたら有難いです。

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