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ゲームが下手すぎてうどんを捏ねていたら、ダンジョンが出来上がりました。〜うどん作るのも、下手〜  作者: エリーゼ


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017 死闘

『警告、強化型フロアボスが出現しました』

「え?」

「え、何?」


 強化型フロアボス。聞いたことがない言葉だった。どういう意味なのかを確認する間もなく、そいつは屋根の上から飛び降りてきて俺達の前に姿を現した。


『REeeeeeeeeeeX!!』


 まるでプロレスラーの入場かの如く、ミッソースープレックスは現れた。この時俺は『名前が長いし、叫び声がレックスだったのでレックスと呼ぼうかな~』程度に考えていた。


「ブラインド!!」

『REeeeeeeeeeeX!!』

「ケ、ケント!! くるわよ!?」

「効いてない!?」


 恐竜頭の覆面レスラーことレックスは、ブラインドを発動したにもかかわらず真っ直ぐ俺の方向へと突っ込んできた。何も武器は持っておらず、その肉体のみで戦おうというのだ。

 俺は急いで体勢を低くし、レックスの背後を取ろうと試みた。しかし、それは完全に悪手だった。


『OK!! COME ON!!』

「な、くそっ!? 離せこいつ……ッ!?」

「ケント!! イ、イルジオン!!」


 ルシカの魔法攻撃は間に合わなかった。思ったよりも動きが速かったレックスに捕まった俺は、牛刀で斬りつけるも全く離して貰える気配はなく、胴体に腕を回されたと思った時には……世界が180度回転していた。


「が、はっ……!」

『REeeeeeeeeeeX!! BOMBER!!』


 1度だけは耐えたが、すぐにまた世界が回転した。2度も頭から地面に叩きつけられ、体が完全に動かなくなってしまった。そして俺から手を離したレックスは、腕を広げて回転すると竜巻を巻き起こし、ルシカのシールドをあっという間に破壊。イルジオンも消滅してしまい、俺と同様に胴体を掴まれて……。


「――――」


 声が出せなかった。俺の首が折れているのだと気がついたのは、その時だった。

 目の前でルシカが後ろ方向に投げられ、頭から地面に叩きつけられるのを見た。一撃で首がへし折れ、その瞳から光が消えていくのを……ただ、見つめていることしか出来なかった。


 ――――死んだのだ。この一瞬で、呆気なく。


 薄れゆく意識の中、死んでしまったルシカの姿だけが鮮明に目に焼き付く。叫びたくても、叫ぶことが出来ない。今朝には、あんなに幸せだったのに。さっきまで、豚肉が~って喜び合っていたのに。もう、言葉を交わすことすら出来ない。


『REeeeeeeeeeeeeeX!! STAMP!! WOW!!』


 レックスが跳躍し、恐らく俺の頭部を破壊したのだろう。そこで、俺の視界は闇に包まれた。何も考えられなくなって、俺は――――。



◆◆◆◆◆



「…………はっ!? はぁ……はぁ……!! い、生きて……ッ!?」


 俺は、どうやら死んでいなかったらしい。目覚めたのは、ルシカと夜を共にした布団の中だった。隣にはルシカも眠っていて……。


「……きゃああああああああああ!! あ、ああっ……!!」

「ルシカ、大丈夫か!?」

「あ、ああ……!! ケント!!」


 お互いに無事を確認し合う。どうやらさっきの光景は……夢ではなかったらしい。急いでアイテムボックスを確認したが、しっかりと豚バラ肉のマテリアルを入手している。


「……ナビちゃん。教えてくれ、どう……なったんだ」


 こうなったら、ナビちゃんに聞くしかない。ナビちゃんなら、全てを見届けていたはずなんだ。


『稲庭犬人、並びにメリューシカの両名は、ミッソースープレックスに敗北し、死亡しました』

「じゃあ、ここは? この状況は?」

『…………恐らく、うどんマスタリーのアンドゥ能力……。元に戻す力が作用したと、思われます。こちらからはなんのアクションもしていないにもかかわらず、お二人はこの0階層へと転移してきました』

