第19話 新たな朝
「奏多、早く起きなさい……ほら、もう時間よ」
先週までとは違う母の言葉で、月曜日の朝を迎えた。
彩芽の親愛度を『100』にした次の日。
この世界が始まって15回目の月曜日の朝だ。
凜と作戦会議をするようになってから、何周目かちゃんと数えるようになった。
「奏多、寝ぐせついてるぞ」
食卓に向かうと、先に朝ご飯を食べ始めている父が声をかけてきた。
父と母のセリフは変わっていた。
マンションを出て、ゴミ置き場の前にさしかかる。
「おはようございます」
そこにいる女性にいつもと同じように挨拶をする。
「あら、奏多君おはよう!奏多くんも高校生かぁ。大きくなったねー」
優花さんのセリフは、やっぱり変わっていなかった。
「そういう優花さんも、女子大生になっちゃったじゃないですか」
「うふふ、そうね。あ、遅刻しちゃったら悪いからこのくらいにしとくね。元気に学校がんばっておいで。奏多くん、いってらっしゃい」
柔らかい声のトーンも優しい表情も何一つ変わっていない。
優花さんに見送られながら、通学路を進む。
いつもの学校500メートル手前の交差点。
「お、思春期の少年、おっはよー」
ひかりも前の周までと同じ笑顔で、同じ言葉をかけてきた。
最初にこのセリフが登場したのは……いつだったかよく覚えていない。
「おはよー。だから、思春期じゃねーし」
とりあえず、いつもと同じ言葉を返しておく。
教室に入り、凜の席に目をやる。
既に席についてる凜は、オレと目が合うと、コクリと頷いた。
昨日の出来事は報告済みだ。
そして、昼休みを迎えた。
弁当を食べ終えたオレは、情報クラスの方へ廊下を進む。
友達と立ち話をしながら、ケラケラ笑う彩芽を見つける。
彩芽もすぐに、オレに気付く。
「あれ、早川くんじゃん。こっちに来るの珍しいね。元気にしてる?」
「え?」
オレは固まってしまった。
彩芽が、ループしてる?
そんなオレの反応を見て、彩芽がケラケラ笑う。
「かなたん、ビビり過ぎ!ウケるし」
「なっ!」
「ちょっとからかっただけだよ、かなたん!」
「ま、マジで焦ったし!」
「あはは、かなたんはからかい甲斐があるなー」
そして、また笑う。
そんなやりとりをしていると、
「順調そうね」
聞き覚えのある声がした。
声の主は、ひかりだった。
ひかりも情報クラスだ。ここにいて、不思議ではない。
だけど、どういう意味だ?
「……何が?」
オレは、疑問をそのままぶつける。
「学校生活、かな」
それだけ言うと、ひかりは振り返りもせず、歩き出した。
……なんだ今の。
「ねぇ、かなたん。何、ボーっとしてるの。説明してほしいんだけど」
「あ、うん。そうだね。ここじゃ人多いし、場所変える?」
二人は人気が無い、特別教室への階段付近に移動した。
改めて奏多が問う。
「ねぇ、あやちゃん。昨日までのこと覚えてる?」
「えー、何のことー?」
「また、そういうこと言う」
「あはは……ちゃんと覚えてるよ。何回も繰り返したことも……あの、昨日のことも」
「そっか、良かった」
「かなたんこそ、忘れてないよね?」
「え、何を?」
「何をって……あたしのこと……好きって……きゃー、恥ずかしい」
そこまで言うと、彩芽は大袈裟にはしゃいで顔を両手で覆う。
「も、もちろん。覚えてるよ。オレだけじゃなくて、あやちゃんもーー」
「はい、ストーップ!昼間の学校で全部話すこと無かれ」
彩芽が顔を真っ赤にして静止する。
「それじゃあさ、放課後、改めて話そうよ」
「いつものように帰りながら?」
「駅の近くによく行く喫茶店があって、そこで話そう」
「うん、わかった」
放課後、『ドゥ・アメール』で続きを話すことになった。
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