夜のお客様
「ふんふふーん。」
「ふんふふーんですねー。」
鈴がこのみちゃんのお家に帰ってきたのは夜の7時。
それからお家に送ってもらって夜8時。
私が遊び足りないと駄々をこねたので、今はお家の前で縄跳びをして遊んでいた。
「見て見てー。2重跳び行くよー。ほいっ。」
「わ!すごい!大成功です!」
4回目のチャレンジで成功。
私は縄跳びの才能があるらしい。
フランが私の方に飛びついて褒めてくれた。
そんな感じでわいわいとのんびり遊んでるときだった。
「?」
視界が急に明るくなった。
車のライトの光。
もしかして鈴のお家に忘れ物でもしてたかな。
それで持ってきてくれたとか?
でもその車は見るからに怪しかった。
真っ黒。
そんな車がゆっくり近づいてくる。
まあでもフランが警戒していない。
つまり……。
「あ!新入りちゃん!久しぶり!
何してるの??」
「あ!店長ちゃんだったんですね!
お久しぶりです!」
車から降りてきたのは店長さんだった。
まあ危ない人ならフランがガードしてくれるからね。
それが無いということはお知り合い確定なのです。
ということでお客様は店長ちゃん。
ちょっとだけお久しぶりだ。
「店長さん!お嬢様、二重跳びできるんですよ!
ぜひ見てください!」
「ふふー。さっきマスターしましたー。
縄跳び喫茶つくるときは呼んでください。」
せっかくなので二重跳びを披露。
無事に成功。
やっぱり私は縄跳びが上手だ。
まあそれはともかくとして。
「山城さんに御用ですよね!
呼んできましょうか??」
まあ店長さんの用事といえば山城さん関連だろう。
私の部屋の真下に住む山城さん。
彼女と店長さんは正式にお付き合いしているのだ。
これからデートなのかな。
夜のデート……大人!
ただ店長さんは首を横に振って答えた。
山城さんに御用じゃない?
じゃあ誰に?
そう思っていたら、その疑問はすぐに解消された。
車の後部座席からその分かりやすいシルエットは降りてきた。
「……よ。」
「わ!山城さん!今帰りだったんですね!」
「メアリお姉様!おかえりなさいです!」
なんと山城さんに用事があったのではなく、用事を終えて送りに来てくれてたとこらしい。
その姿を見るなり、フランが飛びついた。
山城さんとフランの身長差は約40センチ。
フランがとびきりちっちゃく見える。
「メアリお姉様、お身体の具合はよろしいですか?
体調崩してないですか?」
「……ん。大丈夫。フランちゃんも久しぶり。」
フランを抱えてその場で一回転。
ご機嫌な笑顔でフランは着陸した。
「メアリお姉様、今度は私の番です!
くるくるするので万歳してください!」
「……え。ま、待って!?いや!それは無理!ひゃっ!」
そしてお返しにフランが山城さんを膝から持ち上げて一回転。
身長180センチの女性がくるくる回されている。
中々に壮観。
山城さんは唐突な展開にびっくりして、降ろされた瞬間に尻もちをついた。
「ふ、フランちゃん。び、びっくりしたわ。
え、えっと……どうしてこっちに?」
「店長さんも良ければどうぞです!
楽しいですよ!」
驚く店長さんにフランがにこりと笑って近づく。
さすがに中学生くらいの子に持ち上げられるのはこわいのか、店長ちゃんは私の後ろへと隠れた。
「店長さん、フランは力持ちだから大丈夫ですよ。」
ひょいっと躱してフランに差し出す。
するとフランは即座に店長さんを持ち上げてくるくると回した。
「えへへー。」
「わ、わ、ひゃ」
店長さんはされるがまま。
でも一周したくらいでその安定感に気づいたのか、途中からは笑顔でくるくるされていた。
そして無事に着地。
店長さんはフランにひとことありがとねと伝えて、その頭を撫でた。
「でもフランちゃん本当に力持ちね。
ほんとに中学生?」
「はい!ほんとに中学生です!
普通の力持ちです!」
むん、とフランは力こぶを作ってみせた。
可愛い。
その可愛さに店長ちゃんもそれ以上はなにも言わなかった。
ただもう一度頭を撫でた。
「店長さん店長さん。
良ければご飯食べていってください。
今日の夜はお鍋なんです。
一緒にご飯食べたいです。」
頭を撫でる為に屈んだ店長さんに、フランはそう言った。
可愛い可愛い上目遣い。
店長さんはもちろんそれに頷いて答えた。
「ありがとね。
今日は夜ご飯どこで食べようか迷ってたの。
メアリも一緒でいい?」
「はい!もちろんです!」
ということで夜ご飯はふたりと一緒。
ふふー。
久しぶりに山城さんや店長さんとご飯だ。
楽しみ。