「本来なら、どうなってたんだ……?」

『ゆっくりと、ダンジョンに吸収され……。姿形も残らず、消えていたと思われます……』


 そうか……。やっぱり、死んだのか。死んだのを元に戻して、0階層に戻ってきた……。


「……じゃあ!! 私達は、不死身って……こと!?」

『推測ですが、これはうどんジョンの中だけの現象と思われます。うどんマスタリーによる力が強く働いた結果であり、外部では生き返る……もとい、元に戻す力は強く働かないと思われます』

「そ、そう……。なのね」

「確かに、アンドゥの能力はうどんジョンの管理にしか機能してない……。外での死は、本当に死ぬってことか……」


 確実ではないが、俺達はこのうどんジョン内部で死んだとしても、0階層へ戻って生き返ることが出来るらしい。死んだ時のあの感触、絶望感までは元通りにならないが、だがそれでも……。


「……ルシカ。俺、うどんジョンのことを甘く見てた。どんなモンスターであっても、俺達は常に命のやり取りをしているんだった。あいつらは美味しい食べ物や、強い武具を落としたり、金貨を出したりするだけの存在じゃない。殺す、殺される。奪う、奪われるの関係なんだ」

「…………私も、そのことをすっかり忘れていたわ。以前よりもステータスが高くなって、何でも楽勝に勝てる気になっていた。これからは、過剰かもしれないぐらい念入りに、全力で戦うことを誓うわ!!」

「俺もだ。遊び感覚、ゲーム感覚だった。これは、殺し合いなんだ……!!」


 それでも、ここで立ち止まっていては、前に進めない!!

 さっきのは教訓だ。嬉しいことに、死をもって感じ取ることが出来た、唯一無二の経験だ。俺は……冒険者になるって決めたんだ。これで食っていくって。その覚悟の薄っぺらさを思い知ることが出来た。


「俺は、もう油断しない。必ずあのレックスに勝ってみせる!!」

「それでこそ、私のケントよ!! 私も負けない、絶対に勝つわ!!」

『もう一度アンドゥが発動する保証は、どこにもありません。ミッソースープレックスは危険なモンスターです。別のモンスターを……』

「いいや、あいつに勝たなければ俺達は前に進めない」

「油断と慢心が招いた死よ。私達は、さっきの教訓を忘れないわ!!」

『それに、強化型フロアボスで……』


 そうだ、強化型フロアボスっていったいなんなんだ? さっき、そんなアナウンスが流れたよな?


「強化型フロアボスって、どいうことなんだ?」

『スーパーレアレアリティ以上のモンスターは、その階層を同じ種族のモンスターで揃え、コストを使い尽くすことで、フロアボスだった場合に限り強化型となります。ミッソースープレックスは獣人型、そして階層に1体のみ存在していたので全てが同じ種族と判定され、強化型となったのです』

「そんなのアリかよ……」

『これはダンジョン共有のルールです。うどんジョンのみ特例ということには出来ないようです。私も、このようなシステムがあるとは今まで知りませんでした』

「つまり、今まではちくわんこ達が居たから、強化型にはならなかったのね……」


 そういうことか。コスト5限界の1階層に、コスト5のレックスを配置したから、強化型フロアボスになる条件を満たしてしまったってことか。よぉし、わかった……。


「……ルシカ、このまま挑戦しよう」

「ええ、強化型だからって引き下がるわけにはいかないわ」

『危険です。私は、お二人に……死んで欲しくありません』

「心配してくれてありがとうな、ナビちゃん。だが、サポート役だろ? なら……サポートしてくれよ。見守っててくれ、俺達のことをさ!」

『…………』


 ダンマリでも良いさ。だけど、ぬるま湯に浸って死ぬのが怖い~って雑魚モンスターだけ狩ってるなら……冒険者なんてやめちまったほうが良い。


「1階層に転移、再挑戦だ!」

「ええ、いきましょう!!」

『…………ご武運を。転移、開始します』



◆◆◆◆◆



『REeeeeeeeeeeeX!!』


 某格闘ゲームに出てくる投げキャラみたいな、筋肉モリモリマッチョレスラーがよ……!! 今までの俺は、ブラインドにばっかり頼って楽をしようとしていた。相手の真正面から雑に突っ込んでいって、間合いとか全く気にせずただ武器を振り回しているだけだった。

 だが、こいつにはそれでは駄目だ。ブラインドは効かない可能性を常に考慮し、立ち回りを考える必要がある。こいつは強い……これから俺の、先生となるような存在となるだろう。


