作ったお弁当
【大学時代の話】
「いやあ、楽しかった」
軽く洗った手を拭きながら直人さんは言う。
「何回やったんよ。せっかくお弁当作って節約したのに」
二人は、座った後もわちゃわちゃしている。
「シート分ければ良かったな。今からでも遅くないけど」
和馬さんの一言で、二人が黙った。
「それはそれで寂しいやん。せっかく四人で居るんだし」
とは直人さん。
「そういえば」
鈴が荷物を広げながら直人さんに聞く。
「お兄ちゃんの友達だから二人の事は知っていたけど」
自然に輪になるように座った状態。
鈴が、和馬さんと直人さんを交互に見ている。
「和馬さんと直人の関係は、詳しく知らないかも」
鈴の話では、お兄さんを通じては知っていたよう。
「そっか、それまで和馬と接点無かったもんなあ」
と、直人さん。
それ、私も聞きたいかも。
「大学で、地元一緒って理由で集まっていてて。
で、中でこっち戻ってからも続いた関係?」
ちょっと疑問系の和馬さん。
「確かに個々では会っていたけど。
大学の時みたいに集まってはあんま無かった気がする」
直人さんが続ける。
「大学の時、和馬の家は誰かかれかは居たんよ。
バイトもせんと良く生活出来ていたなと思っていた」
そうなの?
「そりゃ、勉強優先していたらバイトする暇なんて。
というより、皆、なぜ来るとき食材を持って来ていたん?
正直、助かったけど」
と、和馬さん。
「だって、料理するのは面倒。
和馬なら、何でも頼めば作ってくれたやん。
下手なとこ行くより安上がりだし」
え?ご飯作れるの?
「そりゃ、節約しようと思えば、自炊くらいする」
えっと。お弁当…。
【お弁当の感想】
ちょっと躊躇うものの、意を決して差し出す。
「お花見弁当だ」
和馬さん、弁当を開けると嬉しそう。
いろいろ参考にして、グッズ揃えて良かった。
「え?ちょっと見せて」
と、直人さん。
「嫌だ。減る」
隠す和馬さん。
チラリと、鈴のお弁当を見る。
何かが色とりどりに散らばっている気がする。
「いただきます」
その一言で、ドキドキする。
まず、唐揚げを一口。
何も言わない。
私もおにぎりを手に持つ。
味は、いつものわかめご飯。
二口目、ブロッコリー。
何も言わない。
私も卵焼きを齧る。
あ、しょっぱい。
三口目、卵焼き。
あ、お茶飲んだ。
「あ、しょっぱかったかも」
何も言わないから、先に言う。
「うん。卵って大きさ違うよね」
え?何の話?
【計測は大事?】
「卵って言えばさ」
同じく、鈴の卵焼きを口に入れながら、直人さんが言う。
「和馬って、毎回量を計ってたよな。なんで?」
料理って計るものなの?
「いや、同じ材料でも、物によって味変わるからさ」
あ、え?は?
和馬さんの答えに、一瞬思考が止まる。
「その辺って、感覚で調整すれば良いやん?」
とは鈴。
あ、もしかして。
そっと、和馬さんの顔を見る。
顔からでは良くわからない。
そして、手元に視線を落とす。
いつの間にか、綺麗にお弁当の中身は食べられていた。
「ごちそうさま」
その流れで、和馬さんが空になったお弁当を片付ける。
二人の間にあった荷物は、和馬さんの向こう。
残ったのは、自分の鞄。
そっと反対側へ置く。
そして、残った自分の分も食べる。
卵焼きは、流石に食べきれない。
帰ったら、卵計ってみよう。
―そのあと。
高い場所に登る直人さん。
「天守閣を食べるんだ」
鈴は怒りながらも、写真を撮っている。
隣では、真面目に説明文を読む和馬さん。
一緒に読んでいると、いつの間にか二人が行方不明。
連絡すれども、その場所にいなかったり。
すぐに出なかったり。
そんなこんなを満喫して、帰り。
【帰りの車で】
後ろの席で二人は手を繋いで爆睡している。
「少し遠回りして帰ろうか」
と言う和馬さんに頷く。
ちょっと考える。
「…お弁当」
上手く繋げられないのがもどかしい。
「今日はありがとう。大変だった?」
と、和馬さん。
首を振る。
言いたいのはそっちじゃない。
軽く首を振る。
「次、もっと美味しいもの作る」
…自分でハードル上げてどうする。
和馬さんが、ちょっと笑ったのが判る。
でも、顔は見れない。
視線は自分の手。
指が変な動きしてる。
「楽しみにしてる。でも…」
言い淀む和馬さん。
続きが気になる。
「後ろの二人どうする?」
反射的に後ろを振り返る。
二人は全く気づかず寝ているよう。
「また、四人で遊んだら楽しいよね」
しばらくの沈黙。
2人きりだと、まだ恥ずかしい気がする。
【次の約束は】
外の景色は、住宅街へ入っている。
そろそろ後ろの二人ともお別れだ。
「ほら、起きろって」
鈴は私が声を掛けるとすぐ起きた。
直人さんは、なかなか起きない。
その間に、鈴と二人でコンビニへ入る。
手には飲み物。
ちょっとしたお菓子。
レジで鈴を見る。
「なあ、また皆で遊びに行きたい」
財布を出しかけた鈴が止まる。
その隙に、会計を済ませる。
「2人で行くのは、恥ずかしいというか…」
それらしい言い訳。鈴に出して貰わないための。
「今度、どこ行く?もう少し遠くでも良いね」
いつもの鈴。
「うん」
外では、やっと直人さんが起きたようだ。
「いやー。楽しかったよ。
また遊ぶんでしょ?何処行く?」
次、何処行こう。
【卵焼きの答え】
家に帰る。
元々家にあった卵。
買った卵。
大きさが違う。
スケールを取り出す。
同じ二個。
乗せる。
落ちる。
器に入れてもう一度。
やっぱり重さが違う。
今度は、ボウルを取り出す。
別々に入れる。
朝と同じ塩加減。
焼いてみる。
出来上がった二個の大きさが違う気がする。
ちょっと端を切って食べ比べ。
「あまり変わらないかも」
ネットで再度検索。
塩少々…少々って何?少量と何が違うの?
更に検索。
親指と人差し指でつまんだ分量。
入れた量。ティースプーン一杯。
「しょっぱいはずだよ」
改めてトライ。
今度は、ちゃんとした味が出来た。
その時、お母さんが台所へ顔を出す。
「今日のおかず、卵焼きね」
見たら、卵が全部無くなっていた。




