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男性向け恋愛ゲームのヒロインの姉に転生したので、妹もゲーム主人公も幸せにします  作者: 駒うさすず
第一部

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38話 文化祭でのお母さん

 まだ人の多い廊下を、お母さんと私が並んで歩き、その少し後ろを翔馬がついてくる。

 朝は綺麗にセットされていたお母さんの髪が、少し乱れているのに気づいた。

 お母さんも私の視線に気づいたのか、手櫛で髪を整えた。

「遅くなっちゃった。まだ終わってないわよね」

「んー……あと一時間くらい見られるわよ」

「ならよかったわ。皆の展示は見ておきたくて」

 パンフレットをめくろうとするお母さんの手から、自然に翔馬がパンフレットを引き抜いた。

「案内します。俺のところはかなり混むので、咲愛の一年三組がいいと思います」

 しれっと自分のところを避けようとする翔馬。

 顔を見ると『話を合わせて』と書いてある。

 仕方ないなあ。

「そうね、私も咲愛のクラス見てないし、一年三組に行きましょう」

 何度も私が頷くと、お母さんがニヤリと笑った。

「わかったわ。じゃあ翔馬君のクラスはそのあとに行きましょうね。何があるのか楽しみだわ」

 バレてた。ごめん翔馬。



「一年三組、楽しいカードゲームやってまーす! 簡単な人狼ゲームも楽しめますよー!」

 華やかに飾られた教室の前では宣伝の子ががんばっていた。

 その横のドアをくぐり、受付に行く。

「トランプを使ったカードゲームと、少人数で簡単にできる人狼ゲームもありますよ。どちらにしますか?」

 お母さんと翔馬を見る。

「人狼ゲーム……?」

 お母さんは人狼ゲームに馴染みがないみたい。

「俺はどっちでもいい」

「じゃあお母さんもわかるトランプにする?」

「待って。人狼ゲームって、ルール教えてもらえるんでしょう?」

 お母さんが受付に聞くと「もちろんです」と答えが返ってきた。

「じゃあその人狼ゲームをやってみたいわ。三人でもできるの?」

「できますよ。あと……」

 受付の子が続けようとしたとき、明るい声が飛んできた。

「レン先輩! まっさんもいらっしゃい!」

 教室の奥から麻菜ちゃんが駆け寄ってくる。

「あたしがレン先輩たち対応するね。今、ちょうど席空いたし」

 受付の子が頷いた。「人狼ゲームご希望です。……沙月さん、お手柔らかにね?」

「まかせてー!」

 軽く請け負った麻菜ちゃんが私たちをテーブルまで案内してくれた。


「もしかして、レン先輩とさーちゃんのお母さんですか?」

「そうよ」

「はじめまして! 一年三組の沙月麻菜です!」

 ぺこりと頭を下げる麻菜ちゃんに、母が微笑む。

「咲愛がよく話をしている麻菜ちゃんね。咲愛と恋華がお世話になってます」

「とんでもないです!」

 ニコニコと応じる麻菜ちゃんは、カードを何枚か取り出した。


「ではでは。人狼ゲームの、簡単なやつです。 まずルールを説明します」

 麻菜ちゃんはわかりやすく説明をしてくれた。

 人狼を指摘できれば人間の勝ち。間違って人間を指摘してしまった場合は人狼の勝ち。

「今回は三人なので、人狼は一人です」

 人間には、配らなかったカードの確認ができる占い師や、他の人のカードと交換できる怪盗がいるらしい。

「一度やってみるのが、わかりやすいと思います。 まずは一戦目、やってみましょー」



「……またあ!? 何でわかるのよ!」

 私の前には人狼のカード。

「ホホホ、あんたが弱いのよ」

「レン姉は顔に出過ぎ」

 私が人狼のときだけ、二人が当ててくる。

 お母さんだけじゃなくて、翔馬まで……。

「麻菜ちゃん、もし不正あったらゲームマスターとして言っていいのよ?」

「全然ないですー」

 何で。

「ああ、面白かった。沙月さん、ありがとう。そろそろ次のところへ行きましょうか。……翔馬君のところにね」


 意気揚々と出ていくお母さんの後ろに、私と翔馬は足取りも重く続いた。


