第十八話 7月19日(金)16:08
沈黙は、大きな爆発では壊れない。
金属の上に土が落ちる、乾いた音で壊れる。
四時に教室を出た。廊下には、最後の掃除当番の箒が舞い上げた埃の匂いがした。本館の奥まで歩いた。三メートル×四メートルの倉庫の戸口まで。
鍵が、ポケットからぶら下がっていた。
掛け金は外れていた。南京錠は、錆で汚れたまま、開いてぶら下がっていた。
ためらわなかった。押した。
蛍光灯は消えていた。天窓から、灰色の光だけが入っていた。床の中央、いつも僕が座って無言でピストンを押していたコンクリートの上に、僕のケースがあった。
開いたまま。
トランペットは、青いベルベットの内張りから取り出され、ベルを上に向けて、ファゴットの箱に立てかけられていた。
ベルの中には、土が入っていた。
黒く湿った土。中庭の花壇から掘り起こしたもの。指で押し固められて、ベルいっぱいに詰め込まれていた。泥はチューニングスライドにまで入り込み、ピストンのまわりを埋め、ケーシングとバネに染み込んでいた。マウスピース、何か月も唇を当てていた銀色の金属の先には、草の屑のついた乾いた根が一本、突き刺してあった。
机のそばには、埃の上を指でなぞった、素早い絵があった。小さな墓石と、傾いた卒塔婆。
戸口に立ちつくした。
頭は、古い写真を調べるときのような中立さで、その場面を記録した。
— 16:08 倉庫への不正侵入
— 楽器の状態:有機物の浸透により使用不能
— 意図:対象の最終的な閉鎖
怒りはなかった。
胸の圧迫もなかった。
牛乳の水たまりのときの、肩の震えもなかった。
痛みには、まだ形を保とうとする身体が要る。僕の身体は、黒いノートの中の数字の並びでしかなかった。
近づいた。膝をついた。
両手でトランペットを持ち上げた。金属は、湿った土の重さで、冷たく重かった。鉱物油の匂いは消えて、濃い腐葉土と、腐りかけの葉の匂いがした。
親指でマウスピースを拭った。土が爪の下に入った。取らなかった。
第一ピストンを押した。下がらなかった。土が完全に詰まっていた。機構は、死んでいた。
立ち上がった。トランペットを、奥の流しへ運んだ。蛇口をひねった。冷たい水が、ベルの上を流れた。泥はゆるみ、濃い茶色の細い筋になって落ちた。水は濁って、白い陶器を汚した。
十分間、立っていた。両手を冷たい流れの下に入れて、泥が、完全にはきれいにならないまま消えていくのを見ていた。ピストンの隅には、砂粒が残っていた。もう二度と、空気を通さない粒が。
蛇口を閉めた。
楽器は拭かなかった。濡れたまま、すでに汚れたベルベットの上に、ケースへ戻した。真鍮の留め金を三つ閉めた。一つ。二つ。三つ。カチ、カチ、カチ。金属的で、きれいで、正確な音だった。
ケースを、天窓の光が届かない、いちばん高い棚に置いた。
それから雑巾を取り、墓の絵を、木が滑らかになるまで消し、蛍光灯を消して、出た。
南京錠をかけた。金属がはまる音は、誰もいない廊下に、とても長い文の最後の句点のように響いた。
出口へ歩いた。玄関で、靴を履いた。中庭を横切り、花壇のそばで一秒だけ立ち止まった。土のくぼみは、まだ新しかった。
三階建ての校舎を見た。一年B組の窓が、夕方のオレンジ色の光を映していた。
ドラマはなかった。
復讐の考えもなかった。
ただ、とても澄んだ、とても低い内なる声が、監査の最後の言葉を口にした。
終わった。
システムは、欠陥のある要素の摘出を完了した。
楽器は、もう鳴らない。
声は、もう話せない。
身体には、もう守るべき質量がない。
壁にぴったりくっついて駅へ歩いた。空のリュックの重さを、閉じたばかりのリストの、最後の無関係なデータとして記録しながら。
明日は、倉庫はない。
明日は、出席簿はない。
明日、水面は、ついに、完全に平らに戻る。




