金策そのに 実践編
昨日は鈴とこのみちゃんのお家にお泊まり。
ということで朝の8時。
「じゃあ今日はよろしくなー!!
いてきまー!」
ぶんぶんと両手を振って、鈴がお家から出ていく。
私の手には鈴の業務用スマートフォン。
警察から行方不明の連絡が来たら、腕輪で調べて地図アプリ上でピンを指す簡単なお仕事。
なんだけど……。
(金額が金額だからな……。)
1件につき50000円。
金額を考えると、どうしても緊張してしまう。
「先輩!フランちゃん!
早く朝ごはん食べて続きしましょう!」
そんな私の緊張はさておき、このみちゃんはぱたぱたとはしゃいでそう言った。
昨日の夜からアンダーテールというゲームを始めた。
このみちゃんはもうやったことがあるみたいで、プレイする私の姿を皆で眺めてる。
ただそれがすごく楽しいらしく、続きを早く見たくてこのみちゃんはそわそわ。
このみちゃんに急かされて玄関からリビングへ。
リビングには焼いた鮭とお味噌汁の匂いが広まっている。
落ち着く匂い……。
『お嬢様、お電話です!』
「ひゃっ!??さ、さっそくきた!
ちょ、ちょっと待って!!」
電話が鳴ったことに驚いて、スマホを落としてしまった。
やばい、さっそく仕事だ。
心の準備ができてない。
「お嬢様、それはお嬢様の携帯ですよ?
落ち着いてください。」
「あ、ほんとだ……。」
フランに嗜められて、ようやく仕事の通知じゃないことに気づく。
鈴から渡されたスマホはうんともすんとも言ってない。
「と、とりあえず出ないと!
誰かから電話かかってるんですよね??」
「わ、それもそうだね!もしもし!」
『やっぽー!鈴ちゃんだよー!
もしもし!用事は……特にないよ!
どうせお前のことだびび』
いたずら電話だ。
私は電話をすぐに切った。
でもびびってるだなんて。
緊張してるけど、別にびびってるわけじゃない。
こんな仕事余裕だし。
「先輩、落ち着いた方がいいですよ。
ほら、ご飯冷めないうちに!」
このみちゃんがご飯をよそってくれた。
白ごはん、お漬け物、焼鮭、お味噌汁。
フランと鈴が用意してくれた朝ごはん。
とっても美味しい。
ご飯を食べてお片付けをして。
ゲームをする前にちょっと柔軟体操。
鈴のスマホがいつ鳴るか不安だったけど、特に鳴ることはない。
今日の日本は行方不明者の居ない平和な日本。
もしくは鈴に頼るまでもなく、警察が頑張ってるのかもしれない。
「ふふー。じゃあアンダーテール!
始めましょう!先輩!コントローラー持って!」
気持ちがちょっと落ち着いてきたところでゲーム再開。
昨日はひとり目のボスを倒したところで終わった。
やたらと鈴が褒めてくれたことから、私はこのゲームけっこう上手なのかもだ。
のんびりとふたりに実況しながらゲームは続く。
ふたり目の敵を倒したところで一旦休憩。
悪そうなやつじゃなかったし、本当に倒して良かったのかな。
そんな気持ちを抱えつつお茶を口に含んだ時だった。
ぶーぶー。
そんな味気ない振動音。
それは紛れもなく鈴のスマホから鳴っていた。
「ぎゃー!!鳴った!やばい!どうしよ!?」
「だ、大丈夫です!落ち着いてください先輩!
ま、まずは中身見て!!」
このみちゃんに急かされてスマホのロックを解除する。
そこにはひとりの小学校低学年くらいの男の子の写真とお名前。
それに行方不明になった場所と日時が載っていた。
行方不明になった場所は徳島県。
居なくなったのは1時間前。
「お嬢様、お名前と顔を思い浮かべて……。」
「うん。」
男の子のことを思うと、腕輪の効果で場所が分かった。
場所は居なくなった場所からそう離れていない。
地図にピンを指して動向を見守ると、10分も経たずに『発見。無事。』とメッセージが送られてきた。
「ふぅ……。」
その文字を見て、ようやくひと息つけた。
作業としてはごくわずか。
それでもひどく疲れた。
「無事でなによりですね!
お嬢様、お茶を淹れて参ります。」
フランはそう言って立ち上がった。
さっきまで飲んでいたお茶はとっくに冷めている。
ひと息に私はそれを飲み干した。
「これ、思ったよりも疲れるね……。」
「分かります。
ハラハラして疲れますよね……。
それもやめた理由のひとつです。」
「そっかー……。」
自分の指先ひとつの行動にだれかの命がかかってる。
めちゃくちゃ大変なお仕事だ。
鈴はこんなことをしてたのか。
めっちゃ尊敬……。
「はいお嬢様、お茶です。」
フランが温かいお茶を淹れてくれた。
ふーふー。
小さなお口でフランがお茶を少し冷ます。
私はまたそれにゆっくり口をつけた。
「大変なら代わりましょうか?」
フランの提案には首を振って応えた。
大変だけど請け負ったことはちゃんとやらなきゃ。
フランはそれを見て、ちょっと口を尖らせたあと頭を撫でてくれた。
それからはスマホに意識を割きながらゲームをしたり3人でクッキーを焼いたりして過ごした。
結局、スマホが鳴ったのは最初の一回だけ。
金策その2の成果は50000円。
まあこれだけあれば貯金と合わせて北海道にも行ける。
ひとまずこれで私の金策は終わったのであった。




