43話 クリスマスの鈴白家
我が家ではクリスマスイブの日にご馳走を食べて、その後にプレゼントをもらうのが恒例だ。
昔はクリスマス当日に枕元に置かれていたけど、翔馬と咲愛がサンタの真実を知ってから、イブの夜に渡されるようになった。
クリスマスイブの今日は平日。私と咲愛と翔馬で晩ご飯の準備をすると請け負って、両親を仕事に送り出した。
……主に咲愛がやってくれて、私と翔馬はそのお手伝いになるけど。
朝の十時過ぎ、ガチャリ、と玄関から鍵の開く音がした。
「ただいま。予約のケーキもらってきた」
翔馬から、近所のケーキ屋さんの箱を受け取って、冷蔵庫にしまっておく。
「おかえりなさい。ありがとう。お店、混んでた?」
「まだそんなに。でも忙しそうだった」
午前中に勉強を済ませて、午後は軽く掃除。
夕方になり、いよいよ咲愛がクリスマスの料理に取り掛かった。
「ローストチキンは下ごしらえが終わっているから、あとは焼くだけなの。他の付け合わせを用意するね」
「私と翔馬は何をしたらいい?」
「うーん、前菜とコーンスープをお願いできる?」
「じゃあ俺前菜作る」
「私はコーンスープね」
冷蔵庫から玉ねぎを出した私は、薄切りにしてバターで炒め始めた。
「ただいま!」
ちょうど全ての準備が終わったところで、玄関からお母さんの元気な声が聞こえてきた。
「お父さんも駅で一緒になったの。……いい匂い! 手を洗って着替えてくるわね」
両親も揃って、家族全員で食卓を囲む。
ダイニングテーブルの上には、人数分のローストチキンと、一緒にオーブンで焼かれた付け合わせの野菜、翔馬が作ったカナッペと私が作ったコーンスープが並べてある。
そして洋風には不似合いなお茶碗のご飯も。翔馬の分は大盛りだ。
全員揃っての「いただきます」で食事が始まった。
咲愛のローストチキンははちみつも使われていて、甘めだ。
案の定、一口食べた翔馬が目を輝かせている。
付け合わせの野菜も、もも肉と一緒に焼いたので、少し風味が付いていて美味しい。
翔馬が作ったのは冷蔵庫に入れていた生ハムやクリームチーズ、ミニトマトなどをクラッカーに乗せたカナッペ。
両親がさっそくつまみながら、開けたワインを楽しんでいる。
私の作ったコーンスープは、……うん、いつも通り。
薄切りのままの玉ねぎが入っているので、コーン缶のクリームタイプを使っているけど食べごたえもちゃんとある。
ご飯を食べたあとはテーブルを片付けて、居間でくつろぐ。
咲愛が紅茶を淹れてくれるので、私はクリスマスケーキを切り分けようと、箱から取り出した。
サンタの飾りと、チョコレートでできた家が乗っている。
切るのに邪魔なので、取り分けるための小皿に一つずつ乗せておく。
クリスマスケーキの表面は一部荒れ地になったが、これで切りやすくなった。
「咲愛と翔馬はサンタと家、どっちが食べたい?」
「お姉ちゃんの聞き方……」
「レン姉って情緒ないよな」
咲愛と翔馬がつぶやく。
「失礼ね。聞いただけなのに」
「昔、俺と咲愛でサンタの取り合いになったとき、縦に真っ二つにしたの、忘れてないから」
喧嘩しないように分けたのに、二人ともそれを見て涙目になったのよね。
「取り合いしなきゃいいのよ。どっちが食べるの?」
「私、サンタさん」
「じゃあ俺はチョコの家」
「はいはい」
ケーキを切り分けて、それぞれの皿に乗せた。
お父さんとお母さんも紙袋を居間に持ってきた。
私たちへのプレゼントだろう。
紅茶とケーキを食べ終えたあと、両親からそれぞれクリスマスプレゼントをもらった。
「はい、恋華にはこれ」
私には二つ折り財布。
少しくすんだ水色で、好きな色だ。
金属の飾りが小さめで、使いやすそう。
「可愛いお財布! ありがとう!」
「あんた、中学からずっと同じ財布使ってるから、そろそろ替えどきでしょう」
強制交代の通達だった。
今の財布も気に入っていたけど、確かにくたびれてきていたからありがたい。
「咲愛はこれね」
咲愛にはデパコスのコフレセット。
可愛いポーチとリップバーム、鏡がついている。クリスマス限定品のようで、パッケージも可愛い。
リップバームなら普段から使えるし、ポーチも咲愛に似合うパステルピンクだ。
「ありがとう。ここの商品可愛いから、いつか欲しいなと思ってたの」
嬉しそうな咲愛は、ポーチをさっそく普段使っているカバンにしまった。
「で、これは翔馬君」
翔馬へのプレゼントはボディバッグだった。
「高いやつだ……。ありがとうございます」
翔馬の知っているブランドらしい。
「翔馬君も恋華と同じよ。ずっと同じものばかり使うんだから」
ボディバッグを翔馬が肩に掛けて調整するのを、お父さんが手伝ってあげている。
黒でシンプルなので使う場所を選ばなさそうだ。
プレゼントをもらった私たちは、目配せをした。
「お父さん、お母さん、私たちもプレゼント用意したの」
二人に、ラッピングされた袋を渡した。
使えるものがいいということで、三人でお金を出し合った。
お小遣いなので、元は両親のお金だけど気持ちということで。
二人とも、普段使いできる手袋。
スマホ操作もできるものにしてある。
お母さんのはワインレッド。お父さんのものはシンプルな黒。
「ええっ、私たちも?」
驚くお母さんの目が少し潤む。
お父さんは眼鏡を押し上げて目元を拭っているので、絶対に泣いてる。
その反応だけで、私たちは満足だ。
「……ありがとう。使うわね」
お母さんが胸元に押し当てた手袋を、撫でながらそう言った。
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