↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男性向け恋愛ゲームのヒロインの姉に転生したので、妹もゲーム主人公も幸せにします  作者: 駒うさすず
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/54

26話  夏のある日の鈴白家

 アラームがわりの軽快な音楽が流れ出した。

 カーテンの外が少し明るい。遮光カーテンでこれなら、かなりの快晴だろう。窓を閉めていてもセミの声が聞こえている。

 私は手探りで枕元のスマホを探し、取り上げる。

 朝の六時。

 ……学校に行くなら……あ、まだ夏休みだ。

 しばらくの間、アラームはもっと遅くしてもいいかな。

 寝起きの重い頭でぼうっと考える。


 ……せっかく目が覚めたので、起きてしまおう。

 部屋を出て、階下に向かう。

 リビングと繋がったダイニングでは、開けたカーテンから朝の光が差し込んでいる。

 お母さんとお父さんは朝ご飯を食べ終えて、片付けをしていた。

「おはよう……」

「おはよう。お母さんたちもう出るからね。ごはんは……」

「自分で作るから大丈夫。洗い物置いておいて。一緒に洗うから」

「ごめんねぇ。じゃ、任せた!」

「任されました」

 洗面所で顔を洗ってから、キッチンに向かう。

 お母さんは服を着替えると化粧を始めた。

 お父さんは……洗面所からシェーバーの音が聞こえてる。

 私は冷蔵庫から卵を三つ取り出した。ハムも三枚。……豪華に六枚使っちゃうか。


「お母さーん。今日は二人とも帰り遅いんだっけ?」

「そうそう。お父さんは会社の集まりで遅くなるって。お酒も出るみたいだし、晩ご飯はいらないでしょ。お母さんは今日は学生時代の友達と女子会、行ってくるわね」

 化粧を簡単に終わらせ、ダイニングにお母さんが顔を出した。

「うふ」と笑うお母さんは、ちょっと可愛い。

 オトナ女子会。いいなあ。私も久しくしてない。

 このまま大人になったら、咲愛や麻菜ちゃんとしてみたいなあ。

「わかった。こっちも三人で食べておくわね。女子会楽しんできて」

「ありがと。遅くなるだろうから、戸締まりしっかりね」

「はあい」

 お母さんと、少し遅れてお父さんが出かけてしまうと、また家の中は静かになった。

 フライパンを温めて、まずはハム。ジリジリと音がしたところで卵を割り入れて、塩コショウして目玉焼きにする。完璧なハムエッグの出来上がりだ。

 電気ケトルの電源を入れて、紅茶のティーバッグを取り出す。ティーポットに入れて、お湯が沸くのを待つ。正式なやり方は違うらしいけど、飲めるからこれでいい。

 オーブントースターに食パンを一枚入れようとしていると、階段からトントンと降りてくる音がした。

「お姉ちゃん、おはよ……」

 パジャマ姿の咲愛だ。寝起きでトロンとした目をこすっている。うちの妹は今日も世界一可愛い。

「おはよう。咲愛もハムエッグ食べるわよね?」

「食べる……。顔、洗ってくるね……」

 咲愛を見送った後、私は食パンを二枚入れてオーブントースターのダイヤルを回した。


 朝ご飯も終わり、服を着替える。

 まあ、いつものでいいか。

 最近はTシャツとジーパン、カットソーとハーフパンツの組み合わせをローテーションしている。

 着替えて朝の支度をしていると、玄関でドアの開く音がした。

「ただいまー。外あっちぃ。あー、生き返るー」

 近くのアパートに住む翔馬だ。

 そんなに離れていない距離のはずだけど、汗だくでTシャツの裾をつまみ、パタパタとあおいでいる。

 夏はエアコン代がかかるからと、ほぼ毎日、午前中から我が家に来ている。

「おかえり。ハムエッグ食べる?」

「咲愛の?」

「私が作ったけど?」

「んー……。食べる」

 今、一瞬悩んだの、気づいてるからね。


「パンは焼く?」

「いい。いらない。一応食べてきたから」

「何食べたの?」

「メロンパン。ホイップ入ったやつ」

 甘党め。


 普段着に着替え終えた咲愛が、ティーポットを持ち上げた。

「翔馬君、朝淹れた紅茶、まだあるけど飲む?」

「飲む。アイスにして」

「うん」

 咲愛が翔馬のマグカップに氷を入れている。

「また咲愛を使って」

「咲愛から言ったし」

「翔馬君、シロップ2個ね?」「ありがとー」

 出てきたマグカップは、既に牛乳が入ったミルクティーになっていた。

 翔馬はゴクゴクと飲み干すと、当然のように私にカップを渡してくる。

「レン姉、麦茶も欲しい」

「もー」

 キッチンでマグカップを洗い、冷えた麦茶を入れて出す。

