第1話 再演
物語りは、聖夜の決戦前に遡る…。
帝国の首都ヴァルハラ。そこに幾多の砲弾が
撃ち込まれていた。
沖合数キロ先に停泊中の複数の蒸気船からの
砲撃に晒されるヴァルハラ。
「たまや〜」と、帝国の首都が砲撃されても
呑気に構えるのは、帝国の最高戦力 黄金の
焔…。
自らが帝国政府を牛耳る賢人機関の筆頭、
三賢人の1人とは、思えない余裕の表情。
しかし…ただ、帝国が砲撃される様を見
ている訳ではない。
(成る程…ね…)
と、突如!現れ帝国に弓引くものを観察し
ていた。
(星条旗と銀狼の旗…。反帝国組織群は、
大陸に留まらず、大陸の外まで手をのばし
たか…)
指先に焔を宿し、煙草に火を着け紫煙を
吐き出す、黄金の焔…。
(さて、これは、俺が片付けるべきか?
末端に任せるべきか?)
賢人特有の虹色掛かった黄金の瞳で千里を
見渡す黄金の焔は、紫煙を吐きながらもの
想いに耽る。
嘗ての帝国は、争いを繰り返す大国に挟ま
れた、小さな貿易都市だった。しかし…、
ヴァルハラの誕生の悲劇が起き…始まりの
歌姫が小さな貿易都市の民衆に魔法の力を
授けた。そして、貿易都市の民衆は、奇跡
は、我らにあると、現在のヴァルハラを生
誕させ、自国を挟む大国へ宣戦を布告した。
その結果は、物量で勝る2つの大国を圧倒
し、ヴァルハラは、争いが絶えなかった大
国を陥落させた。その噂は、瞬く間に大陸
に、広まり。我らもその奇跡にあやかりた
いと、一時は、大全土が帝国にひれ伏した
過去がある…。
(歌姫信仰の強みは、実際に目に見える奇跡
があること…。しかし…それは…今では遠い
伝説の出来事だしな…)
黄金の焔は、紫煙を吐きながら思考を現実へ
と返す。
砲撃に晒されるヴァルハラ。末端の魔法使い
達も頑張っては、いるが…海を走り凹凸のな
い、海上では、蒸気船に装備された回転式機
関銃のいい的である。
(帝国の魔法使いの質も、堕ちたな…)
伝承にある歴戦の魔法使い達なら、末端の
魔法使いであれど…蒸気船や回転式機関銃
に劣る事はない。伝承の魔法ならば、末端
の魔法使いでさえ…数隻程度の蒸気船なら
ば、いとも簡単に轟沈させる事ができた。
「時間の流れかねぇ…」
と、紫煙を吐き出す黄金の焔。それが…
合図だったのか?星条旗と銀狼の旗を掲
げる蒸気船の旗艦が、黄金の焔に包まれ
撃沈!!この機を逃すな!!と、一気に
蒸気船の群れに取り付く末端の魔法使い
達。そして、蒸気船の沈黙を経て、今回
の事件は解決した…。
帝国の街並みを一望できる小高い丘の上
から、蒸気船を沈黙させ、新たな英雄
達の勝ち鬨を眺めながら、吸い終わった
煙草を踏みつける黄金の焔…。新たな煙
草に火をつけて、遠征から凱旋したばか
りの黄金の焔は、自分が不在中に賢人達
が…決定した立案に思考を巡らせる…。
帝国政府を牛耳る賢人機関…十二賢人は、
歌姫信仰の再来を、現在の歌姫に依頼する
予定だ。数隻程度の蒸気船相手に一個大隊
をさかねばならない程…劣化した魔法の質
…それを補い…伝承に謳われる魔法国家の
威信を取り戻したい帝国。しかし…ながら
帝国は、恐怖で人を縛り過ぎた。その結果
が…、反帝国政府群組織を造らせ…そこに
帝国の意と、相反する魔法使いの存在を産
み、帝国政府と反帝国政府群の泥沼の戦乱
の世を創り出していた…。
世界一有名な聖典しかり、どの宗派もそう
であるが…皆…奇跡を欲している。歌姫信
仰が、大陸に浸透しているは、魔法の付与
と言う、目に見える奇跡があるからである
……。
(奇跡…ね…)
黄金の焔は、現在の歌姫を思い出す…。そ
して、小高い丘の上にある。先代の歌姫の
墓石に視線を向ける。先代の歌姫の墓は、
帝国の首都ヴァルハラの中央広場にあると
思われているが…、それはフェイク。遺骨
は、この小さな墓石の下に、先代の歌姫の
騎士と共に眠っている。
先代の歌姫の時代も泥沼の戦乱の時代であ
ったが…歌声の儀と謂われる歌姫の存在を
左右する儀式は、行われなかった。その…
必要はないと。放任されていた。一子相伝
で伝われているとされる歌姫の奇跡の御業。
「さて…どう動く…アイオーン…」
と、黄金の焔は不敵にも、不気味な笑み
を浮かべた…。




