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男性向け恋愛ゲームのヒロインの姉に転生したので、妹もゲーム主人公も幸せにします  作者: 駒うさすず
第二部

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52話 成長の悩み

 今日の晩ご飯は、焼き魚と野菜のおひたしにおみそ汁とご飯だ。

「いただきます」

「ちょっと待って咲愛、それで足りるの?」

 手を合わせた咲愛に待ったをかけた。

 焼き魚は私の半分、ご飯もお茶碗の半分しか入れていない。

 すでに食べ始めた翔馬は、お茶碗どころかどんぶりでご飯を食べているのに。

「足りるよ……」

 眉を下げて言われても説得力がないわよ。

「ちゃんと食べないと駄目よ。食欲ないの?」

「そうじゃ、ないけど……」

 咲愛が自分のお腹をさする。

 お腹を気にしているんだろうけど、ぺったんこにしか見えない。

「ちょっと最近食べすぎかなって……」

「俺より全然食べてないけど」

「翔馬と比べたら、誰だって食べてないことになるわよ」

 私には、翔馬があれだけ食べているのに全然太ってないのが不思議だ。

「今度身体測定あるし、ちょっと控えようかなって」

 成長期だから体重は増えて当然よ?

 と言っても、当人には大問題なんでしょうね。


「お姉ちゃんは、食べても全然太らないよね」

 咲愛は唇を尖らせた。

「……」

 翔馬、今私と咲愛を目だけで比べたわね。

 それも、顔よりやや下の部分を。

「何か言いたそうね? 翔馬」

「ナンデモナイデス」

 よし。

 咲愛の体型はお母さんに似ている。

 メリハリというか……私とは全然違う。

 私はお父さんに似たようで、食べても全然肉がつかない。

 全身についてほしいんじゃない。一部でいいという、ささやかな願いなのに。この世は無情だ。

 でも前世では、食べたらすぐに身になるほうだったから、咲愛の嘆きもわかるつもりだ。

 身体測定までの期間はそれほど長くない。

 少しの期間なら、ご飯を減らしても大丈夫だろう。見えないところでご飯を抜くより、ずっといい。

「なら、しばらくの間エクササイズを一緒にやりましょう。身体測定が終わったらご飯の量も戻すのよ? 食べないのは駄目」

「うん」


 大丈夫よ咲愛、十代なんて新陳代謝がすごいんだから。

 大人になってからやるより、すぐ成果が出るわよ……。

「お姉ちゃん、何でちょっと涙目になってるの?」

「ちょっと、昔を思いだして」

 翔馬は不思議そうに私たちを見て、ご飯のおかわりをしに立ち上がった。


 そして身体測定の日。

 この数日間、簡単なエクササイズを咲愛と一緒に続けた。

 身体測定で結果が出るわけではないが、やって悪いものじゃないし。

 咲愛は楽しんでいるようで、このまま続けるようだ。


 うちの学校では、二年生と三年生が、決まった時間内に測定場所を回り切ることになっている。

「鈴白恋華さん、身長が百六十六センチ……体重は……」

 去年より少し伸びている。

 体重はあまり変わっていない。そもそも体型が変わっていないし……。

「はいどうぞ。残りは視力検査だけね」

 先生から身体測定の用紙を渡されて視力検査に向かった。


「あ、レン姉」

 私の前に並んでいたのは翔馬だった。

「翔馬はこのあと身長と体重?」

「もう終わった。百七十五センチ。伸びた」

 確か原作ゲームの翔馬もそれくらいのはず。

 だけど自慢げなのが気に入らない。

「私も伸びたのよ」

「何センチ?」

「百六十六……」

 身長を聞いた翔馬は、不敵な笑みを見せた。

 わざわざ私の頭の上に、手のひらまで乗せて、ペシペシと軽く叩いてくる。

 自分のほうがちょっと背が高いからって!

「翔馬なんて小さいとき、こーんなにちっちゃかったんだからね!」

「それ膝の高さじゃん! そこまで小さくなかった!」

「小さかったわよ! 何よ、縮めてやる!」

 翔馬の頭に手を乗せようとすると、器用に避ける。

「自分はやったくせに!」

「レン姉の頭が手の届く高さだから」

 手を伸ばすたびに避けられる。

「このっ!」

「危なっ」

 鋭く伸ばした手を避け、翔馬が私の手首を掴んだ。

「痛っ!」

 私の声に、翔馬がすぐに手を放す。

 下ろした手を見ると、手首が赤くなっている。

 とっさに掴んだので、力の加減が出来なかったんだろう。

「だ、大丈夫? 冷やすもの持ってこようか」

 翔馬のほうが慌てている。

 手を振ってみるが、赤くなった以外は特に問題はなさそうだ。

「大丈夫。私も悪かったわ」

「ごめん……」

「あなたたち、待っている間は静かにしなさい」

 ふざけすぎて、見回りの先生に注意されてしまった。



 その日の晩ご飯はハヤシライスだった。

「レン姉、手首見せて」

「もう大丈夫だから」

 身体測定のときから、何度も繰り返したやり取りだ。

 放課後もわざわざ私が帰る時間に合わせて来て、ちらちらと手首を見ていた。

 私より翔馬のほうが明らかにショックを受けている。

 今日は私が食事当番だったのに、ハヤシライス作りはほとんど翔馬がやってくれた。

 手首はもうなんともない。

 大丈夫だって言っているのに、心配性なんだから。


 咲愛は約束していた通り、ご飯の量をダイエット前の量に戻した。

「体重はちょっと痩せてるくらいだから、ちゃんと食べなさいって」

 嬉しそうに報告してくれる。

 でしょうね。

 きっと咲愛の増えた体重は、ごく一部にしかいってないと思う。

「それに、ちょっと背が伸びたの。百五十六センチ!」 

 咲愛は自信満々だ。

「うんうん、やっぱり咲愛は可愛いわね」

 私が頭を撫でるのを、咲愛は不思議そうに受け入れてくれた。

いつも読んでいただきありがとうございます。励みになっています。

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