008 うどんジョン、ふたりで攻略
ルシカには既に、ボーナスの存在やモンスターの倒し方、そして命を何よりも大事にして欲しいという点については伝えてある。
しかし説明だけではよくわからなかったのか『ちく、わんこ……? 長ネギンバト……? ほえ……?』という様子だったので、まずは実物を見て貰って、俺が倒し方を実演することにした。
『チクワァン!!』
「見ろ、あれがちくわんこだ。1階層では口に咥えているちくわと、胴体のちくわを切断すればボーナスが貰える。俺が今からやるから、見ていてくれ」
「ど、どうなってるの、なんなのあのモンスター……!?」
まあびっくりするよな。食べ物モチーフのモンスターなんだもんなぁ。
「もうお前の動きは見切れるぜ、遅い!!」
『チクワッ……』
『ちくわんこ、撃破。ボーナス込みで100UMP獲得』
「こんな感じだ!」
「ど、どんな感じなのよ……」
とりあえず、一通りの倒し方を実演していこう。次はどいつが出てくる~? 長ネギか? うどんぶりか? それともフロアボスのコッコか~?
『ユデコッコォオオオオーー!!』
「あいつだ、あれがこの階層のボス! 産んだ卵を蹴ってくるんだが、その爆発威力がヤバい!! アイテムボックス!!」
『コケッ!!』
ゆでたまコッコが出たか! こいつは先手必勝、蹴られる前に……投石!!
「おっらぁ!!」
『コッォオオッォオ!?』
「きゃあああ!?」
『ゆでたまコッコ、撃破。特殊撃破ボーナス、400UMP獲得』
「あんなに強力な爆発なの!? 想像の5倍は爆発の威力が高いじゃない!!」
「まあ、当たったら死ぬだろうと思う。絶対に当たるなよ!!」
「でも、わかったわ! 今度あれが出てきたら、私に倒させて」
「おう、リセットしてからだから、次からな!」
その後も、出てくるモンスターの異様さに目を白黒させて居たルシカに、一通りボーナス込みでの倒し方を教えた。最後に出てきたボーナスチェストは……。
「じゃじゃ~……あん?」
『【ハズレ】です』
「あああああん!?」
まさかの、ハズレ……。1階層だしまあ、こういうこともあるのかもしれない。ルシカに優しく慰められつつ、リセットしてもう一度周回することに……。
「――それじゃ、今度はルシカの番だな。倒せなさそうなモンスターは居るか?」
「いいえ、全部大丈夫だと思うわ。レベルは下がっているみたいだけど、十分やれるところを見せてあげる!!」
気合い十分なルシカだが、一応不安はあるので、いつでも助けられるように準備はしておく。初日から怪我をされたら悲しいし、何より俺が嫌だからな。
『ネギッポォ』
「イルジオン」
『ポォ……!?』
長ネギンバトが気がつく前に、相手のかなり近くへ自分の幻影を召喚した……!? ここから、どうするんだ……?
「ファイアソード!!」
『ポォオオッ!?』
幻影の持ってる杖の先から、炎の剣みたいなのが出た!! ファイアソードって言ってたし、炎の剣で合ってるか……。いやそれより、幻影からも魔法が使えちゃうのか!?
『ポッ――』
『長ネギンバト、撃破。特殊撃破ボーナス、200UMP獲得』
「やった! 倒せたわよ!!」
「特殊撃破!? ど、どういう……」
「ケントと違うのは、ネギを切ったというより焼いたからかしら? それぐらいしかないわよね」
「ネギを焼くと、特殊撃破になるのか……。しかもこれ、獲得が倍だ!」
おお、特殊撃破ボーナスが他のモンスターにも!! これは嬉しいな~収入が増えるのは良いことだよ~……。んっ! もう次のモンスターがきてる!!
「あっ! ファイアアロー!!」
『チクワァアア……』
『ちくわんこ、撃破。50UMP獲得』
「しまった、ごめんなさい! 咄嗟のこと過ぎて……」
「いやいや、凄い反応スピードだった! 撃破優先でいこう、確実に!」
「ありがとう、ケント!」
まあまあ、俺だって初日はボーナス撃破も特殊撃破もわかんなかったし、いきなり言われて出来るようなことでもないからさ。今回はとりあえず撃破重視で、確実にやっていこう。
「――ファイアボール!!」
『ピュゥ……』
『うどんぶりスライム、撃破。ボーナス、200UMP』
「フラッシュ!!」
『コケーッ!?』
「ファイアスパイク!!」
『コォッ……!?』
『ゆでたまコッコ、撃破。特殊撃破ボーナス、400UMP』
凄い戦闘センスだ……。森の守り人って、もしかして戦闘民族なんじゃ……。というか森の民なのにさ、火の魔法と光の魔法が得意なの、なんか特殊な感じがあるわ~。
えっと、使える火の魔法は……。打撃を伴う火球、ファイアボール。地面から火で串刺しにする、ファイアスパイク。火の矢を放つファイアアローと、杖の先から剣を出すファイアソードか。4種類あって、接近戦から遠距離戦まで幅広く対応してるな。
それと、光の魔法は今使った閃光の目眩まし、フラッシュ。このフラッシュはパーティメンバーである俺には効かないみたいで、ちょっと明るいなーぐらいの光に感じたけど、本来は目が潰れるほどの威力があるらしい。それと受付のお姉さんに使ったコンフューズ、ぐらいか?
