第12話 見つからない正解
新たな周の月曜日。
昼休み、情報クラスの方へ廊下を進む。
「あれ、早川くんじゃん。こっちに来るの珍しいね。元気にしてる?」
「やぁ、風野さん、久しぶり。元気だよ。風野さんも、元気そうだね」
ここでも前の周と同じ会話が進んでいく。
放課後、待ち合わせの場所で彩芽と会い、「かなたん」のくだりの会話を楽しんだ。
帰り道の途中、オレは、前の周と違う話を振ってみた。
「あやちゃんってどんな音楽聴くの?好きなアーティストとかいる」
「んー、誰かなぁ?かたんは?」
「オレは今、RE:INにはまってるよ。中でもMaoちゃんの歌声がすごくて」
「あー、わかる!RE:INいいよね!Maoちゃん、最年少なのに歌、すごいよね!」
「そうそう、さすがオーディション勝ち抜いただけはあるよね」
話は十分盛り上がった。
……盛り上がっているはずなのに、
どこか空回りしている気がした。
それを示すかのように、親愛度は表示されない。
――――――――――
月曜日の夜十時過ぎ。マンションのエントランスにオレはいた。
間もなく、優花が帰って来た。
「優花さん、こんばんは」
「奏多くん、今朝ぶりね。こんばんは。こんな所で待ちぼうけ?」
「……うん、優花さんを待ってた」
「え?何?大人をからかっちゃダメよ」
「からかってないよ。本当だよ……今朝、久しぶりに優花さんと話したら、もっと優花さんと話したくなった」
「ふーーん。どういう風の吹きまわしかわからないけど、私で良ければ話し相手になるわよ」
ここから先の会話だ。
「ねぇ、優花さん大学生活は楽しい?大変?」
「そうねぇ。大学の講義や課題にバイトもあって忙しいしいろいろ大変な時もあるけど、友達と遊んだりして楽しいこともいっぱいあるわよ。奏多くんも大学進学希望かしら?」
優花は、手で子供の頃の奏多の身長を示しながら、微笑んで答えた。
「うん、進学クラスに進んだから大学のことが気になって」
「そうかぁ。この前までこんな小さかったのに、奏多くんも大きくなったなぁ。あ、そうだ」
そう言った後、優花さんは持っていたポーチの中を探り、ラップで包まれたドーナツを取り出した。
「今日の売れ残り。これあげる。ドーナツでも食べながら、勉強がんばるんだよ」
拒否はされなかったが、普通の会話で終わってしまった。
「高校生もいろいろあるだろうし、いつでも話を聞いてあげるから、またね」
一度微笑んだあと、優花は背中を向けてバイバイと手を振る。
「じゃあね、高校生になった奏多くん」
「うん、またね、優花さん」
会話は続いた。
でも、それ以上でも、それ以下でもなかった。
――――――――――
火曜日、水曜日と彩芽との下校を繰り返した。
火曜日は、好きな食べ物。水曜日は、好きなスポーツの話を振り、話は十分に盛り上がった。
それでも、親愛度は上がらなかった。
そして、木曜日の別れ際、
「あー、楽しかった。かなたん、明日も一緒に帰れる?」
「ごめん、明日は友達と約束があって」
「そっかー、残念。なら、今日でおしまいだね」
「え?」
「んーー、かなたんと一緒に帰るの楽しかったけど、来週はいいかなって感じ。学校でまた楽しくはなそうね。じゃあ、バイバーイ」
手を振り、彩芽は去っていった。
――これって……
前の周では、親愛度は上がらなかったが、「来週も時間がある時、一緒に帰ろう」という彩芽からの言葉があった。
この周では、来週一緒に帰ることを拒まれた。
明らかな失敗だ。
――――――――――
「これは仮説が間違っていた、ね」
金曜日の作戦会議。話を聞いた凛が出した答えがこれだった。
「振り返ってみると、話を振ったオレが逆に聞き返されて、オレの好きなことしか話していないような気がする」
「彩芽ちゃんは、好きなことを聞かれたくないの、かも」
「うん、たぶん、そうなんだろうなぁ」
「1周目は会話は弾み『来週も一緒に帰りたい』と思ってもらえた。好きなことを探った2周目は『もういい』と思われてしまった、ね。」
「どうするのが『正解』なんだろう」
「楽しく会話をするのは間違っていなかった。でも、距離を縮めるのは拒まれたの、かな」
「でも、距離縮めないと親愛度あがらないだろうし……」
「次は、楽しい会話を重ねた後に、最後に一歩踏み込んでみる?」
「正解かわからないけど、やってみるしかないね」
正解は、まだ見えない。
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