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男性向け恋愛ゲームのヒロインの姉に転生したので、妹もゲーム主人公も幸せにします  作者: 駒うさすず
第一部

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46話 賑やかな初詣

 初詣は夏祭りにも行った神社へ行く。

 参道の前で待ち合わせだ。

 いつも待たせてしまうので、今日は早く家を出た。

 参道までの道でも向かう人たちがいたので覚悟はしていたが、夏祭りの時よりも人が多い。

「お姉ちゃ……わわ」

「翔馬! 咲愛が流される!」

「咲愛、こっち!」

 人の波に押されていきかけた咲愛を、翔馬が腕を引っ張って端に連れて行く。

「元旦だとやっぱり人が多いわね。咲愛、大丈夫?」

「うん……」

 まだ咲愛はヨロヨロしている。

 麻菜ちゃんたちは、まだ来ていないようだ。

「あ、ベビーカステラある。」

 翔馬は出店に夢中、と。

 ……おせちをかなり食べていたのに、一体どこに消えたんだろう。

「鈴白先輩!」

 人の波の向こうから、元気よく手を振る千賀屋君が見えた。

 そのまま一直線にこちらに向かってくる。

「鈴白先輩、明けましておめでとうございます」

「明けましておめでとうございます、千賀屋君」

 千賀屋君の長口上がないのは珍しいな。

「新年にお会いする鈴白先輩は、お会いできなかった期間分も美しさを増して……」

 そんなことはなかった。

 しかし千賀屋君はそこで言葉を切った。

 目元を見ているので、気づかれたかも。

「……あの……」

「ん?」

 わざとらしい笑顔を作って、「言わないで」と言外に込めた。

「……いいえ。先輩は今年もいっそう魅力的です」

「それは褒めすぎね」

「そんなことはありませんよ」


「ちょっと翔馬君、落ち着いて」

「一回叩いたら直るって! テレビでも言ってた」

「それ壊れちゃうやり方だから! 駄目!」

 ……翔馬たちは、千賀屋君の後ろで何をしているんだろう。

「レン先輩、さーちゃん、おまけのまっさんとちがやん、略してまっさやん! 明けましておめでとうございまーす!」

「ごめん、遅れた? 明けましておめでとうございますー!」

 賑やかに麻菜ちゃんと、来見君も登場した。

「合わせんな! よりによってこいつと!」

「沙月さん、それだけはやめてくれないか!」

 翔馬と千賀屋君が即座に反応している。

「何だよー。まっさやん、響きもいいのに」

「「よくない!」」

 新年そうそう、賑やかだ。


 参道を皆で上がっていく。

「なあ雨坂、宿題もう終わった?」

「終わった」

「マジで! 俺まだ残ってる」

「年明けてからの方が忙しいんだよ。明日はじいちゃんばあちゃん家に行くし。年内に終わらせた」

「さーちゃん、おせち作ったんでしょ? 写真ある?」

「私一人で作ったんじゃないけど……これ」

「わー! 美味しそう!」

 盛り上がっている四人を見ながら、隣の千賀屋君に尋ねる。

「千賀屋君は、お家の集まりはないの?」

「祖父の家で親戚一同が集まりますが、夕方に直接向かうと伝えているので大丈夫です」

 うちの祖父母宅の集まりとは規模が違いそうだ。

「小真智ちゃんもその集まりに来るの?」

「はい。せっかくなので神社で学業成就のお守りを授かるつもりです」

「いいわね! きっと喜ぶわ」

 笑顔でそう返すと、千賀屋君の顔もほころんだ。

「よければ先輩とも……」

 そのとき、前を歩く咲愛と麻菜ちゃんが、下がってきた人たちにぶつかってよろけた。

「あっ、翔馬! 咲愛をお願い!」

 翔馬がとっさに咲愛を支える。

「あぶなっ」

 それを見た来見君が、自然に麻菜ちゃんの後ろに立ってくれた。

「良かった。……ごめんね千賀屋君、何か言いかけた?」

「……いいえ。先輩も危ないですから、よければ腕に掴まってください」

