鬼退治に行こう
【次の行き先】
『次は鬼退治って直人が張り切っているよ。どう?』
次何処行く?の話の時。
船に乗るのもいいね。
日帰りで行けるところいっぱいあるよね。
から始まり。
和馬さんが船酔いしやすいと直人さん。
でも、外に居れば大丈夫と和馬さん。
じゃあ、近いところから試そう。
そこで別れたけど。
無理に船に乗らなくてもいいかなあ。
他の場所もいいかもと思い始めたころに鈴からの通知。
確かに、近いといえば近いけど。
しばらく考えて、和馬さんに連絡。
『て、鈴から連絡きた。和馬さんはどう?』
送ってから、別の場所の提案するのを忘れていた。
このまま続けて送るべきかもたもたしている間に。
割とすぐに返事。
『いいね。直人が桃太郎になるとか言ってそう』
てことは、和馬さんが犬。
鈴がキジで、私がサルか。
想像したら笑ってしまう。
『じゃあ、鈴に返事しとくね』
鈴にそのことも含めて返信。
『わかった。鬼退治にはキビ団子だね。
うちらはお弁当だけど、花音も作るでしょ?』
あれから少しは練習したけど、自信はない。
でも、前ほど作るのは嫌じゃない。
『うん、作る』
送ってから、枕を握りしめる。
布団の上でコロコロ。
何作ろうかな。
卵焼きはリベンジで必要。
きんぴらごぼう?鳥の照り焼き?迷うなあ。
でも、鈴に教えてもらった人参で型抜きは楽しそう。
豆ごはん、無理におにぎりにせずに詰めるだけにすれば。
うん、やれそう。
【別行動?】
券売機の前。
切符は無事買えた。
あとは、乗船時間を待つばかり。
そこで、船を降りての行動を話し合っていたら。
「和馬の船酔いが心配だから。
船を降りて落ち着いてから洞窟へ行く」
とは直人さん。
「だから大丈夫だって。気にするほどじゃない。
せっかくだから、先に行こう」
とは、和馬さん。
「だから、船までは一緒。そこから別行動」
とは鈴。
「とりあえず船を降りての選択肢は2つ」
と、和馬さん。
「1.皆で周る」
皆でゆっくり周るコース。
でも、直人さんか和馬さんのどっちかが気を使う。
…ただ、酔わない可能性もある。
「2.降りたら別行動」
鈴の言っているコース。
これなら、私の心臓以外は平和っぽい。
「花音さんはどうする?」
決めるのは私?
でも、私しか決める人居ないよね。
「とりあえず、島に着いて考えるプランで」
鈴の目がちょっと見られない。
【船は意外と揺れる】
船に乗って、鈴と直人さんは、船の探検に周り。
和馬さんは、看板にある椅子に座ってお茶を飲んでいる。
「大丈夫?」
私の問いに、首を傾げる和馬さん。
「本当に心配しなくていいよ?
ここで荷物見ているから、船の中見たらいいよ」
いや、そう言われましても。
意外に船、揺れているんですけど。
そっと横に腰掛ける。
いつもより近い。
ちょっとあったかい気がする。
「こっちで一緒に景色見るほうがいい」
思い切って、膝の上にある手を握る。
「ありがとう。気を使わせたね」
2人で沈黙。
遠くで鈴たちの声が聞こえている気がする。
その時、出発の合図の汽笛が鳴った。
【お供は脱落】
「だから無理したらダメって言っているよね」
フェリーを降りてから。
少しぼんやりしている和馬さんを見て鈴が一言。
「だから、大丈夫だって」
いつもより覇気がない和馬さん。
「やっぱり僕ら先に行くよ。バス、直ぐに出そうだし」
とは、直人さん。
全員が残ったら、和馬さん気にしそう。
今は無理しても問題ない感じではありそうだけど。
ここからバスに乗るとなると。
和馬さんが多分楽しめないんじゃないかなあ。
途中で鈴にこそっとそんな話をしといたから。
「じゃ、花音。あとでね」
鈴も先にバスに向かう。
私は、付いて行こうとする和馬さんを引き留める。
「先に2人で海見たい。かも」
2人を見送った後で。
浜辺にあるモニュメントを見たり。
民家の路地を手を繋いでゆっくり巡る。
その間に、和馬さんもいつもの調子を取り戻したようだ。
「さて、鈴たちどうしているんだろ」
私がスマホを取り出した時、向こうから着信。
「絶景スポットで、お弁当食べているよ」
添付された写真。
2人が仲良さそうに、お弁当を持って写真を撮っている。
あれ?向こうでお弁当は一緒とか言って無かったっけ?
思わず和馬さんを見る。
向こうも、自身のスマホを前に固まっていた。
二人同時に顔を見合わせる。
「お弁当は、ここで食べようか」
和馬さんの言葉に頷く。
―心の準備、出来てないんですけど。
【リベンジの成果】
海を目の前に見ながら、2人でお弁当を広げる。
結局悩んだ末に、鳥の照り焼きにした。
卵焼きも、ちゃんと味を見てから入れた。
一口目が気になる。
鳥の照り焼きをひと齧り。
つい、自分が食べるのも忘れて凝視してしまう。
「うん。好きな味」
その一言で嬉しくなる。
私も一口齧る。
そっか。この味なんだ。
少し甘め。でも隠し味がちゃんと効いている。
卵焼きも、前より早く無くなっている。
人参は、ハート型は止めて星型と人参型を使った。
でも、鈴達が居ないんだったら。
―ハート型も使えばよかったかも。
考え事をしながら、私が半分食べる頃には。
和馬さんのお弁当の中身は空っぽだった。
「ごちそうさま。
いつも花音さんに作ってもらうばかりじゃ悪いと思う。
だから…次、僕が作ろうと思う」
え?
「出来れば。今度は花音と2人で遊びに行きたい」
あ、うん。2人きり…ね。
バスに乗ってからも、ドキドキが止まらない。
手を軽く握ると、向こうも握り返してくれる。
じゃなくて。
作った弁当にダメ出しされた?
違う。それなら、多分次がない。
2人きりになりたい?
いや、今2人きりやん。
え、鈴…お願いだから、助けて。