後は幻影魔法、イルジオン……これが反則だ。10メートルぐらいの距離なら幻影を自在に作り出せて、本物と全く変わらない質感で召喚されるから、背後に急にルシカが現れたと驚くモンスターが後を絶たない。しかもイルジオンを起点にして魔法を使うことも出来るみたいだし、マジで反則技だ。
総評、ルシカは強い。とんでもない。
『全モンスターの撃破を確認。安全地帯となりました』
「よ~し、もう1回よ!!」
「ああ、でも魔力とかって大丈夫なのか?」
「今ので~……1割ぐらい使ったかしら? まだまだ余裕よ! ああでも2割を切ると気分が悪くなってくるから、その手前になったら交代したいわね」
今ので1割しか使ってないのぉ~!? どんだけ省エネなんですか、ルシカァ~!? いやあ、これ……2階層の周回まで協力してやれば、補給無しでも倒しきれるか……?
「じゃ、じゃあ、次のはまたルシカがやってさ! その後は協力して倒す練習とかしないか?」
「良いわね! 練習しましょ!!」
よしよし、上手いこと誘導出来たぞ。うどんジョンのモンスターにも抵抗感がなくなったみたいだし、このまま攻略を続けてみよう。
◆◆◆◆◆
『――ゆでたまコッコ、撃破。2階層、安全地帯になりました。ボーナスチェスト出現』
ナビちゃん、ずーっと気になってたんだけどさ。段々と解説をサボるようになってきてるよね? 前は5体連続ボーナス撃破のボーナスチェストが~みたいな説明、しっかりやってたじゃん。
「ナビちゃん、だんだん説明端折ってない……?」
『え? 最低限分かれば良いかなと』
「……ま、まあ、何も言い返せない」
『ではこのままの状態を継続します』
「新規のお知らせだけは、しっかりサポートしてくれよ!!」
『はい。承りました』
やっぱり、手抜きしてたか。まあ新規のものだけしっかりサポートして貰えば、既存の情報は別に良いか。とりあえず1階層から続けてきた連携の練習は、2階層を4周する頃にはかなり上達したんじゃないかなと思う。
ルシカには、俺のことは気にせず魔法を撃って貰うようにと伝えた。それでも上手いこと、イルジオン越しに射線を確保したり、魔法をカーブさせて直撃させたり、とにかく戦闘センスが良かった。
「驚いたわ。ケントって本当に強いわね! 森の戦士達でも、そんなに速く動けないわよ!」
「あはは、お世辞でも嬉しいよ。ありがとう!」
「お世辞じゃないのに……。でも、凄く戦いやすいと感じたわ! 本当よ!」
「俺も戦いやすかった。特に2体以上出てきた時だな、対応に困ることが結構あったんだ」
「私はちくわんこが苦手ね。考えなしに突っ込んでくるから、ボーナス込みで倒すのが面倒だわ」
そして、お互いに苦手な部分をカバー出来ている。ルシカが苦手なちくわんこは俺が、2体以上で出てきたうどんぶりスライムはルシカが、そしてゆでたまコッコは俺とルシカの早いもの勝ちという状況。
いや、あまりにも攻略が楽しい。それなのに、まだ2時間ぐらいしか経過していない……。ん? あれ? この腕時計、もしかして止まってないか? 壊れてる……!?
「うわ~!! 俺の腕時計、いつの間にか壊れてる!!」
「あら、時間がわからなくなってしまったの?」
「そうなんだよ……。はぁ、時計~……結構高かったんだよなぁ、これ」
「残念ね……修理出来なさそうなの?」
これはダンジョン産のアイテムじゃないし、物理的に壊れてるっぽいし、直すより買い直すほうが早そうだなぁ……。はぁ~……。
『ボーナスチェスト、出現』
「ああそうですね~! 出現してましたね~! 今開けますってば!!」
あ~あ、今日はハズレか食券ばっかりだし、そろそろ当たりが出てくれても嬉しいんだけどな~……おっ?
『レアアイテム【うどんぶりスライムブローチ】です。おめでとうございます』
「うわぁ、要らねえ~……」
「うどんぶりスライムじゃない。あ、でもちょっと可愛いデザインね!」
なんだよこれ、ふざけたアイテムが出てきたなぁ~……。一応アイテムボックスに収納すれば、どういうアイテムなのか説明文が出るし、一旦収納して……。
◆◆◆◆◆
【うどんぶりスライムブローチ】
レアアイテム。スキル【オートどんぶりシールド】が付与されている。
5分に1度だけ、身につけた者に降りかかる攻撃をどんぶりシールドが自動で守る。
◆◆◆◆◆
「ルシカ、これ凄いわ。メチャクチャ強いぞ」
「ええ? 本当に!?」
「5分に1度、着用者への攻撃を自動で防ぐらしい!」
「凄いじゃない! 魔法付与されたアクセサリーってことね!」
なんじゃこりゃ、凄え効果じゃん……。これ、ルシカに着けてて貰おう。不意打ちの一撃に耐えられるようになるんだから、防御に問題がありそうなルシカにはぴったりだと思う。
「これ、ルシカが着けると良いよ」
「え、でも……。ケントのほうが敵に接近するんだから、ケントが着けるべくじゃないかしら」
「いや、ルシカが奇襲されて連携が崩れるほうがマズいと思う。それに、ルシカが傷つくのが嫌だからさ」
「……わかったわ。ケントの好意に、甘えちゃうわね!」
『【うどんぶりスライムブローチ】を、クルー【メリューシカ】が装備しました』
よしよし、今日は初めてレアアイテムが出て最高の日だぞ~!! この調子で、5回目のリセットも張り切っていってみよー!!
「装備出来たみたいね!」
「よし、じゃあ5回目! いってみよ~!!」
――――この後、俺は心の底からこのアイテムに感謝することになる。
そして、俺の判断が非常に正しかったのだと。ルシカが居てくれて良かったと、思い知ることとなるのだった。




