7th TARGET
【力量差】
「それは本名か?」
俺は問う、こいつの正体を知るためにも。
「本名は黒夢 紫月だ。よろしくな!」
そう言い雫鬼と名乗る男はファントムへと向かって行く。
黒夢 紫月……か……!?
こいつのデータベースが俺の頭にはある。
俺は人間の事しか情報を入れられていないはず。
いいや、そういうことか。
やつは……人間なのか。
幼い頃に鬼殺しを手にするが、その時空間の穴に吸い込まれ人間界から消える。
こんな情報がなぜ俺の中にあるんだ。
俺を作り出したあいつはいったい何を知っているんだ……。
いったい……何をしていたんだ。
何よりも不思議なのはこんな奴の情報はあるのに北見 翔也の情報は一切ないのだ。
とりあえず今は雫鬼の手助けを……。
そう思い顔を上げた時には既に決着は着いていた。
「ふぅ、思ったより手こずったけど……」
「一つ聞く、どうやって倒した。相性とはなんだ?」
これは知っておくべき情報だろう。
こいつを殺す必要もあるかもしれないからな。
「単純にファントム、あいつは魔力で出来てたんだ。俺は魔力に触れられる。だから倒せた。単純だろ?」
魔力で……出来ていた?
「どういうことだ?」
「俺の能力は『追憶』なんだけどな、どうやらこいつはチャナカドゥの死体に使徒王のメアリーってやつが小細工をした存在だったんだ。」
使徒王……そのワードも俺の頭の中に存在するようだ。
「その使徒王が何故、わざわざこんな事をしたんだ?」
「さあな、本心はわからん。ただ見た感じだと面白半分ってとこだろうな。」
面白半分で魔力の怪物を作り出されていたらたまったものではないだろう。
「どうしてそんなに冷静なんだ?お前の住む村にも、相当危険な可能性があったんだぞ?」
「怒りてえ気持ちももちろんある。だけど危険はねえよ。俺が村は守るからな。」
不思議なやつだ。
誰かのために命を投げ捨てられる人間……希少な存在だろう。
「それであんた……これから俺の村へ行くとこだったんだよな?それもミダラに用があんだとか。着いて来いよ、俺はミダラの護衛してっしな。」
好都合だ……こいつと一緒に行けば厄介事を避けられそうだと思う、それにミダラの護衛ともなれば話も早そうだ。
俺は雫鬼の後を着いて行くことにした。
獣人の村は思ったより賑わっていた。
「何かいいことでもあったのか?」
あまりにも村人が全体的に賑わっていたものだから祭り事でもあったのかと判断し、雫鬼に尋ねる。
「獣人のみんなはいつもこんなもんだ。元気で居心地がいいんだよ、ここは。」
「おーい、ミダラ!あんたに客だぞ。」
バンっ!と強く扉を開けられ、そこには1人の女がいた。
「シズキ!!!そいつを殺すのじゃ!」
その女は俺を指差しそう叫び出す。
「は!?」
「そいつはこの村にとっての害じゃ!」
まさか簡単にそんな事を信じたりはしないだろ……嘘だろ?
雫鬼の顔色は明らかに変わっていた。
俺へ向ける視線も。
前言撤回だ……こいつと出会ったのは俺のとってかなりの災難だったようだ。
「今退いてくれたら許してやるから、退いてくれないか?俺はあんたに手を出したくない。」
「断る。」
雫鬼は大きくため息をつく。
「わかってたよ。だからミダラもあんたを危険だって言うんだもんな。」
雫鬼の姿が消え、俺の左側に現れる。
速い。俺の知る限りお前ほどの実力者は他にいないだろう。
だが、俺にも負けられない理由がある───。