「私は大丈夫よ……おっと」

 押された拍子によろめき、ありがたく千賀屋君の腕を借りることにした。


 神社が近くなるとさらに混んできた。

 前を歩く翔馬に声をかける。

「翔馬、咲愛と麻菜ちゃんのこと見てあげてね」

「レン姉は?」

「千賀屋君がいるから大丈夫よ」

「はあ!?」

 こちらに振り向こうと翔馬が動いた瞬間、列が動き出した。

「ほらほら、前に行って」

「ちょっと待ってレン姉、さっきのどういう……押すな、押すなよ!」

 空いている左手で翔馬の背中をポンポンと叩きながら、前に進ませた。


 人の流れにのって、参拝を済ませると、混み具合もましになった。

 私が神様にお願いしたのは、もちろん『家内安全』と『学業成就』。

 今年は私の受験がある。

 前世と同じ学科を目指してもいいし、違う学科を学ぶのも楽しそうだ。

「皆でおみくじ引きましょうー!」

「あ、私もお守り授かりたいわ。千賀屋君もよね?」

「はい」

「さあ、さーちゃんも、ついでにまっさんとるーみん、略してまーみんも行くよ!」

「だから混ぜんな!」

「翔馬、『ま』しか残ってなくね?」


 皆ではしゃぎながら社務所に向かう。

「あたし吉ー!」

「私は大吉」

「オレ小吉」

 皆が次々おみくじを開いていく。

「僕は吉でした。先輩はいかがでしたか?」

「……」

「あ、レン姉、凶だ」

 黙っている私の手元を覗き込んだ翔馬がバラした。

「何よ! 翔馬のも教えなさいよ!」

「俺末吉」

 得意げな翔馬が憎たらしい。

「似たようなものでしょうが!」

「いやいや、吉と凶にはでかい差が……痛! 叩くなよ!」

 ふん!

 書いてあることも、「今は動くな」みたいな文章ばかり。

 幸先が悪すぎる。

 もういい、結び所に結んでこよう……。

 打ちひしがれながら結んで、皆のところに戻る。

「レン先輩、元気出してくださいね」

「結んだんだからもう大丈夫だよ、お姉ちゃん」

「ありがとう、麻菜ちゃんと咲愛は優しいわね……」

「僕の吉、差し上げますよ」

「ありがたいけど、それは千賀屋君のおみくじだから、大切にして。……翔馬は?」

 さっきまでいた翔馬がいない。

「あれ? すぐ戻るって言ってたけど、トイレかな?」

「違う!」

 ポケットに手を突っ込んだ翔馬が戻ってきた。

「転んだら危ないから、手を出しなさいよ」

「へいへい」


 そのあとは皆で屋台のたこ焼きを食べたり、甘酒をいただいた。

 三時頃解散して帰宅する。

 両親が居間で酒盛りしたあとそのまま寝てしまっていたので、三人で手分けして片付けた。

 夕ご飯のあとは明日は祖父母の家に行くからと、早めに寝ることにした。

 ちなみに翔馬は今日も鈴白家に泊まる。

 お母さんに「明日はお祖父ちゃんたちの家に行くし、(もちろん)泊まっていくんでしょう?」と圧をかけられて断れる人など鈴白家にいないのだ。


「うーん……」

 部屋でお守りをどこにつけようかと悩んでいると、ドアをノックされた。

「どうぞ」

 ドアが開いて入ってきたのは翔馬だ。

「レン姉、渡すの忘れてた。これ、あげる」

 手から下がっているのは学業成就のお守りだ。

「……どうしたのこれ?」

「あげる。今年受験だし。末吉のほうがご利益あるだろ」

「ん」と、無理やり手に握らされた。

「あ、ありがとう……」

 嬉しい。とても嬉しいんだけど……。

「……あのね。実はさっき咲愛もくれたのよ……」

 手元の、どこにつけようか悩んでいたお守りを見せる。

 自分で授かったのもあるから、合計で三つだ。

「……いらない?」

「いるわよ! 三つ全部使うんだから! もうもらったんだし、返さないからね」

 即答すると、翔馬はくしゃりと笑った。

「付けすぎだろ」

いつも読んでいただきありがとうございます。励みになっています。

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