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男性向け恋愛ゲームのヒロインの姉に転生したので、妹もゲーム主人公も幸せにします  作者: 駒うさすず
第一部

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28話 夏祭りとたい焼き

「へいお待ちー!」

 汗びっしょりになった麻菜ちゃんたちが戻ってきた。


「お好み焼き三つ、たこ焼き八個入りを三箱」

 それで皆足りるのかしら?

「唐揚げ三人前、焼きそば三人前、フランクフルト三本……」

 結構買ってた。半分ずつで分ける前提なのね。

「あとペットボトルのお茶六本!」

 水滴がついた大きなビニール袋が、どさりとベンチに置かれた。


「わあ、ありがとう。お疲れ様……あれ、翔馬、たい焼きは?」

 私の横で人数分の箸を取り出している翔馬に尋ねる。

「……後で買いに行く」

 さっきのタイミングで買ってくるかと思ったのに。

「なんだよ、雨坂が早く戻ろうって何度も、痛った!」

 来見君が翔馬に脇腹を強く突かれている。

「冷めないうちに買ってきてくれたの?ありがとう」

 お好み焼きもたこ焼きもまだ温かい。

「麻菜ちゃんも来見君も翔馬も買い出しお疲れ様。ベンチに座って」

 麻菜ちゃんが一瞬咲愛の足元を見たあと、「ありがとございまーす!」と座る。


 ペットボトルを全員に一本ずつ配り、空いたベンチに来見君と翔馬が座った。

「じゃ、あたしとさーちゃんで分けっこね。まっさんはるーみんと分けなー」

「うんうん。それじゃ私は千賀屋君と分けるわね。じゃあ、まず唐揚げ分けましょうか」

 そう言って千賀屋君の方を向くと、後ろから袖を引っ張られた。

「レン姉、俺も唐揚げ食べたい」

「翔馬の分はそこにあるでしょ? 来見君と分けなさい」

 焼きそばを二人分に分け、唐揚げも添えてセットにした。

 私の分の焼きそばは、唐揚げのカップに入れちゃおう。


 また袖を引っ張られる。

「足りない」

「はいはい、ちょっと待って。まずは千賀屋君」

 箸を添えて、千賀屋君に手渡した。

「先輩に分けて頂くなんて……もったいなくて食べられません……!」

「冷めないうちに食べてね?」

 せっかく温かいうちに買ってきてくれたんだし。

 私のカップから唐揚げを二個、翔馬の焼きそばに乗せた。

「はい翔馬。あげる」

「やった! ありがとレン姉」

 現金なんだから。


 お好み焼きとたこ焼きも半分ずつに分けておく。

「レン姉、たこ焼きも」

「たこ焼きね。……はい」

 翔馬のほうに、たこ焼きを二個乗せた。

「先輩、僕の分をお分けしましょうか」

 この千賀屋君の優等生っぷり!

「ありがとう。でもいつものことだから。千賀屋君もちゃんと食べて」

「いつものこと……ですか……」

 千賀屋君が、歯の隙間から声を絞り出した。

 少しだけ食べてみたいものがあるときなど、翔馬が残りを食べてくれたりするので、これはこれで助かるのだ。

 フランクフルトもソースをかけたあと箸で分けて、千賀屋君の分は袋に入れた。

 ……これも私の分は唐揚げのカップに入れちゃおう。

 ケチャップとマスタード、焼きそばの紅生姜でカラフルになったカップを取り上げ、私も食べ始めた。



 翔馬と来見君はフランクフルトのソースで揉めている。

 翔馬、あげた分はもう平らげたらしい。さすがの食欲だ。

「マスタード、こっちにまでかけんなよ」

「悪い悪い。でもこれ別に辛くなくね?」

「別にいいだろ。好きじゃないんだよ」

 ケチャップとマスタードの合わさったのが美味しいのに。


 一方、麻菜ちゃんと咲愛はお行儀よく食べている。

「腹ごなししたら、かき氷か綿あめかりんご飴かチョコバナナは食べたいんだよね」

「選択肢多いね」

「お祭りだからね!さーちゃんも食べたいやつなら、半分こしよ。たくさん食べられるし!」

「うん」

 麻菜ちゃんからこのお祭りを満喫しようという固い意志を感じる。


 千賀屋君も食べるのは早い。

 もうほかのものは食べ終えて、フランクフルトを食べ始めている。

 私はまだお好み焼きが丸々残っている。

 まだほんのり温かいお好み焼きを口に運ぶと、ソースの甘辛い味が口に広がった。

 じっと翔馬がこっちを見ているけど、さすがにこれはあげません!



