フランのさんぷーちゃん
今日は火曜日。
めぐるちゃんもみゆちゃんも学校。
小鳥は大学行ってからアルバイト。
つまり、フランとふたりきり。
「お嬢様。今日は何して遊びますか?」
朝の8時。
みんなを見送ったあと、フランはそう尋ねてきた。
フランとしたいことは山ほど。
ゲームもしたいしお出かけもしたい。
何をしたいか聞かれるといつも迷ってしまう。
「ふふっ。迷ってますね。
そんなお嬢様にこちらをプレゼントします。」
そう言うとフランはなにかを取り出した。
それは人生ゲームで使うようなルーレット。
ただ、書かれてるのは数字じゃない。
『ゲーム』
『ドライブ』
『水族館』
『ぎゅー』
『公園で遊ぶ』
『お家デート』
そんな6つの言葉たち。
つまりこれが意味するのは……。
「当たったのが今日の予定だね。」
「はい!そういうことです!」
「じゃあ早速回そうか。」
ルーレットはくるくると回る。
選ばれたのは……。
「わ、お家デートだね!」
「はい!お家デートですね!」
ということで今日の予定はお家デート。
さて、何をしようかな。
「では準備してまいりますね!
えへへ。お嬢様としたいことがあるのです!」
そう言ってフランはキッチンへと駆けていった。
キッチン……ということはちょっと待機かな。
キッチンは基本的にフランの聖域。
料理のお手伝いはしちゃいけないのです。
「あ!お嬢様!今日は入っていいですよ!
一緒にお菓子作りましょう!」
にへへと笑顔でフランが手をこまねいた。
わ、それは嬉しい。
キッチンへと入ると、フランがエプロンを着けてくれた。
お揃いのエプロン、嬉しい。
「今日はなにを作るの?」
「さんぷーちゃんです!」
「宇宙料理?」
「中華料理です!」
初めて聞く言葉に、思わず聞き返してしまった。
さんぷーちゃん。
なんか可愛い。
「どんなお菓子かは作ってからのお楽しみです!
えへへ。一緒に作るの楽しみです!」
そう言ってフランは冷蔵庫から材料を取り出した。
冷蔵庫からは卵。それだけ。
「あれ?卵だけ?」
「あとはお塩とお砂糖と片栗粉ですね。
食感を楽しむスイーツなのです。」
「ほほう。」
手際よくフランが材料を混ぜていく。
ぐるぐる混ぜ混ぜ。
よく分からないなにかが出来上がり。
「これ食べていいの?」
「わ、まだ!まだです!めっです!」
私が伸ばした指先をフランがお口でキャッチした。
むにゅむにゅされてる。
ちょっと楽しい。
ちょっとむにゅむにゅしたあと、私の指は解放された。
さて続き。
「あとはこの生地をこねながら焼くのです。
一緒にやりましょう?」
フランがワクワクとした表情でそう提案した。
そっか、ここからが私の出番か。
おたまを両手で握るフラン。
その両手をさらに私の手のひらが包み込む。
ふたりでおたまを握りこんで……。
「フラン、これだと火つけれないね。」
「えへへ。でも嬉しいのでちょっとこのまま。」
フランが喜んでるならなにも問題はない。
両手でフランの手をおたまごとにぎにぎ。
ちょっとすると、フランはふーっとひと息つく。
そしてさっと一瞬だけ手を離してコンロの火を点けた。
「ふんふふーん♪」
私の手は添えてるだけ。
フランが勝手に動かしてくれる。
でもとても楽しい。
だってフランの手を握って、その鼻歌を聞いてるんだもん。
「さんぷーちゃん♪さんぷー。」
よく分からない歌に合わせてさんぷーちゃんをこねこね。
ひたすらこねこね。
何がどうなったら完成なのかな。
よく分かんないけどこねこね。
こねこねこねこね。
こねこねこねこね。
こねこねこねこね。
こねこねがゲシュタルト崩壊してきたころ。
フランがひとことだけ鳴いた。
「にゃー!」
そしてまたさっと火を止めて、勢いよくお皿に盛り付けた。
よく分かんない黄色い物体。
これがさんぷーちゃんの完成形?
「ふふー。なにはともあれ実食です!
お召しあがれ!」
言われるがままにひとくち。
こ、これは……!
「変!な、なんか初めて食べた!
あ、味は普通にあんま……いやうん?だけど!
なんか歯触りが変!くっつかない!」
そう、ひたすらに変。
味はなんかカスタードを味気なくしたような感じ。
特筆すべきは食感だ。
なんか変としか言いようがない。
「ふふー。では成功ですね。
これは感じで三不粘って書くんです。
歯にも皿にも箸にも粘らないのです……!
漫画で見て気になりました!」
どやぁと笑顔。
どうやら狙い通りの味と食感らしい。
「さすがフランだね。なんでも作れちゃうね。」
味はあんまりだと思ったけど、フランの笑顔見ながらならいくらでも食べれちゃう。
とっても美味しい。
「えへへ。
今日はどんどん漫画のお料理一緒に作りましょう?
今日のお家デートはお料理デートです。」
ぎゅーっとフランが私にくっつく。
私はそれにまたぎゅーで返す。
それから私たちは一緒にたくさんの物を作った。
作ったものは小鳥の夜ご飯になった。
ふたりでハイタッチ。
フランと一緒ならお料理もすごく楽しい。




