第11話 笑い声の先に
火曜日、この日は午後も雨が降り続いていた。
傘をさして、約束した昇降口前で待っていると、間もなく彩芽が校舎から出てきた。
「かなたーん、今日もお待たせ!さ、今日も帰ろう」
彩芽は今日も明るく、元気いっぱいだ。
二人は、雑談をしながら途中まで昨日と同じ道で帰っていた。
「ねぇ、かなたん。今日はこっちに曲がってみない?」
「え?二人とも遠回りになるし、そっちの道よく知らないんだけど」
「大丈夫!あたしも知らないから」
言って、彩芽はケラケラ笑う。
「だって、かなたんと帰りながら話すの楽しいからさぁ、少しぐらい回り道してもいいじゃん?かなたん、急いでる?」
「いや、別に急いでないけど」
「なら、決定!かなたん探検隊、しゅっぱーーつ!!」
「か、かなたん探検隊ってなんだよ」
「知らない。今思いついた」
「なんだよ、それ。それに……かなたん探検隊じゃなくて……」
「じゃなくて?」
「かなたんあやむん探検隊だ!!」
「ぶはっ!!」
彩芽はお腹を抱えて大爆笑している。
「あはは、ほんとに『あやむん』の『むん』って何よ」
「それも探検の中で探そう」
「見つかるかー!」
雨音に負けない二人の元気なやりとりの声が響く。
その後、二人は知らない道に迷いながら、笑いの絶えない会話を続けながら、1時間弱の帰り道を存分に楽しんだ。
それでも、彩芽の頭上に親愛度が表示されることは無かった。
……なんでだ。
―――――――――
木曜日も彩芽と一緒に下校した。
この日は、前日と違う道を探検しながら帰り、会話も前2日間と同様に大いに盛り上がった。
それでも、彩芽の親愛度は表示されない。
――やっぱり、おかしい。
彩芽は本当に攻略対象なのか?
オレは、異変が起きていると察知したが、原因はさっぱりわからない。
「あー、楽しかった。かなたん、明日も一緒に帰れる?」
「ごめん、明日は友達と約束があって」
「そっかー、残念。なら、来週も時間がある時、一緒に帰ろう」
「うん、あやちゃんと話すのほんと楽しいから、来週も一緒に帰ろうね」
「そんじゃ、また来週会おう!バイバーイ」
彩芽は元気よく帰っていった。
――――――――――
金曜日。この日も雨。昨日、梅雨入りが発表された。
この日は、放課後、凜と喫茶店『ドゥ・アメール』に来ていた。
いつもと同じ、一番奥の席に座る。
「まずは、ひかりちゃん、ね」
「ひかりとは普通に会話できるんだけど、進展が無いんだよねー。親愛度も『40』に下がったままだし」
「ひかりちゃんは、何か違う気がする」
「前に話した、ギミック?」
「そう、それ。ひかりちゃんの攻略には何かある。例えば、攻略のタイミングとか」
「攻略のタイミング?」
「たぶん……普通じゃないルールがある、よ」
コーヒーを一口飲んで続ける。
「仮説だけど、ひかりちゃんは親愛度『50』スタートの代わりに、何かの条件で親愛度が下がる設定、かも。そして、その条件はもう少し攻略を進めたらはっきりする、かも」
「何となくオレもそんな気がする」
「うん。だから、今は攻略するタイミングじゃないのかもしれない」
「そうなると、ひかりの攻略は後回しでいいのかなぁ?」
「攻略は後回しでいい、かも。でも、これまで通りコンタクトは続けて、変化がないか確認した方がいいと思う、よ」
ひかりについての整理はできた。
「さぁ、次はあやちゃんだ」
「ふーん、あやちゃんって呼ぶようになったんだ、ね」
『ね』のトーンが、いつもより重い。
「ま、まあね。あやちゃんとは仲良くなれて会話も盛り上がったんだけど、どうしても親愛度が表示されなかった。凜はどうしてだと思う?」
オレは『ね』の違いには気付かないふりをして、話を先に進めた。
「ふーん、会話も盛り上がったんだ、ね」
凛の攻撃を回避できていなかった。
……凛は、少しだけ拗ねているように見えた。
「いや、まあね」
「ふふふ、奏多をいじめるの楽しい。攻略のためだから許す、よ」
凛の『ね』攻撃は終わったようだ。
「ねぇ……奏多はどうやって私の親愛度を上げていったか、思い出してみて」
「凛の時は、初日に凛が持ってる本の話をして……それから小説の話をするようになって」
「それだ、よ」
「……んと、どれ?」
「奏多は私の『好き』をみつけてくれた……だから、上がったんだと思う、よ」
「確かに、あやちゃんとは、たくさん話したけど、そういう話はしなかったなぁ」
「共通の好きな物とか見つかると、更にいい、かも」
「よし、来週は、その作戦で行ってみる」
凛は、さらさらとノートに話した内容をまとめていく。
「来週の作戦は決まった、ね。がんばってこの世界をクリアしよう、ね」
既に『ドゥ・アメール』に来て、2時間が経過していた。
「話が一段落ついたところでだけど」
オレは切り出した。
「凛、明日はデートしよう」
ふいを突かれた凛の目は見開き、ポッと頬が赤く染まる。
今日は先手を打つのに成功した。
「不意打ち、ズルい」
「あはは、さっきの『ね』攻撃のお返し。赤くなった顔、可愛いよ」
「からかうの、禁止、だよ」
「明日も町の図書館でいい?相変わらず雨が続いてるし」
「うん、そうしよう、ね。奏多と図書館で過ごす時間、好きだ、よ」
そして、土曜日は先週に続き、図書館デートを楽しんだのだった。
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