016 重戦士グラビ豚、登場!
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全く、どこの局もあの銃弾弾きマンのことを知りたくて追っかけ回してるみたいだなぁ~。うちの局の連中は何をやってるんだ? さっさと情報を捕まえてこないと、俺がまた知ったかぶりコメンテーターとか言われるだろうが。全く、仕事をしろよ仕事を。どの局よりも先に紹介しないとぉ、数字取れないんだからさぁ。
「……他人の不幸は蜜の味」
「ああ? 誰だ、どっこら入ったんだ~? おーい、時代劇の人入ってきちゃってるよー」
な、なんだこいつは? 時代劇かなんかのゲストさんか? 俺はこれから昼の生放送の準備が……。
「他人の平穏を脅かし、甘い汁を啜る恥知らずの悪鬼外道。この海老天之助が、成敗してくれる」
「ちょっとちょっと、貴方たぶんこのスタジオじゃな」
「――――秘剣、海老剃」
あ……? おお、なんか抜刀したように見たけど、随分と格好良い演技…………? なんだ、視界が、ズレ……?
「――――きゃぁあああああああああああああああ!!」
「み、宮家さん!? 宮家さぁん!?」
「な、ひっ……」
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「ナビちゃ~ん? 聞いてる~?」
『……はい。申し訳御座いません、別件の処理中でした。今、片付きました』
ナビちゃんってば、急に応答しなくなるからびっくりしたぜ。でもまあ、お引越ししたばっかりなんだし、色々と忙しかったのかな~?
『回収と再配置ですね。お手数ですが、一旦現状復旧のために全回収をお願いしてもよろしいでしょうか?』
「ええ? ああ、いいよ。おっ、全回収ボタンなんて増やしてくれたんだ!」
『はい。恐らくこれで、全てのモンスターを回収することが可能です。これからもダンジョンの維持のため、定期的にお願いをする場合があります。ご協力ください』
「うん、いいよ~」
そっかそっか、移動したばっかりだし、なんかちょっとシステム的に不都合が出ることもあるのかな? まあよくわかんないけど、ナビちゃんが全回収して欲しい時に全回収すれば良いってことね。
『その代わりに、プリセット機能を作ってみました。配置したいお気に入りのモンスターを登録すれば、プリセット呼び出しから簡単にセット可能になります。また、私が独断と偏見でセットするおすすめ配置も追加致しました。UMPの消費は御座いません』
「ええ~? 至れり尽くせりじゃん! なんかありがとうね~!!」
『いえ』
昨日の扱いの悪さに怒ってるかと思ったけど、ナビちゃんがかなり仕事をしてくれた。プリセット登録に、呼び出しね~。それからおすすめ配置か……。あ!!
「ナビちゃん、配置除外も作ってくれる? 海老天之助は絶対無理!!」
「コスト1のレジェンダリーモンスター、あれは絶対に無理ですよ!!」
『はい。では今日中に除外登録も作成致します』
「ありがとうね~!」
海老天之助がおすすめ配置で入ってきたら大惨事だし、あいつは絶対に除外だ。コスト1でセット出来てUMP5万、絶対に罠だろこれ……。こんなの無理、無理ですからね~!!
「じゃあ、タマカモネギと重戦士グラビ豚! 1階層から頼むわ……そういや、4階層の難易度は?」
『4階層の難易度は2と3階層同様です。5階層でレベルが上がり、9階層まで同じ難易度となります。セット、完了致しました』
「オッケーありがとう! じゃあ、いこうか!」
「ええ、頑張るわよ!」
結構先のことまで教えてくれるようになったな~。つまり、1から4階層はお試しフロアで、5階層から本番ですよ~って感じか。まあとりあえず今日はグラビ豚狩りだ!!
『タッマァ~』
「カモがネギを背負ってる……んじゃなくて、タマネギを抱えてるな……」
「ファイアアロー」
『タマァ~!?』
タマカモネギ、ゆでたまコッコの弱体化板みたいなやつだな……。たぶん、タマネギを投げつけてきて、あれが爆発するかなんかだと思うんだけど、いかんせん動きが遅すぎる。
「……あら? 爆発しないのね?」
「俺も爆発するものだとばかり……」
『タマ、タマァ~……』
爆発しないのかよ、そのタマネギ。しかもまさかなんだけど、ゆでたまコッコみたいに次弾の用意が出来ないのか? 今持ってたタマネギで、終わり!?
「……じゃあ、死のうか」
『タマッ!?』
『タマカモネギ、撃破。ボーナス100UMP。【マテリアル:タマネギ】を獲得しました』
「おお、タマネギだ。色々なものに合うからな~」
「やった! 初めての野菜のマテリアルじゃない?」
「確かに。俺、こいつのこと好きかも……チョロさを含めて」
今まで戦ってきた全てのモンスターから比べても、タマカモネギは弱すぎる。あまりにも脆弱だ……。だが、もう1体待ち構えているやつのほうは、手強いだろうなぁ……。
『……ニンゲン、イザ、ショウブ』
「……!」
驚いたな、いきなり曲がり角から現れたと思ったら、喋るのかよこいつ。重戦士グラビ豚……なかなか、礼儀ってのを弁えてるモンスターじゃないか。どっかの重騎士に見習わせてえよ。
「おう、2対1で悪いが、勝負だ!!」
『カズ、カンケイナイ。ツヨイ、カツ!!』
「くるわよ、ケント!!」
俺は弱い肉じゃないぞってか? 弱肉強食の世界で勝ち抜いてきた、そんな歴戦の傷の数々を感じさせる風貌だ。2足歩行の豚、オークってやつなのかもな。巨大な戦斧を持って居て、動きやすそうな革鎧を身に着けている……。ボーナスを狙うなら、あの戦斧の破壊……か? とにかくやってみるしかねえな!