「イルジオン!! ファイアアローレイン!!」

『REeeeeeeeX!! HURRICANE!!』


 魔法攻撃の矛先を逸らすほどの竜巻、俺が首をへし折られた後に、ルシカのシールドを全損させてトドメを刺しに繰り出した技だ。予備動作がデカい分隙が大きいから、止めることが出来るかもしれない。


『RET SET GO!! GO REX!! GO REX!!』


 このダッシュ力、2メートル以上ある図体からは信じられないほどの敏捷性。さっきはこの図体なら遅いだろうと勝手に決めつけて、それが原因で捕まった。もう同じヘマは……しない!!


 ――――トマホーク!!


「トマホーク!!」

『戦技【トマホーク】、発動確認』

『REX GUARD!!』

「効かないってかよ!!」

『いえ、効いています。痛みを押し殺して直進しているだけです!』


 さっきはダンマリだったのに、しっかりサポートしてくれるじゃないの!! そんじゃあ遠慮なく、バカの一つ覚えのようにやらせて貰うぜ!!


「トマホーク!! トマホークッ!!」

『OH NO!! AH!!』


 4発連続は堪えたか、足が止まったぜ、レックス先生よ!!


「ダブルファイアスパイク!!」

『OHHHHHHH!! AHHHHHHHHHHH!!』

「トマホークッ!!」


 初日に手斧がぶっ壊れた教訓を活かして、ホームセンターにあった手斧を6本全部買ってきたんだぜ! これが最後の1本だ!!


『AHHHH!! REX SLASH!!』

「くっ……!」


 今の手刀を空振りする動作、嫌な予感がする!! しゃがめ、どうあっても回避しろ、動け俺の体!!


「ぐ、あっ!!」

「ケントッ!!」

「掠っただけだ、攻撃に集中しろ!!」

「ダブルファイアボール!!」

『OHHHHHHHH!! WOW!! OHHHHHHHH!!』

「もっとだ、もっと!!」

「ダブル、ファイアボーールッ!!」


 くそ、どこが掠っただけだよ。左腕が動かねえ……!! 血が止まらねえ、吐き気がする……!! だが、ルシカだけに戦わせておけるかよ。まだ俺には、右腕が残ってんだからなぁああ!!

 ファイアボールが巻き上げた土煙に同化しろ、極限まで自分を消すんだ。ひたすら純粋に、レックスの首を刎ねることだけを考えろ!! 俺の殺意を全て、この一撃に乗せる!!


 ――――ディサイシブ、スタブ!!


『ッ!!』

『戦技【ディサイシブスタブ】、発動確認! まだです!!』

『OHHHHHHHH!! AHHHHHHH!! REeeeeeeeeeeeX!!』


 くそ、バカみたいに硬くて太い首じゃねえか、筋肉野郎!! まだ、投げられる体力、残ってんのかよぉ……!!


『BOMBERrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!』

「が、あっ……!!」


 動け、動け動け動け!! 動け俺の体!! ぶった斬られた程度で動かなくなってんじゃねえ、甘えてんなよ俺の左腕ぇええええええ!! 首だってまだ、へし折られてねえだろうが!! 俺の本気は、覚悟は!! 啖呵を切って会社辞めてきたんだろ、貫いてみせろよ!! 冒険者ぁあああああああ!!


「ダブル、ディサイシブ……!!」

『DOUBLE!! REeeeeeeeeeeeX!!』

「ケントーッ!!」


 動けぇえええええええええええええ!!


「ダブルディサイシブ、スタブッ!!」

『OH……!! AH……』

「やった、か……!?」

『いえ、まだです!! やっていません!!』


 くそが、どんだけ……頑丈なんだよ、クソったれ……!!


「ダブル……ファイア、ソードォオオオオオオ!!」

『OHHHHHHHHHHHH!! A、A……』

『まだです、まだ……!!』


 もう一度だ、根性入れろぉおおお!! この丸太みてえな首をぶった切って、ダイナソーヘッドを切り飛ばしてみせろぉおおおおおお!!


 ――――スラッシュ!!


