第八話 6月21日(金)19:40
**第八章**
羞恥は、目撃者がいなくても存在できる。
必要なのは、一つのテーブルと、三人の人間と、何かが壊れたということ、そして責任者には名前も苗字もあるという、共有された確信だけだ。
その夜、家に着いたのは七時四十分だった。玄関は、洗剤と煮魚の匂いがした。借り物の上履きを脱いだ。相変わらず大きすぎた。それを父の靴の隣にそろえて置いた。もう自動的になってしまった正確さで。ほとんど空のリュックは、いつもの場所に置いた。
食堂では、母がテーブルのそばに立っていた。皿を並べているのではなかった。待っていた。両手をエプロンの上で重ね、背筋が不自然にまっすぐだった。父はスーツの上着を脱いでいたが、ネクタイは緩めていなかった。それは、何かが改まった扱いに値するときにしか起こらないことだった。
「座りなさい」
父が言った。
「いただきます」はなかった。いつものテレビのつぶやきもなかった。僕が従ったときの、椅子が床の上を引きずられる音だけがあった。
しばらく、誰も話さなかった。母は、米粒の一つひとつを測るような正確な動きでご飯をよそった。父は、箸を持ったまま使わなかった。やがて沈黙を破ったのは僕だった。黙っていることの重さが、話すことの重さを超えてしまったから。
「今日……全体練習で……また、失敗した」
父は一秒だけ目を閉じた。疲れではなかった。抑制だった。
「知っている」
父は答えた。
「夕方、学校から電話があった。遠藤先生が事務室を通して連絡してきた。金管パートが、『音の不揃い』のせいで編成を組み直さなければならなかった、と」
その言い方は中立だった。事務的だった。けれど、この食卓では、全員が理解していることをそのまま意味していた。僕の名前が、また出たのだ。それも、被害者としてではなく。
母は、箸を茶碗の上に、小さなカチッという音で置いた。
「ハルト。部が練習を止めなければならなくなるというのが、どういうことかわかってる?」
答えは求めていなかった。母は続けた。
「六十人よ。何時間もの練習。県大会まで二週間もないの。あなたのせいで失われる一分一分は、みんなから奪っている一分なの。これは技術的なミスじゃない。迷惑よ」
その言葉は、家庭内の判決の正確な重みで、食卓に落ちた。
父は、明るい色の木のテーブルに前腕をついた。
「仕事ではな」
大事なことを説明するときの、低くて正確な声で言った。
「部下がミスをして、チームが報告書を作り直さなければならなくなったら、言い訳はしない。謝る。そして、上司に二度と恥をかかせないよう、倍働く。お前は、指導者の前で、高橋君に恥をかかせた。部の名前を汚した。そして、ひいては、うちの名前も汚した」
顔を上げた。わざと倉庫に置かれたのだと、言いたかった。吹く機会は罠だったのだと。もう誰も、憎むためにさえ、僕を見ないのだと。けれど言葉は、舌に貼りついたままだった。この食卓では、どんな説明も言い訳に聞こえた。そして、言い訳もまた、迷惑のひとつの形だった。
「失敗したあとは、吹いてない」
ようやく、僕は言った。
「また倉庫に行かされた。掃除だけ。もう練習の邪魔はしてない」
母はため息をついた。短く、疲れたため息。電気代の請求書が思ったより高く届いたときの、あのため息だった。
「それじゃ足りないの。掃除したって、もう起こしてしまったことは消えない。部の人たちは、あなたが誰か知っている。後援会の保護者の方たちも。もし大会がうまくいかなかったら、金管に問題があったと、誰かが思い出す。そして、その誰かが覚えているのは、あなたの苗字なのよ」
父は、一度だけうなずいた。
「明日から、もっと早く行け。言われたことは、文句ひとつ言わずに全部やれ。体育館の床を歯ブラシで磨けと言われたら、磨け。三月まで吹かせてもらえなくても、耐えろ。それが我慢だ。傷を償うためにお前にまだ差し出せるのは、それだけだ」
父は、まっすぐ僕を見た。数週間ぶりに、その目は、欠陥のある報告書を見る目ではなかった。僕という恥の大きさを、正確に測っている目だった。
「それから、この話を、被害者のような顔で家でするな。うちは、愚痴をこぼす人間は育てない。人に迷惑をかけずに、自分の居場所をわきまえられる人間を育てるんだ」
母は立ち上がり、ほとんど手つかずの僕の茶碗を下げて、流しへ向かった。熱いお湯の流れが、また僕たちのあいだに、あの湯気のカーテンを作った。母は振り向かなかった。
「食べられるだけ食べなさい」
こちらを見ずに、母は言った。
「明日は長い一日になるから」
僕は皿の前に座ったままだった。ご飯はまだ湯気を立てていた。魚は冷めていった。両親は黙って食べていた。必要な手続きを済ませるときの、あの効率で。
その夜、自分の部屋の襖を閉めたとき、それまで疑っていただけだったことに、はっきり気づいた。
学校のいじめは、ひとつだけではなかった。
もうひとつ、もっと静かで、もっと親密なものがあった。それは毎晩、この同じ明るい木のテーブルの上で執り行われていた。
そしてその家庭のいじめで、僕は、いじめられる側ではなかった。
家族という水面がまた平らに戻るように、処理されなければならない問題だった。
床に座り、壁に背をあずけて、窓の格子の影を見た。
それはもう、天井にだけ映ってはいなかった。
僕の上にも、落ちていた。




