42話 クリスマス会とプレゼント
学期末考査が無事終了した。
「あたし史上初快挙です! 現国が平均点超えました!」
麻菜ちゃんは無邪気に喜んでいる。
私も今回は満点はないものの、大きな失敗はなく普段通りだった。
勉強会を始めてから、じりじりと皆の成績が上がっているようだ。
「ねえレン先輩、終業式の日って、終わったあと予定ありますか?」
「ないわよ。どうしたの?」
「勉強会の皆で、カラオケ行ってクリスマス会しません? 夕方解散でプレゼント交換あり!」
「いいわね! 私は参加する」
「わーい、じゃあ皆に連絡しときますー!」
その夜に麻菜ちゃんからメッセージが届いた。
『終業式のあと、クリスマス会やります! 一人千五百円までのプレゼントを用意すること! 宜しくー!』
プレゼント、何を用意しようかしら。
「咲愛はプレゼント、何にするの?」
「言ったら楽しみが減っちゃうから、内緒」
確かに。
食べ物……はハズレがないだろうけど、できれば残るものがいいなあ。
あまり女性的なものも男子がいるから避けたほうがいいだろう。
一週間後、終業式を終えた私たちはカラオケ店に集合していた。
前回のカラオケは不参加だった来見君も今回は参加だ。
用意された部屋も前回の時より少し広い。
ドアを入ってすぐの席に麻菜ちゃんが座り、その横に咲愛と私が座る。
机を挟んで、麻菜ちゃんの向かいに翔馬。その横に来見君と千賀屋君が座った。
「ではクリスマス会を始めまーす!」
麻菜ちゃんの音頭で乾杯して、注文した料理を皆でつまむ。
「さっそくプレゼント交換しよう! くじ作ってきたから!」
「それ、沙月はどれが当たるかわかるってことだろ」
「疑り深いなー。じゃあ、あたしは最後に選ぶのでいいよ。恨みっこなし! さーちゃん、この中から選んでレン先輩に回してね。まだ中は見ちゃ駄目だよ」
皆次々にくじを引いたあと、麻菜ちゃんが最後に残ったくじを手に取った。
「よーし、じゃあさーちゃんから、発表!」
咲愛がくじを開いて見せてくれた。
『あなたはまっさんのプレゼントが当たりました! おめでとう!』
「これ、咲愛に当たったのか」
翔馬が大きなビニール袋を取り出して、咲愛に渡した。
受け取った咲愛が袋を開けると、お菓子が詰まった大きな赤いサンタブーツが出てきた。
「わあ、ありがとう。このブーツも食べたあとに飾れるね」
咲愛の言葉に、翔馬は少し得意げだ。
「じゃあ次はレン先輩ですね。どうぞ!」
私は誰のが当たったんだろう。
『あなたはちがやんのプレゼントが当たりました! おめでとう!』
「僕の用意したプレゼントですね! どうぞ、鈴白先輩」
いそいそと千賀屋君が綺麗に包装された箱を渡してくれる。
包装を開くと、携帯しやすいハンドクリーム。少し出してみると、微かに爽やかな香りがする。
「いい香り。使わせてもらうわ。ありがとう、千賀屋君」
「先輩のお役に立てるものを贈れただけで、今日は僕の人生最良の日です」
それはもっと良い日があると思うけど……。
千賀屋君に当たったのは来見君の選んだプレゼントだった。
くじを開けるまで「鈴白先輩、鈴白先輩、鈴白先輩……」と呪文のように唱えていた千賀屋君の顔は、くじを見て一気に落ち込んだ。
そんなに露骨にがっかりしなくてもいいじゃない。
しかし、来見君のプレゼントを見た千賀屋君の反応は、意外なものだった。
来見君が持ってきたのは可愛いスノードーム。
雪だるまと小さな家に雪が降り積もるタイプで、手のひらサイズだ。
「……可愛いな。小真智に見せたらきっと喜ぶ。来見君、ありがとう」
「お、そう? 喜んでもらえてよかった!」
次は来見君の番。
「お、るーみんが当たったの、あたしのだよ!」
可愛くラッピングされた紙袋を開けた来見君が取り出したのは、猫耳っぽい飾りのついた、タオル地のヘアバンド。
「それ顔洗ったりするのに使うやつだよ。ぜひ使って!」
「おー! 可愛いじゃん! でも顔洗う時にわざわざこれ使うの? 面倒じゃね?」
「化粧するときも便利だよ」
「なるほどー! いや、しないけど」
ノリツッコミをした来見君は、「可愛いから母ちゃんに横取りされるかも。でもありがとう」と、わざわざ付けて見せてくれた。
そして、皆が静まりかえった。
「……るーみん、似合いすぎててちょっと笑えない」
「え」
猫耳って男の子にも似合うんだ……。
残りは咲愛と私の用意したプレゼントだ。
翔馬が無造作にくじを開く。
『あなたはレン先輩のプレゼントが当たりました! おめでとう!』
翔馬が皆にくじを見せた瞬間、千賀屋君の方から舌打ちが聞こえた気がする。
「じゃあ翔馬、はい」
私は準備してきたラッピングの袋を翔馬に渡す。
「レン姉っぽい……」
用意したプレゼントは、書きやすい三色ボールペンとシャープペンシルのセットだ。
書き味を試して、適度に重みのあるものを選んだ。
筆記具なら学生に必須だろう。
「……結構手に馴染む。ありがと、レン姉」
翔馬に私のプレゼントが渡ったので、残りは咲愛だけだ。
麻菜ちゃんが万歳をした。
「やったー! あたし、さーちゃんのプレゼントだ!」
「麻菜ちゃんなら楽しめるかも。どうぞ」
咲愛のプレゼントを皆で見せてもらった。
可愛い絵のついたティーバッグがプラスチックのファイルに綺麗に並んでいる、紅茶ギフトだった。
「可愛いー! これ全部味違うやつ?」
「うん。絵も可愛くて、美味しいから好きなの」
「お休みの間にゆっくり飲もうっと。ありがとう、さーちゃん」
皆、もらったプレゼントを大事そうにカバンにしまい、そのあとはカラオケ大会が始まった。
来見君が歌うのを初めて聞いたけど、普段の声と歌声がほぼ変わらないので驚いた。
「るーみん、歌声もブレずに可愛いな……」
麻菜ちゃんのつぶやきに私も頷いてしまった。
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