 翔馬のクラスはまだまだ繁盛していた。

「一年一組、男女逆転メイド・執事喫茶ー! 是非どうぞー!」

 廊下で大きな声で客引き中の来見君を見つけた。

 繁盛の原因の一人だろう。

 昨日と同じくウィッグを被って完璧美少女の姿……で威勢よく大声を出していた。

 順番待ちの列の最後尾に並んだ私たちの姿を見つけて、パッと顔が輝く。

「翔馬おかえり。鈴白先輩と……」

「レン姉と咲愛のお母さん」

 それを聞いた来見君が「こんちゃーです!」と、うちのお母さんに元気よく挨拶する。

「こんにちは。翔馬君のお友達よね」

「そうでーす!」

 元気よく応じる来見君に「お前、そろそろ仕事戻れよ」と翔馬がぼやく。

「まあまあ、いいじゃん」

「そうよ、いいじゃない」

 既に来見君とお母さんが意気投合し始めている。


「うちの喫茶、結構評判いいんすよ」

「あら、そうなの?楽しみね」

「でもせっかくなら、午前中に来たらよかったっすね。午前中ならうちの女子一押し男子が二人揃ってたから」

 ……あ。

「ちょっとレン姉、ここで待ってて」

 そう言って翔馬が急いで一年一組に入っていった。

 すぐに「来見君! 仕事!」とお怒りモードの女子(男装)から来見君に声がかかる。

「いっけね! ほんじゃ楽しんでいってくださいね!」

 来見君が走って行くのと入れ違いに、翔馬が戻ってきた。

「よし、間一髪」

 ほっとした顔してるけど、多分うちのお母さんなら……。

 お母さんがそっと私に耳打ちしてくる。

「恋華。一枚くらい翔馬君の写真あるんでしょ? 家に帰ったら見せてね」

 ほらね。


 順番が来て入店し、存分におもてなしを受けた私たちだったが、喫茶を出る頃には文化祭の終了時間が迫っていた。

「俺、教室の片付けもあるから、ここで」

 翔馬はそのまま一年一組に残った。


「接客もよかったし、皆綺麗にお化粧していたわね」

「でしょう。メイク係の子が頑張ったんですって。お母さん、そろそろ文化祭終了時間だけど、どうするの?」

「そうねえ……。今日お父さんいないし、咲愛もいいなら皆で外で食べて帰らない?」

「やったー! ……私たち、片付けでちょっとかかるかもしれないけど、いいの?」

「いいわよ。せっかくだし、駅近くのビル見たり、カフェに入ってゆっくりしてるから。三人で何食べるか決めて、集まれる時間を決めて連絡頂戴」

「はーい」


『お母さんから伝言。今日は外食。駅ビルで待っててくれるので、食べたいもの三人で決めることになった』

 二人からすぐに返信が来る。

『ラーメン、チャーハン、餃子』

『ラーメン煮卵つき』

「お母さん。ラーメンに決まった」

「早いわね……」

 私もこんなに早く返信が来て驚いてる。

 ちょうど文化祭終了のチャイムが鳴ったので、ここでお母さんとは一旦お別れだ。

「じゃあまた連絡入れるわね」

「そうして。恋華のクラスまで回れなくて、ごめんね」

「ううん。咲愛たちのクラスを見てもらえたからいいのよ。じゃあ、また後でね」

 お母さんと別れた私は、二年一組に急いで向かった。


 片付けを急いで終えて、咲愛と翔馬と三人で駅に向かう。

 そのままお母さんと合流して、何度か入ったことのあるラーメン屋に向かった。

「皆文化祭お疲れ様。たくさん食べなさい」

 お母さんの言葉に、翔馬がラーメンのほかに、チャーハン大盛りと餃子を二人前注文した。

 もちろんラーメンは替え玉が控えている。

 私たちはラーメンを一人前ずつ注文した。


「翔馬君、ちょっとチャーハンと餃子貰ってもいい?」

「ん。取って」

「翔馬、私もちょっと頂戴」

「ん。……あっ、レン姉餃子二個とった!」

「二個くらいいいじゃない!」

「あんたたち、少しは落ち着いて食べなさい。あと翔馬君、私もチャーハンと餃子貰っていいかしら」

「どうぞ」

「私のときと態度が違うじゃない!」

「恋華、静かにしなさい」

 文化祭の最終日は、こうして楽しい晩ご飯で幕を閉じた。

いつも読んでいただきありがとうございます。励みになっています。

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