31話 修学旅行のおみやげ
『もうすぐ最寄り駅です。おみやげたくさんあるからね!』
メッセージを送った後、私は帰宅ラッシュが始まった電車内から外を見る。3日ぶりの風景だ。
修学旅行が終わり、帰宅途中。
カバンに入りきらなかったたくさんのおみやげを、手に持っている。
疲れて寝てしまいそうになるのをこらえて、なんとか最寄り駅のホームに降りた。
人の波に混ざって、ICカードをタッチして改札を抜ける。
さて、今から家まで頑張って歩くかあ……。
のろのろと出口に向かっていると、
「おかえりレン姉」
声をかけられて顔を上げた。
……?
「何で翔馬がいるの?」
改札を出たところに、私服姿の翔馬がいた。
「咲愛、生徒会。俺、荷物持ち頼まれた」
カタコトの人みたいな言い方をしてくる。
そのまま自然に手を出す。
「おみやげ持ってくれるの?」
「違う。そっちのカバン、貸して」
一番重いカバンを持ってくれるらしい。
「ありがとう。……結構重いわよ?」
「レン姉が持てるならそこまで重くない」
軽々とカバンを肩にひっかけた翔馬と一緒に、帰り道を歩く。
翔馬は重い荷物を持っているのに、私よりも歩く速度が速い。
私は翔馬の影を踏んで早足で隣に並んだ。
「ふわふわのチーズケーキが売ってたの。あとおまんじゅう。おみやげに買ってあるから、帰ったら食べましょう」
「やった!」
「あと、本当は翔馬なら木刀とか欲しがるかなって思ったんだけど、購入禁止だったから買えなかったの。ごめんね?」
「それは全然ごめんねじゃない。ケーキがいい」
「あ、でも小さい日本刀のキーホルダーが売ってたから、それは買っておいたわよ。翔馬へのおみやげ」
「レン姉、刀から離れて」
帰ってご飯を食べてお風呂に入る。
さっぱりすると、少し眠気も覚めた。
両親も早めに帰宅し、生徒会の用事を終えた咲愛も帰ってきたので、皆でチーズケーキを食べることにした。
買ってきたチーズケーキの箱を開けると、冷めて少し縮んだチーズケーキが出てくる。
それを見た翔馬の眉が下がっていたけれど、電子レンジに少しかけてふっくらしたのを見て、機嫌が戻っていた。
「美味しいわね、これ」
「でしょう? お店が結構混んでて……でも、楓が並んででも買おうって言ったから、一緒に買ったの」
「翔馬君、もう食べたの?」
「美味かった。一ホール食べられそう」
翔馬はおまんじゅうまでさっさと開けて食べている。
お父さんも満足そうに味わってくれた。
チーズケーキを食べ終えて一息ついたあと、リビングでくつろぐ。
「これ、咲愛へのおみやげ。和柄のポーチとあぶらとり紙。お母さんには和柄の小さいエコバッグと七味。お父さんには季節外れだけど、和柄の扇子ね」
次々とおみやげを出す。
「私たちはいいけど、あんた自分のは買ったの?」
「私のも和柄のポーチ。咲愛のを買ったときに一緒に買ったの」
翔馬にも日本刀のキーホルダーを渡した。
「マジで買ってる……」
「あとこれ、皆に」
京都のお寺で授かったお守りを渡していく。
咲愛には、桜がモチーフになった鈴のお守り。翔馬には、青色の勝守。両親には綺麗な柄の健康守。私も一つ鈴型のお守りを授かった。
「可愛い! ありがとうお姉ちゃん」
「スマホにつけようかな」
「あらあ、綺麗ねお父さん」
お父さんもさっそく家の鍵につけようとしてくれている。
その光景を見ながら、家に帰ってきた安心感が湧いてくる。
「レン姉、こっちのお菓子は?」
翔馬は地域限定のお菓子詰め合わせと、生八つ橋を指さしている。
「いつものメンバーで配ろうかなって。食べたいなら一つ取ってもいいわよ? ……生八つ橋は我が家用にも買ってあるから開けちゃ駄目」
「えー、一つだけ?」
「一つだけ。配ったあとに余ったらあげるから……」
だんだんと、また眠くなってきた。
「咲愛、恋華を部屋に連れて行ってあげたら」
「うん。お姉ちゃん、行こ」
「んー……。だいじょうぶ……」
「大丈夫じゃないから、行くの」
咲愛に手を引かれて階段を上り始めたところまでは覚えている。その先の記憶は途切れた。
翌週の月曜日、一年生の教室棟へ行き、麻菜ちゃんや千賀屋君、来見君にお菓子をお裾分けする。
「やったー! レン先輩ありがとうございますー! うまー!」
「喜んでもらえてよかったわ」
「先輩からおみやげをいただけるなんて、これは末代まで」
「賞味期限内には食べてね? あと、生八つ橋はカバンに入れずに今すぐ食べなさい」
「オレもいーんすか! あざーす!」
「どうぞ召し上がれ」
三人とも反応が違って、見ていて飽きない。
「レン姉、余ったなら食べていい?」
翔馬はいつも通りだった。
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