 食べ終えた容器をゴミ箱に捨てた後、神社に向かう。

 咲愛の足取りが少し軽くなっているのを見て安心した。

 参道を上がるにつれて、人が増えてきた。

 翔馬は先に来見君と早足で上がって行った。二人で一緒にいるなら大丈夫だろう。

 咲愛と麻菜ちゃんも前を歩いていたはずが、気づいたら見失ってしまった。人混みがひどくて、あまり周りが見渡せない。

「先輩、良ければ掴まってください」

 私と並んで歩いていた千賀屋君が、肘を差し出してくれた。

 まるでエスコートされてるみたい。

「ありがとう、邪魔になったら言ってね」

 はぐれてしまいそうなので、ありがたく厚意に甘える。

「……邪魔だなんて! 先輩を邪魔者にする存在こそ、許されざるものです」

「それは許してあげて」

 相変わらず過激な理論が飛び出してくる子だ。

「千賀屋君もこういうお祭りには来たりする?」

「幼い頃に一度だけ。ただ小学生になって以降は親族の集まりで屋台を直接見ることはなかったです」

「私も一昨年に来たきりなのよ。来年と再来年は来られないだろうから、楽しんでおかなきゃ」

 来年は私の受験、再来年は咲愛と翔馬の受験だ。

 もし来れなくても、悔いのないようにしておきたい。

 くじ引き、スーパーボールすくい、綿あめなどの屋台が並んでいる中を進んでいく。

「見て、あの綿あめ屋さん、すごい大きな綿あめが出来上がってる」

「本当ですね。召し上がりますか? ごちそうしますよ」

「ううん、さっき食べたからお腹いっぱい」


 そのとき、スマホが震えた。翔馬からだ。

『神社着いた。今どこ』

 簡潔だ。

『千賀屋君と神社に向かってる。目印教えて』

 私も素早く打って送信するとすぐにスマホが震えた。今度は電話だ。

「もしもし」

 周りを気にしながら声を抑えて電話に出た。

 翔馬の方も混雑しているようで、ガヤガヤと人の話し声がスマホから聞こえる。

「何で千賀屋といるんだよ」

 第一声がそれ?


「翔馬たちが先に行ったからでしょう。千賀屋君が一緒にいてくれてるから心配しないで。目印教えてね」

「迎えに行く」

「いらない。目印教えて。じゃあ混んでるし切るわね」

 電話を切り、千賀屋君を見る。

 こちらを見ていた千賀屋君と目が合うと、慌てたように目を逸らされた。

「こんなところで電話してごめんね。翔馬から神社に着いたって」

「ああ……なるほど」

 声が低い。まあ、仲悪い人の名前は聞きたくないわよね……。

 またスマホが震えた。

 今度は麻菜ちゃんだ。

『手を洗うとこでまっさんズと合流しました! 待ってまーす』

 絵文字とスタンプまで付いて賑やかなメッセージだ。

 手水舎のことね。

『了解』のスタンプを送信して、私たちは神社へ向かった。



 手水舎に到着すると、麻菜ちゃんと咲愛が見えた。

 その横で翔馬が、腕組みして貧乏ゆすりしている。

 行儀悪いなあ……。

 私たちに気づいて一瞬ポカンとした後、腕組みを解いて、大股でこちらへ歩いてくる。

 睨んでる……。

 自分が置いていったくせに。

「レン姉、遅い……何で千賀屋に掴まってんの」

「はぐれないようにしてくれたのよ。翔馬たちは先に行ったじゃない」

 翔馬は一瞬気まずそうな顔をしたが、すぐにまた睨んできた。

「……で、何で今も掴まってんの。もうはぐれないだろ」

「あ、そうね。千賀屋君、ありがとう」

 千賀屋君の腕から手を離した。

「いえ、……僕でよければ、いつでもお使いください」

 健気なことを言ってくれる。

 麻菜ちゃんが明るい声を出した。

「あたしたちもまだお参りしてないんですよ。皆で行きましょー」

 今度は皆とはぐれずに、お参りを終えることができた。



 帰り道は下り坂なので、少し足元が怖い。

「レン姉、たい焼き買おう! こっち!」

「ちょっと、腕を引っ張らないで! 転んじゃう!」

 私はたい焼きにこだわる翔馬に引っ張られ、また皆とはぐれてしまった。

「ほら、またはぐれたじゃない! 皆大丈夫かしら……」

「子どもじゃないんだから大丈夫だって」

 どっちがよ!


 結局、もう一度皆で集合してから解散した。

 たい焼きが買えた翔馬は、食べながら終始ごきげんだった。

いつも読んでいただきありがとうございます。励みになっています。

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