49話 卒業式とこれから
学年末考査が無事終わり……。
「最悪。過去一駄目かも」
試験最終日の帰り道、目の下にくまを作った翔馬がぼやいた。
「くまを作るほど熱心に勉強したのに?」
「全然集中できなくて……」
ああ……試験直前に色々あったしね。
まだ一年生なんだし、次の試験を頑張ればいいと思うんだけど。
「……翔馬」
「……何」
「駅前のクレープ屋で期間限定の苺クレープがあるみたいだけど、食べて帰る? 奢ってあげる」
「食べる!」
心配する必要なかったわね。
後日出た試験結果では、翔馬の順位は前より下がったらしい。
それでも原作ゲームでの翔馬より成績は上がっている。
他の皆はおおむねいつも通りだった。
麻菜ちゃんは前回より現国の点数が上がったらしい。
「竜堂先生も褒めてくれたんですけど、先生の前だと背筋がピーンってなるんですよね」
まだ麻菜ちゃんの苦手意識はなくならないらしい。
今日は三年生の卒業式。
三年生はもちろんのこと、二年生も全員参加。
生徒会役員以外の一年生は自宅学習日になっている。
だから翔馬は家で留守番だ。
「卒業の日を迎えられた三年生の先輩がた、ご卒業おめでとうございます……」
綺麗に飾り付けられた講堂の壇上で、生徒会長が送辞を読み上げている。
卒業生の答辞も終わり、すすり泣きも聞こえる中、拍手で卒業生たちを送り出す。
私たち二年生の後方に生徒会役員の席があり、その中には咲愛の姿も見えた。
卒業生と来賓の方々や保護者たちが退場したあと、二年生たちで椅子を片付け始めた。
「来年はいよいよ私たちね」
折りたたみの椅子を手早く畳んでまとめながら楓に話しかける。
「その前に受験があるけどね」
現実的なご意見。
「楓はもう進路決めてる?」
「理系以外」
なるほど。
「そういう恋華は?」
「そうね。私は経済学部に行ってみたいなって」
原作ゲームの恋華は法学部に合格していた。
でも私が同じ学部に進学する必要はないだろう。
椅子を収納し、飾り付けもおおかた取り外した。
「お疲れ様でしたー! 二年生は各クラスに戻ってくださーい」
生徒会役員の子の指示で、皆クラスに戻り始めた。
咲愛はどうするんだろう。
ぐるりと見渡してみる。
講堂の隅で生徒会長から指示を受けているようだ。「はい、わかりました」と返事をしたあと、私に気づいた。
「咲愛、お疲れ様」
「お姉ちゃんもお疲れ様。私はもう少しかかるから、お昼過ぎるかも」
「待ってるわよ。一緒に帰りましょう」
「ありがとう。終わったら連絡するね」
咲愛は私に小さく手を振って、他の生徒会役員のほうに走っていった。
私も手を振り返して、クラスへ向かった。
卒業式の帰り道、久しぶりに咲愛と二人で歩いた。
「そういえばお姉ちゃん、式が始まる前に、何度も私のほうを見てたでしょう」
「見てたの?」
「見えたの。生徒会の先輩に言われて恥ずかしかったんだからね」
「何で。私なんて咲愛のことを周りに自慢してたのよ」
「どうしてそんなことするの?」
妹の立派な姿を自慢したいのは普通じゃない?
「……次からはやめてね?」
あ、これは本気で言ってるな。
「……頑張るわ」
自信は、ない。
そのとき、スマホが振動した。
「翔馬だ。……帰りにバター買ってきて欲しいって」
時間を見ると、二時前。
私と咲愛のお腹が同時に小さく鳴った。
「咲愛、寄り道して食べて帰る? その後買い物しましょう」
「うん」
駅前のカフェでケーキセットを堪能した私と咲愛は、ちゃんとバターを買って帰ったのに翔馬に「二人だけケーキ食べてずるい!」と怒られたのだった。
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