−かくれんぼの章−
『アスター、怒ってるかなぁ』
電子頭脳に直接送られてきたきょうだいの言葉に、アゲート・ジェードは溜め息を返す。
『アスターより俺のペアのやつが怒ってそう』
すると今度はもう一人のきょうだいがおっとりした口調で信号を送る。
『えー、アゲートのパートナーってだれだっけー』
『リーダーのウイスタリア・フェナスよね?』
テルル・マルメロの質問に、アゲート自身でなくネオン・ガレナが答えた。
『そうそう。うるさいんだよな、あいつ…』
アゲートは再び溜め息を吐く。
『でもでも、テルルはネオンのパートナーの方がうるさいと思うの』
テルルの言葉にネオンは、あぁ、と納得してつい一人で頷いた。
『ベリル・ティールねー。そういえばテルルのパートナーはバジル・エレスチャルだっけ?ベリルはバジルが大スキだからねー』
『そーなの!もーすっごくうるさい!』
テルルが堪えかねたように力を込めて言う。
『お前、オレのバジルに何かあったら承知しないぞ!ってやつな』
アゲートが真似して笑う。『そんなにバジルがいいなら、ネオンに変わってもらえばいいのよ。そしたらテルルもネオンとペアになれてうれしいのに』
『それは無理よ』
テルルの言葉にネオンは苦笑しながら信号を返す。
『男女ペアが原則だもんな』
アゲートも宥めるような調子で言葉を送った。
そんなネオンとアゲートに、妹気質のテルルは不機嫌をそのまま信号にして送った。
『ねー、ところでさ、この状況ってなんなのかなぁ』
ネオンが話題を変えた。
『軍に反発する奴等の仕業じゃない?』
『あーなんかアスターに聞いたことあるー』
『アゲートがお菓子なんかにつられるからー』
『うるさいなぁ。お前らも一緒だろ?』
『でもさ、あのお菓子、あたしたちを動けなくするほどだよ?ってことはあれは、ヒューマノイドに作用する薬物が入ってたってことよね』
『テルルわかんない』
『お前そんなんだからバジルにチェスで勝てないんだよ』
『かんけーないもん!』
『あるよ』
『ちょっとアゲート!テルルいじめないでよ!それより、犯人はあたしたちがヒューマノイドだって分かっててやったってことよ』
『つまり、軍反対派じゃなくて、ヒューマノイド反対派、もしくは反アスター派の人間の犯行ってわけだ』
『えー!?アスター、殺されちゃうの?』
『そうよ!アスターが死んじゃったらどうしよう!あたし、アスターの修理の仕方なんか知らないわよ!』
『オレだって知らないよ!』
『医務員さんなら修理できるんじゃないの!?』