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君を好きになるのは、何度目だろう。 ~親愛度100で記憶を共有したヒロインたちと、一週間ループを攻略する〜  作者: 月雲 天音
第2章

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第15話 晴れ間

 彩芽攻略5周目。


 月曜日の朝、いつもの優花さん、ひかりとのやりとりをこなす。


 昼休みに彩芽に会い、放課後一緒に下校した。


 前の周の金、土、日と、『全部受け止める』の意味について自分なりに考えた。

 正解か分からない。でも、自分が出した答えを実行することにした。


 月曜から水曜まで、これまでの周回と同じく楽しく下校時間を過ごした。


 そして、迎えた木曜日も、これまでと同じようにお腹を抱えて笑いながら、一緒に下校した。


 彩芽はいつも面白いことを言ってケラケラと笑う。

 一緒にいて楽しい。

 その楽しさを彩芽は作ってくれる。

 相手が楽しい時間を一緒に過ごせるように、

 彩芽は一生懸命、明るく元気にしてくれている。


 そんな彩芽が、健気に感じる。


 これまで過ごした周回で、彩芽の本質を少しずつ理解できてきたような気がする。



「あー、楽しかった。かなたん、明日も一緒に帰れる?」


「うん、もちろん。あやちゃんが先に帰ってもついて行くから」


「やばっ!それストーカーじゃん!」


 彩芽はケラケラと笑う。本当によく笑う子だ。


「じゃあ、また明日ね!バイバーイ!」


 手を振り合って、別れた。


 親愛度は、表示されていない。


 それでも、金曜日に一緒に帰る選択をした。

 それを彩芽が望んでいるから。



 金曜日は久々に雲一つない晴天だった。


「かなたん、昨日のドラマ見た?」


「見た見た。あれちょっと無理があるよね?」


「え?うそ?あたし、感動して泣いたんだけど」


「えっ?泣くところあった?てか、あやちゃん、ドラマ見て泣いたりするんだ。いつも笑ってるから」


「そりゃ、感動したときは泣くし。大号泣よ」


 そんな会話をしていると、オレのマンションが近づいてきた。


「あー、もうかなたんの家に着くね。今週一週間楽しかったなー」


「オレも楽しかったよ。腹筋壊れるぐらい笑わせてもらったし」


「シックスパックになったんじゃない?見せてみ」


 二人でまた笑う。


「ねぇ、あやちゃん。一週間楽しませてもらったし、なんかお礼をしたいな。何か欲しいものはない?お金あんま無いけど」


「あはは、お金ないのによく言えるね」


「どんな願いでも叶えてしんぜよう」


「えー、ほんとに?」


「ほんとに」


 彩芽は指を顎に当てて、少し思案する。


「ならー……でも、本当にいいのかな?」


「どうした?言ってみ?」


「なら、明日、かなたんと一緒にプール行きたい!」


「え、プール?」


「うん、プール。隣街のレジャープールが、明日プール開きなんだよ」


「そ、そうなんだ」


「あ、かなたん。引いてる?」


「引いてない、引いてない。よし、プール行こう!」


「ほんとにいいの?」


「もちろん。お安い御用だよ」


「よっしゃ!そうと決まれば、水着の確認しなきゃ」


「あ、オレもだ。明日は駅前に10時集合ね」


「うん、わかった。かなたん、また明日ね!」


「「バイバーイ」」



――――――――――


 土曜日。今日も晴天だ。


 駅前に行くと、既に彩芽が待っていた。Tシャツにショートパンツという完全に夏の服装だ。


「かなたん、やっほーー。こっちこっち」


 少し離れた距離から彩芽が手招きしてくる。


 合流すると、腕を組んできた。


「それじゃあ、プールに行くぞー!レッツ、ゴー!」


 彩芽はノリノリだ。オレもノリに合わせて腕を組んでない方の拳を上げた。



 電車に乗って移動し、プールに着くと多くの人で賑わっていた。


 早速水着に着替える。

 彩芽は淡い水色のセパレート水着に前開きの白いラッシュガードを羽織っていた。。


「かなたん、どうしたの?そんなに見つめて」


「いや、別に」


「今、見惚れてたでしょ?正直に言いたまえ」


「か、かわいいよ」


「よろしい!」


 

 大きめの浮き輪を一つレンタルして、とにかく二人ではしゃぎまくった。

 

 流れるプールで追っかけっこをしたり、ウォータースライダーを二人で一緒に滑ったり、午前中から飛ばしていった。


 お昼ご飯は、焼きそばを注文して食べて、お昼からも泳いだ。


 ひとしきり遊んだ後、プールサイドのベンチに腰を下ろす。

 水の音と、子供たちのはしゃぐ声が遠くに混ざった。


「楽しいねー」


 彩芽はそう言って笑う。

 いつもと同じ、明るい声。


 でも、ほんの一瞬。

 視線が遠くに流れた気がした。


 家族連れが、笑いながら水を掛け合っているのを見て、一瞬だけ視線が止まった。


 その光景を見た後、彩芽はまたいつもの笑顔に戻った。


「次、あっち行こっか!」


 立ち上がろうとする彩芽を、止めることはしなかった。


 ただーー


「……もうちょっと、休もっ」


 それだけ言って、隣を軽く叩く。


「えー?まだいけるよ?」


「オレが無理」


「そっか、じゃあ仕方ないなー」


 彩芽は笑って隣に座る。


 沈黙が落ちる。


 無理に埋める必要はない。


 しばらくしてーー


「……ねぇ、かなたん」


 ぽつりと彩芽が言う。


「ん?」


「なんでもない」


 そう言って彩芽は笑う。

 その笑顔は、少しだけ硬かった。


「……そっか」


 オレはそれだけ返した。


 風が吹く。


 彩芽の濡れた髪が揺れる。

 彩芽は少しだけ視線を落とした。


「そろそろ行こっか」


「もうちょっとだけ、ここにいたいな」


 今度は彩芽が留まることを選んだ。


 静かな時間が流れる。

 彩芽の無理な笑顔はなくなっていた。


 水の音も、笑い声も、さっきより遠く感じた。


 やがてーー


「……ありがと」


 小さな声だった。

 聞き返さなければ、流れてしまいそうなぐらいに。


「なにが?」


 あえて、軽く聞く。


 彩芽は少しだけ間を開けてから、

 視線を上げずに言った。


「……なんでもないって言ったときにさ」


「うん」


「普通、聞いてくるじゃん」


「うん」


「でも、かなたんは何も聞かなかった」


 少しだけ微笑む。


「それ、ちょっと楽だった」


 胸の奥で何かがほどけた気がした。

 でも、言葉にはしない。


「そっか」


 それだけ、返した。


「……ねぇ、かなたん」


「ん?何?」


「明日も会いたいな」


「いいよ」


 オレはすぐに答えた。



 帰り際にふと視線を上げる。


その頭上に、いつの間にか数字が浮かんでいた。


『70』



 ……ついに、上がった。



 こうして彩芽とのプールデートは終わった。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

17話まで、毎日21時に投稿予定です。良かったらブックマークして読みに通っていただけるととても嬉しいです。

ブックマーク、リアクション、評価、感想等、とても励みになります。いただけたら有難いです。

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