第2話 正解の手応え
本日2話投稿の2話目です。
『23』
前回の月曜日よりも高い数字だ
1周目で偶然、「その本、面白いの?」と凛に声を掛けたことで親愛度が『5』と表示されて、凛が攻略の対象であることを発見できたのだった。
攻略対象の女性をもう一人、発見している。
――その女性は……
「奏多、おっはよーー!何、ぼーっとしてるの?早く行かないと遅刻するよ」
「おう、おはよっ。てか、別にボーっとしてねーし」
「嘘ばっかり。美女に見惚れてたでしょ?このひかり様の目はごまかせませんことよ」
「おほほほほ」と、頬に掌を当てて高笑いしている少女。
花咲ひかり。幼馴染でやたらテンションが高い。
――そして、花咲ひかりこそが、オレが発見したもう一人の攻略対象だ。
ひかりの頭の上には黄色の『50』という数字がくっきりと表示されている。
もちろん、一周目の月曜日にひかりが攻略対象であることは気付いた。
それからいろいろ試した。
だけど、何をしても、ひかりの数字は動かない。
『50』のまま、ずっと。
ひかりの攻略は後回しにし、まずは凛の攻略に集中することにしたのだった。
――――――――――
――キーンコーンカーンコーン。
火曜日。
昼休みを告げるチャイムがなると同時に、教室の空気は緩み、一気に賑やかになる。
――ここからだな。
弁当を持って立ち上がる。
向かう先は決まっている。
窓際、一番後ろの席。
凛は、弁当箱を袋に入ったまま机の上に置き、本を読んでいた。
凛の頭の上の数字は『28』と青く表示されている。
昨日に続き、今日も一緒に会話をしながら500メートルの道のりを登校した成果で親密度は5、上がっていた。一日目にぐいぐい行き過ぎて、2周無駄にしたから、二日目まで我慢したら見事に正解だった。
――さぁ、答え合わせを始めよう。
チャイムがなってから3分後、このタイミングだ。
机に近づく。
声をかけるタイミングは、ちょうどページをめくる手が止まる瞬間、っと。
「水無瀬さん」
「……なに?」
本から顔を上げる。
二人の目が合う。
「一緒にご飯食べない?」
「……別に、いいけど」
少しだけ迷ったあと、そう答える。
向かいの席に座り、弁当を開ける。
「……珍しいね」
凛が言う。
「早川くんが、女子とお弁当食べているところ、見たことない、よ」
「そうか?」
ここで、「それは一緒に食べたい子が今までいなかったから」とか、チャラいことを言ってはダメ。
「うん」
「……でも、嫌じゃ、ない」
目を逸らして小さく付け足した。
『28』だった数字が、一気に『40』まで跳ね上がる。
数字の色が緑に変わる。
「それ、昨日の続き?」
「……うん」
少しだけ目が柔らかくなる。
「結構、展開が変わって来てて」
「あ、ちょうど面白いところだね。邪魔だったかな?」
「……邪魔じゃない、よ」
そこからは自然に会話が続いた。好きなシーン、登場人物。
凛の言葉は少しずつ増えていき、それに伴い、親密度も少しずつ上がっていく。
いい感じだ。
再現性もある。
凛の弁当は気付けば空になっていた。会話をしながらいつの間に食べたのだろう。
「……ごちそうさま」
「早いな」
「そっちが遅い」
そう言うと、凛は少しだけ笑った。
その表情が、前より自然に見えた。
何回も見てきたはずのこのシーンで、オレは毎回、胸が高まる。
親密度は『47』になっていた。
――よし、もう一押しで……
そこで。
「ねぇ」
凛が、ふとこちらを見る。
「ん?」
「何か変じゃない?」
オレの箸が止まる。
「変?」
「うん」
少しだけ首を傾げて、
「話、噛み合いすぎるっていうか……」
ドクン、と胸が鳴る。
――来たな。
これまでの周回でも、何度かあった反応。
でも、深く気にするほどじゃない。
「気のせいじゃない?」
オレは軽く流す。
……一瞬だけ、凜の視線が止まる。
「……そう、だよね」
でも、それ以上は追って来ない。
問題ない。
その証拠に親愛度に変化はない。
「まぁ、いいや」
凛は、本を広げると、続きを読み始めた。
――問題ない。
次は放課後だ。
自分を落ち着かせるように、頭の中で最短ルートを確認する。
今まで土曜日までは何度も成功してきた。同じ流れで同じ結果になる。
読書に集中している凛に、弁当を食べ終えたオレは、
「じゃ、また後で」
そっと声を掛け、席を立つ。
凛は本から目を逸らさず、声を出さずに頷く。
完璧だ。
このルートは間違っていない。
そう思った――少なくともこの時は。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
17話まで毎日21時に投稿予定です。
続きも読んでいただけると嬉しいです。




