6th TARGET
【朽ちぬ亡霊】
俺が構えると同時に、やつの姿はそこにはなかった。
俺が身を引こうとした時には、既にやつは俺との距離を人1人分もない間合いへと詰め、そのまま腹部へと両拳で攻撃をされ森の方へと飛ぶ。
バキッ!ボキッ!ズシィン!
大きな音をたてながら、かなりの距離を飛ばされる。
「強い……。」
過去に戦った相手なんて比にならない強さがそこにはあった。
さらに、まるで意思がない。
対象を殺すための動きを正確に無駄なくこなしている。
今の衝撃は普通の人間ならまず死んでいただろう。
だが俺は殺せない、ファントム……お前の行動は早く的確に殺すための行動だ。
意思なき攻撃はよみやすい。
確かに強いがそれはあくまで強いだけだ。
俺は倒せない、殺せない。
「シュシュ……シュ、シュゴゴ、ゴゴゴ。」
俺はやつに向かって、両腕を刃にして伸ばす。
何度か切り裂いた時にふと気がつく。
こいつ、軽い……。
驚く程に軽いのだ。
まるでそこに実体がないようだった。
さらに言えば傷の再生速度もかなりはやい。
傷を入れると同時に傷が治る、そんな再生速度だ。
出血の様子もなし……か。
なら、全身に攻撃を仕掛けるのみだ。
「終わった……はずだ。」
俺は全身に刺した腕の刃を抜き、確認をする。
「シュゴゴ、シュ……シュシュ、シュゴゴゴゴ。」
「っ!?なぜだ。なぜ死なない……。」
答えるはずもない……か。
だがこのままでは埒が明かない。
何か、何かやつを倒す策がないのか。
「どうしたんだ?ローニ!……と、はじめましてが2人……いや、1人、か。」
いつから背後にいたんだ、こいつ。
それに角が生えているが、こいつも獣人なのか?
「これがファントムか……初めて見た。ちょっとそこの人、下がってて。それは……俺が片付ける!」
そいつはファントムの腕を掴み森へと投げ込む。
それから両手に武器を短剣を生成し、両腕を切り落とす。
無駄だ、そいつの再生速度を知らないんだな。
そこで起きたのは例外の事態、なんと再生しないのだ。
あれだけ攻撃をしても再生した体が再生しない、どういうことだ。
「そこのあんた、さっきまで戦ってたんだよな。こいつと……ファントムとさ。」
「あぁ、そうだが。」
「そりゃ相性が悪い。……いいや、むしろこいつを殺せるのは俺だけだよ。これは強さじゃなく相性だ。」
目を離すと同時に動きが大きく変わった。
これは……不規則な動きだ。
やつは自分で考えて動くようになったのか。
これは流石にまずい、いくら相性がいいとはいっても相手の方が一枚上手だ。
だが、おかしな光景とは連続するようだ。
俺の前に現れた角の生えた男は、畏怖どころか喜んでいるような笑顔だ。
だが、あまり好き勝手されるのは好きではない。
「俺も参加させてもらうぞ。」
「おっ、助かる!」
「何がそんなに嬉しい。」
こいつは明らかに嬉しがっている、この悪夢のような状況を。
「そんなん、チャナカドゥともう一度戦える。それで俺がどれだけパワーアップ出来てるかもわかる。これは……楽しくなるぜ。」
もう一度……だと?
チャナカドゥとは元英雄でそれを倒したのは今の英雄ただ1人。
「お前……名前は?」
「え?俺か?」
こいつは間違いなく……そう、間違いなく。
「俺はシズキ……いいや、雫鬼だ。」