 翔馬は半分くらい飲んで、マグカップをテーブルに置いた。


「あ、そうだ。今日はもう洗濯機回し終わってるからね。急ぎならもう一度回すから洗濯かごに入れておいて」

 外を指さすと、翔馬が固まった。

「え、今日はおばさんがやってくれる日じゃなかった?」

「夏休みの間は、私か咲愛よ」

「……俺の下着なかった?」

「あったわね」

 肌着とトランクスが。

「ちゃんと干したわよ」

 翔馬が庭の洗濯物を見る。

 風もあるし、天気もいい。すぐに乾くだろう。

「……。」

 返事がないなと見てみると、翔馬は顔を赤くして黙っていた。

「……俺、しばらく自分の下着は自分で洗う」

 別にこっちは気にしないのに。


 午前中からお昼ご飯までは、咲愛と翔馬が宿題をする。

「レン姉は? それ宿題じゃないじゃん」

 私の問題集を見て翔馬が不思議そうに聞いてきた。

「少なかったから一通り終わっちゃった」

 せっかくだから復習と予習をしっかりしておこうと思って。

「レン姉のは、勉強できない、とはちょっと違うんじゃない?」

「うるさいなあ……」

 ケアレスミスの克服方法、わからないし……。


 咲愛が作ってくれたお昼ご飯を食べていると、翔馬がファイルを取り出した。

「これおばさんに渡しておいて」

「ああ、いつもの?」

「そう」

 ファイルには、レシートが何枚も入っている。

 翔馬は一人暮らしを始めてからずっと、購入品のレシートを毎月うちの両親に渡して、報告している。

 お小遣い分は必要ないらしい。

 未成年の間はこの方式を続けると母から聞いている。

 翔馬も納得しているので、私も口は出さない。

「わかった。預かっておくわね」


 お昼ご飯を食べたら皆思い思いに過ごす、自由時間だ。

 翔馬はリビングの奥にあるテレビ台の中からゲーム機を取り出した。

 我が家に唯一置いてあるゲーム機だ。

「何やるの?」

「いつもの。二人もやる?」

 いつもの。対戦ゲームのやつだ。

 一度教えてもらったけど、私にも咲愛にも難しくて、いつも勝つのは翔馬になる。

「やだ。ボコボコにされるし」「私もやめておく」

「いや、二人が弱すぎなんだって」

 言いながら翔馬はゲームをスタートさせた。


 咲愛はおやつを作ってくれているらしい。キッチンから甘い匂いがしてくる。

「何作ってるの?」

「マドレーヌ。この間読んだ本で出てきて、印象的だったの」

 マドレーヌって家で作れるんだ……。

 手伝いをしようと思ったら、「大丈夫だから、出来上がるのを待ってて」と言われてしまった。

 手持ち無沙汰になった私は、リビングのソファに腰掛ける。

 翔馬のゲームをBGMに、この間買ってきた参考書を読み始めた。


 おやつに咲愛が作ってくれたマドレーヌを食べる。

 ちゃんとお店みたいなマドレーヌが出来上がっていた。

「紅茶に浸して食べるシーンがあってね……」

 そう言う咲愛がティーポットから人数分、紅茶を注いでくれた。

 咲愛は自分のマドレーヌを紅茶に浸してスプーンですくって食べている。

 私はそのままマドレーヌを食べる。

 バターのいい香りの中に、少しだけレモンの香りが混ざっている。

 やっぱり咲愛が作るものは、なんでも美味しい。


 今日の晩ご飯は翔馬が担当だ。

「何作るの?」

「冷やご飯があるから、オムライス」

「包む卵足りる?」

「薄焼きにするから足りる」

 雑……。でも私でもそうするから、何も言えない。

 誰に似たのかしら、この雑さ。


 出来上がったオムライスは綺麗に卵に包まれていた。器用。

 私はケチャップで二重丸を描く。咲愛はニコニコマーク。

 翔馬はすでに山のようなオムライスを食べ始めている。

「いただきます」

 粗めに切られた玉ねぎと人参で、食べごたえのあるオムライスに出来上がっていた。

 咲愛の作るオムライスと違うけど、これも美味しい。

 自分で作るのと何が違うんだろう。


 晩ご飯の洗い物も終え、翔馬は我が家でお風呂に入ってから自分のアパートへ出ていった。

「女二人だから絶対チャイムが鳴っても出たら駄目だからな!」

「はいはい。また明日ね。行ってらっしゃい」

「絶対だからな!……行ってきます」

 翔馬にも言われたので、戸締りを確認して回る。全部きちんと閉まっている。


「お姉ちゃん、私も寝るね。おやすみ」

「うん、お休み」

 冷蔵庫を見たけれど、明日は早い時間に買い物しておいたほうがいいかも。

 そんな事を考えながら、私はベッドに入った。

いつも読んでいただきありがとうございます。励みになっています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。