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5.グリフィス

 輸送隊が、すでにかなりの規模を持つ巨大な野営地へ近づくと、すぐに迎えの者がやって来た。


 冒険者たちもここで獣車を降り、送迎要員たちと別れると、そのまま野営地の一区画へ案内されていく。


 道中、光神は空高く姿を現し、一日の中でも最も激しい熱を放っていた。


 皇家冒険団の統一された制服を身につけた者たちが、絶えず行き交っている。


 足取りは速いが乱れはなく、額には汗がびっしりと浮かんでいるものの、不満そうな表情を見せる者はいない。


 誰もが自分の仕事に満足し、真剣に取り組んでいることが窺えた。


 勤勉で、希望に満ちた空気。


 その様子をひそかに観察していた冒険者たちは、心の中で満足していた。


 どうやら蒼藍帝国は、本当に噂通り気前がいいらしい。


 案内役はほどなく、一行を広々とした四角い大屋へ連れていった。


 どうやら会議を開くための建物らしい。


 中へ入った数十人の冒険者たちは、一か月近い旅を経て、ようやく今回の任務を取り仕切る人物と顔を合わせることになった。


「カルロさん! 今回、あなたが隊を率いると聞いて、本当に安心しましたよ!」


 屋内はかなり広く、席と机が用意されていた。全体は横一列と縦二列を組み合わせたような配置になっている。


 上座に座っていたのは、長身でかなり整った顔立ちの男だった。


 わずかに波打つ金髪に、鮮やかな碧緑色の瞳。


 カルロの姿を見ると、すぐに親しげな表情を浮かべ、立ち上がって歩み寄ってきた。


 カルロも相手を見るなり嬉しそうに笑い、慣れた様子で褒め返す。


「グリフィス! 今回の探索任務はお前が担当なのか? 驚いたな。そんな若さでもう皇家冒険団の責任者の一人とは、大したもんだ!」


 カルロと軽く握手を交わすと、グリフィスはすぐに謙遜した。


「カルロさん、買いかぶりですよ。私は探索組に四人いる副組長の一人にすぎません。まだまだ学ぶことも多いですし、今回もよろしくお願いします」


 もともと面識があるらしい二人が軽く挨拶を交わした後、グリフィスに促され、冒険者たちも思い思いに席へ着いた。


 ただ、男女の冒険者は自然と二手に分かれ、互いに向かい合う形で座っている。


 冒険者たちが次々と席に着くのを見ながら、グリフィスも今回雇われた探索隊を手早く観察した。


 カルロ、老バダ、アンダ、そしてヴィンセント。


 一人ずつに視線を巡らせるにつれ、グリフィスは内心かなり満足し、ひそかに安堵した。


 ようやく、捨て駒ばかりが送られてくる状況ではなくなったらしい。


 だが視線が一通り皆の上を通り過ぎ、最後に小柄で可愛らしい一人の女性へ届いた時。


 グリフィスは思わず、ほんの少し長く目を留めた。


 口元には、狩人を思わせる笑みがわずかに浮かんでいる。


「皆さん! 遠路はるばる、これほど困難な任務を引き受け、帝国の呼びかけに応じてこの辺境まで来てくださったことに感謝します」


「私、グリフィスが皇家冒険団を代表し、皆さんへ謝意を申し上げます!」


 蒼藍帝国についての噂が本当かどうかはともかく、グリフィスのこうした振る舞いから、多くの冒険者は確かに誠意を感じ取った。


 嬉しそうに頷く者も多く、中でもジェットはひときわ興奮しており、丸い顔まで赤く染まっている。


 老バダとヴィンセントだけは何の反応も見せず、アンダは鼻で笑った。


 グリフィスはそれほど気に留めなかった。


 挨拶を終えると近くの者へ手で合図を送り、ほどなく湯気を立てた料理と酒が次々と運び込まれてくる。


 長い机はあっという間にさまざまな料理で埋まり、香りが立ち昇り、見た目にも食欲をそそる。


 挨拶や建前の話はもう十分だと思い始めていた冒険者たちも、これを見れば文句はなかった。


「皆さんのお時間をあまり取らないよう、この後は食事を楽しみながら聞いてください。今回新たに発見された迷宮城の情報と、皆さんに担当していただく任務について説明します」


 グリフィスが言い終えるや否や、多くの冒険者は待ちきれないように食事へ手を伸ばした。


 焼いた肉を頬張っては酒を飲み、時おり嬉しそうな声まで上げる。


 室内はたちまち、少し騒がしく雑然とした空気になった。


 それを見ても、端正な顔立ちの金髪の男は不満や侮蔑を表に出さず、相変わらず完璧な笑みを浮かべたまま話を続ける。


「この新しい迷宮城が発見されたのは、数か月前のことです。辺境で任務を行っていた数人の冒険者が、偶然、壊死の大地の奥深くへ入り込み、そこでこの古く失われた遺跡を発見しました」