「……ダブル、スラァアアアアアアッシュ!!」

『――――ッ…………』

『Miso.スープレックス、完全撃破!! 強化型フロアボス完全撃破ボーナス、6000UMP獲得!! 安全地帯に、なりました……!!』


 ああ……やべえ、体中が、痛え……。スープレックスの威力、ヤバすぎるだろマジで……。


「ダブルセイントヒール、ダブルヒール!! ケント、しっかりして!!」

「う、ううあ……。悪い、助かる……」


 ルシカの回復魔法が、メチャクチャあったけえ……。でも、なんていうか血を、流しすぎた感じがする。頭が痛いし、吐き気がヤバい。


「……ナ、ナビちゃん!! ミニうどんを出して!!」

『ご注文の【ミニうどん】です!!』

「ケント、口を開けて。ほら、食べて!!」


 この状況ってさ、普通はこう、ポーションみたいなのを飲ませる場面だよね……。うどんなんだ、まあうどんが全回復アイテムなのが良くないよね。いや、うどんは悪くないよ。食べられない俺の今の状態が悪いだけ……。うう、口の中ににゅるっと入ってきた……。悲しいぐらい美味い……。もちもちしてる……。


「う……うお……。あああ……!! 俺、復活……!!」

「凄い効き目……。私の回復魔法、もしかして要らないんじゃ……」

「いや、回復魔法を受ける前は食べられるような状態じゃなかった。絶対に、要る!! 助かった、本当にありがとう!!」

「そ、そう? なら、よかったわ!」


 一口でいけるミニうどんでも、食べるための体力がなくては喉を通らない。ルシカの回復魔法は、絶対に必要だってこと!! それにしても、これで1階層かぁ~……。つ、つえぇ~……!!


「強化型、マジで桁外れに強いな……」

「あれだけの攻撃と魔法を受けても死なないなんて、本当に異常だわ!!」

「……で、あの宝石でゴッテゴテに飾られたプラチナチェスト、どうする?」

「あれね……!! そうだわ、ジュエルチェストとでも呼びましょう!」


 そんで、ジュエルチェストね……。プラチナチェストよりも、絶対に格上のボーナスチェスト、だよな? う、おおぁ~……。体が動く、左腕も痛くない!! よぉし……。


「2つもありますんでね……?」

「じゃあ、私は左!」

「俺は、右!」


 じゃあ開けるか、ジュエルチェスト!! 初めてのレアリティだぜ!!


「「じゃじゃ~ん!!」」

『レジェンダリーアイテム【マテリアル:うどん生地】を獲得しました』

「ええ~……」


 なんでうどん生地、もううどんはあるって……いつでも食べられるでしょうがぁ……。


『レジェンダリーアイテム【セットマテリアル:味噌モツ鍋セット】を獲得しました。分解可能なマテリアルです』

「おお……? おお!?」

「なにかしら、これ。セットマテリアル?」


 セットマテリアルなんてあるのか!! じゃあ、この味噌モツ鍋セットにさっきのうどん生地を……いやいや、そんな安直な発想では駄目だ。内容物をしっかり確認していくぞ。


「味噌モツ鍋は、まずもちろん味噌のマテリアルがあるな。で、ついでに大盛りのニラが入ってるな!! そしてモツは…………はぁあああああああああああ!?」

「ド、ドドド、ドッ……!?」

「ドラゴォン!? レジェンダリーマテリアル、ドラゴン白モツだとぉおおおおおおお!?」


 ドラゴンの白モツ!? な、なんだこりゃああああああああ!? ちょっと、これは……。こ、これは、食いたい。早く食べたいぞ! そして、思いついちまったことがある!


「ルシカ……俺、思いついちゃった料理があるんだ」

「このマテリアルと、昨日ガチャで手に入れた調味料マテリアルを使うのね!」

「今回はなんと……2品いけるぞ!!」

「ええ!? 本当!?」


 ああ、本当だ。俺はこれから、スタンダードなうどん料理と、とんでもねえうどん料理を作るぜぇ!!



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― 新着の感想 ―
ありがとうちくわんこ… それにしてもプロレスラーは怖いな いや本当に…
初瞬殺(´・ω・`) 今までが順調過ぎたまでありましたねぇ ナビちゃんガチで心配しているわけで…… でも犬人さんが言うとおり、立ち止まるわけにもいかないって言うね。 もちろん、移動出来るようになった時…
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