「ブラインド」
『ムッ!!』
「ケント、あの戦斧は魔法遮断の力があるみたいよ!! 防がれたように見えるわ!!」
「へえ!!」
今、戦斧で顔を隠したのはそういう意味かよ。ブラインドが通用しない……いや、不意打ちなら当たるだろうな。それに、手を止めさせることぐらいなら出来るはずだ。完全に通用しないわけじゃない。
「イルジオン、ファイアアロー!!」
『ハッ!! フンッ!!』
「ファイアアローレイン!!」
『……戦技、重旋風ッ!!』
正面から攻撃するのは大体弾いてきやがる。ルシカのファイアアローレインがかすりもせずに払われたのを見たのなんて、これが初めてのことだぞ。何がヤバいって、これが1階層のレベルってことなんだよな。2階層以降はこれより強いとなると……卑怯だが、不意打ちも視野に入れなきゃなんねえだろうな!
「隙ありだぜ!!」
『イイヤ!! グラビトンッ!!』
「ぐぉ……!?」
なんだこれ、体が……重い!? 強烈な重力攻撃か!? 魔法攻撃まで使えるのかよ、グラビ豚……その名の通りの魔法か。なるほど、な!!
「ダブルファイアスパイク!!」
『アタラ、ヌッ……ウッ!?』
ファイアスパイクを同じ場所に発生させず、避ける方向を読んで偏差で発動させたのか。さすがの戦闘センス、あいつの重力魔法も解除された……反撃だぜ!!
「ブラインド!!」
『グッ!? シマッタ……!!』
「……はぁ!!」
悪いが、強い方が勝つんだ。恨んでくれるなよ!! まずはその武器を……取り上げる!! なん、だ……? 何かが頭の中に……!?
――――ディスアーム……?
「ディス、アーム……!!」
『グ、オァ……!?』
今のは、なんだ!? 自分で発動しておいてなんだが、武装を解除させようとしたら、物凄くスムーズに体が動いて、グラビ豚の両手を切断したぞ!? い、今は驚いている場合じゃない。このまま、トドメを刺す!!
「はぁあああ!!」
『ウ、グ……ミゴ、ト……』
『重戦士グラビ豚、撃破。完全撃破ボーナス、2000UMP獲得。【マテリアル:豚バラ肉】を獲得しました』
「おお……。おお!!」
「あら、やったじゃない!! それとケント、遂に戦技スキルを閃いたのね!!」
豚バラだー!! え、えっと? 戦技……? さっきの唐突に頭の中で浮かんだ言葉、ディスアームが戦技スキルっていうのか?
「豚バラの感動と、戦技スキルの困惑で、どういう感情になれば良いのかわかんない……」
「特定の行動の練度が上がった時に、突然閃くことがあるのが、戦技スキルよ!! ケントが発動したディスアームは、使い手が非常に少ない戦技スキルって印象ね。相手に攻撃して武装を解除することに特化した、無力化系の戦技スキルよ!」
もしかして、このダンジョンに出てくるモンスターの部位破壊とかを狙って攻撃してたから……? 相手を無力化させる練度が上がって、ディスアームを閃いたってことか!
「なるほど~……!! 確かに、モンスターのボーナス狙いで部位破壊をしていたし、それがこの閃きに繋がったのかも!」
「きっとそうね! ねえねえ、どうする? 早速豚肉を手に入れたし、もう1体のスーパーレアの方にも手を出しちゃう?」
うんうん、いいね! グラビ豚からはまだまだ別の部位が獲得出来る気がするけど、とりあえず目的だった豚肉は早速手に入ったことだし、Miso.スープレックスとも戦ってみるか!
「あれ、コスト5で基本が1500UMPだったのか」
「でもスーパーレアって、同じレアリティでしょう? そこまで変わらないんじゃないかしら」
「まあコストも上がってるしなぁ~。UMPが美味しい分、モンスターの数に制限をかけたいって感じなのかなぁ?」
ミッソースープレックスはコストが重くてUMPも高めなのか。まあ、サー・ロインとグラビ豚と同時に出た同じレアリティのモンスターだし、そこまで変わらないだろう。
『……遅れました。完全撃破ボーナスチェスト、ボーナスチェスト出現。安全地帯となりました。回収と再配置、完了』
「ん~どっちも木の箱か。じゃあそこまで期待出来ないか?」
「そうねえ~……」
ボーナスチェストの中身は、どちらも小金貨交換券だった。10グラムが2つではあるが、これでも100万円だ。あまりにも嬉しいので、今度ルシカにまた新しい服を買ってあげたいと思う。あ、俺の服も買ったほうが良いかな~?
――――この時、俺達は油断していた。いや、完全に舐め腐っていた。
そして忘れていたのだ。ここは、危険なモンスターが出現するダンジョンであるということを……。
「それじゃ、リセットするぞ~」
「ええ、次もチャチャッと倒しましょ!」
――――俺達は、ヤツに……思い知らされることとなる。