「報告を受けた帝国はすぐに人員を派遣し、初期調査を開始しました。周辺と外縁部を調査した結果、人工造物型の迷宮城である可能性が高いと判断しています。現在、内部に棲みついていることが確認されているのは、骸骨の軍勢、食獣人、緑皮鬼などです……」


「ああ、そうでした。皆さんにお伝えするのを忘れていました。その第一報を帝国へ届けた冒険者たちは、すでに世襲男爵へ叙され、実領地も与えられています。皆さんも今後、同じように重要な情報を得ることがあれば、ぜひ帝国へ知らせてください。帝国は昔から、功績への褒賞を惜しみませんから」


 世襲男爵という言葉を聞き、多くの冒険者が無意識にヴィンセントへ視線を向けた。


 だが寡黙な男は気づいていないのか、相変わらず表情一つ変えず、ひたすら料理を食べ続けている。


 席に並んだ料理の半分近くは、ヴィンセントとアンダの二人に消されていた。


 一方、ドロシーはその話を聞くと瞳をわずかに輝かせ、こっそり義兄へ目を向けた。


 その小さな仕草を、グリフィスは見逃さなかった。


 内心で何かを測るように考えている。


「外縁部の調査段階はすでに終了しました。次はいよいよ第二段階、迷宮城内部の探索です。そのため、皆さんのような経験豊富な冒険者の力が必要になります」


「第二陣は、皆さんが到着する前にすでに出発しています。あと数日もすれば、何らかの報告が戻ってくるでしょう。その時には情報を整理してカルロさんへ渡しますので、その後、皆さんに探索任務を引き継いでいただきます」


 話を聞いていた老バダは、雑に切られた大きな肉の塊を食べながら、何でもないことのように尋ねた。


「第二陣はもう出発した。俺たちは第三陣。それなら第一陣は? どこへ行った?」


 その言葉が出た瞬間、食卓を満たしていた賑やかな空気がわずかに沈んだ。


 誰もが食事や酒を続けてはいる。


 だが周囲を窺い、考え込むような視線が明らかに増えていた。


 鋭い質問を受け、意気揚々としていたグリフィスも一瞬だけ面食らった。


 だがすぐに表情を整え、最も年老いた冒険者へ丁寧に尋ねる。


「あなたがバダさんですね?」


「老バダでいい」


 口の中にまだ食べ物が入っていたが、老冒険者はまったく気にせず、少し聞き取りにくい声で答えた。


 グリフィスは笑みを浮かべて続ける。


「老バダさん。地の魔王の『生体迷宮』で、傭兵団『槍と剣と火』による第十三層迷宮の突破を助け、遊騎兵ギルドの年報にも記録され、輪と足跡商会の速報にも載った伝説的な冒険者。この探索隊にあなたを迎えられたことには、私も驚きましたし、本当に幸運だと思っています」


 老バダは手を振り、どこか面倒そうに言った。


「運が良かっただけだ。何か問題があるなら、はっきり言え。俺たちは全員、命を売りに来た冒険者だ。情報を隠されたせいで任務を失敗するくらいなら、必要なのは正確な状況だ」


 グリフィスは頷いた。


 意図を見抜かれたことへの不満は表に出さない。感情を抑えることにはかなり長けているようだった。


「探索は、本格的な攻略に入る前に欠かせない段階です。当然、一定の危険はあります。第一陣の探索隊は全部で十七人が出発しましたが、戻ってきたのは二人だけでした」


「しかも二人とも重傷を負っており、現在は帝国内へ送り返して治療を受けています」


「この野営地には治療要員がいないのか? 四正教に頼んで、神官や牧師、修道女を駐留させてはいないのか?」


 それまで控えめだった態度から一転し、老バダの質問はますます鋭くなっていった。


 自分の命が関わることについて、この老冒険者が適当に済ませることはない。


 カルロを含め、ほかの冒険者たちも老バダを止めようとはしなかった。


 何しろ次に迷宮城へ入る探索隊は、自分たちなのだ。


 経験豊富なこの伝説的冒険者を適当な言葉では誤魔化せない。


 そう悟ったグリフィスは、できる限り完璧な笑顔を保ちながら、遠回しな言い方をやめて状況を説明することにした。


 どうせ彼らは、皇家冒険団のために迷宮城へ入って探索する人間だ。


 功績があれば自分が受け取り、何かあれば死ぬのは彼らなのだから、この程度の無礼を気にする必要もない。


「治療要員なら、もちろんいます。第一陣が辺境へ到着した頃には、帝国もすでに多くの医療要員を派遣していました。そのためだけに一つの大きな区画まで設けており、医療資源も十分に揃っています」


「皆さんの安全を軽く扱うようなことは決してありません。私の言葉が大げさかどうかは、これから数日かけて野営地を見て回れば、皆さん自身にも自然と分かるでしょう」


「四正教についてですが、帝国では信仰そのものがあまり盛んではないため、もともと神職者の数が多くありません。現在は『光騎士』のディアドラさんにも加わっていただいていますが、彼女を含めた神職者は、今のところ全員が攻略組へ編入されています」


