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つないだ手の先に  作者: はらぺこ姫
子供と共に
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塔の上のお姫様

【お姫様は】

ある日の夜。

無事にお風呂に入った私と羽美。

和馬さんは息子の勇希と入浴中。

「髪は乾かさないの?」

私の声に、羽美は首を振る。

羽美は、ドライヤーの音が嫌い。

かくいう私も苦手。

だから、せめてタオルで乾かして欲しい。

「タオルで羊さんは?」

首を振る。

この前、プールで友達に羊さんを披露したら。

男の子にからかわれたんだっけ。

困った。

「羽美?風邪をひくから。ほら」

お風呂から出てきた和馬さん。

手にはくしを持っている。

羽美の前で椅子を引く。

その隙に走り出そうとする勇希を。

私はバスタオルでキャッチする。

「お姫様。どうぞ」

羽美は、喜んで椅子に座った。

勇希をわしゃわしゃ拭きながら。

向こうの2人の様子をうかがう。

和馬さんに髪を梳いてもらいながら。

羽美はいろいろ話をしている。

私が同じことをしても嫌がるのに。

何故、和馬さんならいいの?


【嫌がる理由】

「羽美が嫌がる理由?

特になにもと言いたいけど」

子供たちが無事に寝た後。

和馬さんに

話を聞く。

「強いて言うなら。

羽美は、花音の髪が羨ましい?」

ん?話が見えない。

「羽美は、花音の髪が羨ましい。

でも羽美は、僕のちょっと癖ある髪と同じだから」

ああ、確かに。

「この髪は、手入れにちょっとコツが必要で」

そうなの?普通に梳かすだけじゃダメなの?

「上手くしないと、朝爆発するんだよ」

それ、初耳なんだけど。

「小さい時は、髪の量も少なかったから。

それに、伸ばしていたらそこまで気づかない」

そういえば、羽美。最近おかっぱにしたね。

なかなか髪が乾かないのが嫌と言って。

「だから、僕に頼むんだって」

うん。わかった。

わかったけど。

「それ、言ってくれても良くない?」

羽美の頬をつんつん。

羽美は全く起きる気配がない。

和馬さん、苦笑い。

「羽美が言うには、ママはライバルだから。

綺麗の秘密は教えないって」

はい?

「僕も、どっちか選べと言われても。

どっちも選びたいから困る」

そりゃそうでしょうよ。

私も旦那と子供、どっちか選べと言われたら困る。


【塔の上のお姫様】

あれから数日後。

お風呂上りの和馬さんを鏡越しに見つけた羽美。

「パパ、今日のお話は?」

今羽美は、洗面台の前に置かれた台に乗って。

私と一緒に歯磨き中。

「そうだなあ」

和馬さん、逃げ出そうとする勇希をキャッチ。

そのまま一緒に奥に消えた。

そして、支度を終えて戻って来る。

「塔の上のお姫様の話はどう?

ママみたいな綺麗な髪のお姫様」

和馬さん、どさくさに紛れて私の髪で遊んでいる。

勇希が真似するから、ちょっと止めて欲しい。

「待って、すぐに行くから」

羽美。歯磨きの最中に話をすると。

私の方に泡が飛ぶからね。

先に歯磨きを済ませていた勇希は、既に布団へ。

羽美も急いでうがいを済ませると、布団の方へ。

今日の話は、塔の上のお姫様になるらしい。

興味が沸いたので私も付いていく。

羽美と勇希が和馬さんの横を取るかで揉めている。

「ママの横は?」

提案に、じゃんけんで負けた勇希がしぶしぶやってくる。

勇希が、私の髪で遊びだした。

すねているのは判る。

でも、地味に痛い。

髪を避ける。

「昔々、髪のお手入れが苦手なお姫様がいました」

いや、だからね。

「そのお姫様は、それをごまかすために。

可愛い帽子を被って過ごしていました。

でも、ある日意地悪な村人に。

その帽子を盗まれてしまいます」

それで、と続きを促す羽美の声。

続きによっては、泣きそう。

「村の人は皆に言いふらしました。

お姫様は、帽子の中に蛇を飼っていた。

だから、お姫様は帽子を被れなくなりました」

向こうの2人の話は、いいところ。

こっちの2人は私の髪をめぐって攻防中。

「困ったお姫様は、魔法使いに相談しました。

鈴のお姉さんは、髪の手入れの方法と。

魔法のくしをお姫様に渡しました」

…あとで、また鈴に連絡しないと。

勇希の手から髪を守りながら、思う。

「だから、ママの髪。あんなに奇麗なの?」

羽美の声。

確かに、今私の使っているのは鈴から貰ったもの。

髪に艶が出て、かなり気に入っているけど。

皆、何も言わないから気づいてないと思っていた。

でも、案外見ているものなんだね。

「で、村の人はどうなったの?」

悪いことをした人がどうなったか。

羽美の質問はごく自然。

いきなり、和馬さんこっちを向いた。

勇希が和馬さんの布団に引っ張り込まれる。

そして、私には聞こえない声で。

3人で内緒話。

しばらくして、涙目で戻ってきた勇希。

「ママ。僕の髪。蛇になってない?」

何度も確認してくるので。

なんとなく、話の内容は判った。

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