「ですから……残念ですが、探索組から皆さんの隊へ神職者を回す余裕はありません」


「魔法師は雇えないのか?」


 老バダが眉を寄せ、さらに尋ねた。


「帝国から『循律の塔』へもすでに問い合わせていますし、領内各地でも魔法師の募集を行っています。ただ、こちらも人数がまったく足りておらず、現状では攻略組への配属を優先するしかありません。ですので、探索組の皆さんには……」


 今度は、グリフィスが最後まで言い終えることができなかった。


「バン!」


 突然、大きな音が響く。


 一人の冒険者が拳で机を激しく叩き、怒りに満ちた顔で立ち上がっていた。


「神職者による即時の治療も浄化もない! 問題を解決するための魔法師の支援すらない! それじゃ、前の探索隊があれだけひどい死傷者を出したのも当然だろ!」


「俺たちは任務を果たしに来たんだ! 蒼藍帝国のために、自分たちの命で迷宮城を埋めに来たんじゃない!」


 激しい怒鳴り声が響くと、大屋の外から武装した者たちが何人も一気に入ってきた。


 腰の剣へ手を添えたまま、無表情にグリフィスと冒険者たちを見据えている。


「落ち着け、落ち着け。みんな、冷静になれ」


 まずい状況だと気づいたカルロが、慌てて酒を置いて立ち上がり、場を宥めようとした。


 立て続けに言葉で刺激され続け、さすがのグリフィスもついに笑みを消した。


 怒鳴った冒険者を冷たい目で見据える。


「帝国が出した依頼の内容なら、私も読んでいます。そこにははっきりと、任務には生命の危険があると書かれていた。あなたは文字が読めないのですか?」


「冒険者でありながら、『生命の危険』という言葉が何を意味するのかも分からない? それとも、豪華な褒賞だけが目に入って、ほかは何も見えなくなったのですか?」


 真顔になった長身の美男子には、貴族として上に立つ者特有の威圧感があった。


 わずかに波打つ金髪が風もないのに揺れ、怒れる獅子のように冒険者を睨み据える。


 それだけで、相手の詰め寄る勢いは一気に半分ほどまで削がれた。


「状況はすでに説明しました。それでも不満があるというのであれば、帝国は寛容です。今からでも任務の辞退を申請できます」


「皇家冒険団は、皆さんに力を貸していただくために門戸を開いているのであって、騒ぎを起こしてもらうためではありません」


 言い返された冒険者は、皆の前で面子を潰された。


 まだ何か言って取り返そうとした、その時。


「ドン!」


 また重い音が響いた。


 だが今度は、先ほど拳で机を叩いた程度の振動ではない。


 大屋全体が突然、はっきりと揺れた。


 中にいる全員の身体まで大きく揺さぶられる。


 大地そのものが震えていた。


「私は役に立つ情報だけ聞きたい。これ以上、くだらない話を聞かせるな。誰であろうと同じだ」


 声の主は、女野蛮人だった。


 アンダはいまだ食べ続けており、顔すら上げていない。


 口いっぱいに食べ物を詰めたまま話しているため、言葉さえ少し聞き取りづらかった。


 それでも、その発言を軽く見る者は一人もいなかった。


 蒼藍帝国の貴族であるグリフィスでさえ、同じだった。


 そしてアンダの後ろに立っていた数人の皇家冒険団員は、ひどく顔を強張らせ、額に冷や汗を流していた。


 彼らには見えていたからだ。


 女野蛮人の足元にある厚い石造りの床が、原形も分からないほど砕けているのを。


 大屋の中は、一時、完全な沈黙に包まれた。


 しばらくして、ようやく老バダの声が響く。


「副組長。食事が終わった後で、少し時間をもらいたい。今ある迷宮城の情報を、全部見せてくれ。その後どうするかは、俺が隊のみんなと相談する。それでいいな?」


 ちょうど場を収めるきっかけを与えられた形だった。


 この伝説的な冒険者をグリフィスはかなり頼りにしており、態度も丁寧だった。


 再び完璧な笑みを浮かべる。


「もちろんです。老バダさんほどの経験があれば、第三陣の探索隊も必ず無事に任務を果たせると信じています」


 本来なら、それはカルロが担うべき役目だった。


 だがカルロ自身もよく分かっている。


 自分は実質的には、皇家冒険団と冒険者たちとの間を取り持つ橋渡し役にすぎない。


 迷宮城の探索について、この場の誰も老バダ以上だとは言えなかった。


 女野蛮人でさえ、それは同じだ。


 カルロ自身も後で迷宮城へ入る一員なのだから、当然、異論などなかった。


 そして部屋の隅では。


 ヴィンセントが相変わらず一言も発することなく、顔を伏せて料理を食べ続けていた。

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