花見に行こう
【花見と言えば】
出かけた夜。
鈴に電話をする。
「今日、和馬さんと出かけたんよ」
その言葉に、鈴のテンションが上がるのがわかる。
「いや、だからデートと違う」
あれはたぶん、デートとは言わない。
「桜の花がいい感じ。花見、皆で行きたいなって」
あれ?言って考える。
鈴とわざわざ花見、行ったことあったっけ?
電話の向こうの鈴が考えている様子。
「花音。花見と言えば?」
花見と言えば?
「団子」
鈴が噴き出した。
「うん。わかった。
じゃあ、桜の花を見ながら美味しいもの食べよ」
うん。花見らしくて、いいかも。
「でさ、花音。直人は、私から言うね。
花音は、和馬さん誘って。どこ行くか決めて…」
…そんな、計画とか無理。
「鈴。頼めん?」
こういうのは、いつも鈴の方がしてくれるから…。
「わかった。直人と相談してみる」
鈴、いつも頼りにしています。
【花見と言えばお弁当】
『和馬さん、来てくれるって』
仕事終わり、鈴の通知に気づく。
『何したらいい?』
深く考えずに返信。
家に帰る方が忙しい。
家に戻る。
『じゃあ、和馬さんが迎えにいくから。
花音は、和馬さんと自分のお弁当を持って待っていてね。
追伸:私と直人の分は、私が作ります』
…なんでこうなったの?
鈴に即電話。
「直人に相談した。直人が和馬さんに電話」
うん。
「で、どっちが車出す?
いや、行先決める方が先ってなって」
花見スポットはたくさんある。
そこも判る。
「玉藻公園にしよう。
なら、和馬さんが花音を乗せて迎えに来てと」
うん。そこまでは、判っている。
だから、聞きたいのはそこじゃない。
「直人がどうせならお弁当が食べたいって。
近くのコンビニで買っても良かったけど。
うちら、お金貯めている最中なんよ。
お弁当作った方が、安上がりだし。
何度も和馬さんに奢ってもらうっていうのもねえ?」
…雰囲気的にそろそろだろうなあとは思っていたけど。
なるほど。事情は判った。
「流石に、4人はしんどいから。
和馬さんは花音に任せた」
切れる電話。
…
……
…ん?
この流れ、弁当を作る、だよね。
「おかーさーん」
慌てて、お母さんの姿を探す。
【お弁当の作り方】
台所にお母さんは居た。
晩御飯の用意をしている。
「え?そんなの自分でやって。息子でも無いのに」
いや、確かにそうだけど。
「学校のお弁当ですら、まともに作ってないのに。
まー、頑張って」
え?手伝ってもくれんの?
ネットを検索。
弁当 可愛い
キャラ弁なんて、どうやって作るか判らない。
あ、無理なやつ、却下。
弁当 美味しい
いや、何時起きよ
そもそも朝から包丁握ってなんて無理。
弁当 簡単
作る人には簡単かもしれない。
できるかも?はあることはあるけど。
あー。いや、全部は無理だな。
…どうしよ。
明日、仕事帰りスーパーに寄ってみよう。
予定は3日後。時間はまだある。
とりあえず、偵察の方向で。
―翌日
スーパーのお惣菜コーナー。
あ、ほとんど売り切れ。
いくつかまだ残っている。
ふむふむ。
待ち合わせの時間から考えて。
スーパーのお弁当は買えない時間だ。
とりあえず、作る方向で。
それっぽいものがあれば、それっぽくなるはず。
食料品は前日買えばいい。
今からなら、ギリ100均に間に合いそう。
急いで、お店に入る。
お弁当コーナーへ。
お弁当箱とお箸は、何度も作らないから使い捨て。
可愛いピックとお弁当カップは必要。
で、おにぎりの型は忘れちゃいけない。
とりあえず、会計へ。
家に帰ってから思いつく。
スマホを出す。
『今度の花見、楽しみですね』
和馬さんへ送信。
『楽しみにしています』
返信。
で、ここから。
食べたいものとかあります?
…これではダメだ。
難しいリクエストが来たら詰む。
無難な言い方。
『そういえば、食べられないものとかあります?』
少し間が開く。
『食べられないものは基本ないですね。
どこか食べに行きますか?』
食事の誘いじゃないけどな。
んー。
『今後の参考に聞いたまでです。当日お願いしますね』
送って気が付く。
今後の参考ってなんだ。
【準備万端】
お母さんから、帰り醤油買っといてと連絡が来た。
仕事帰り、スーパーに寄る予定。
ついでだから大丈夫。
とりあえず、おにぎり用のワカメ。
混ぜご飯なら簡単。
次、卵焼きが必要だから卵。
で…。
ブロッコリーは冷凍。
あと、唐揚げも冷凍で良いかな。
あと、プチトマト入れたら。
いける!
鈴たちとの待ち合わせはコンビニだって言っていたし。
足りなそうなら、その後買うとかすればいい。
家に戻ると。
「醤油は?」
あ、忘れていた。
「晩御飯は困らないけど、お弁当には使わないの?」
え、卵焼きって何入れたっけ。
お母さんに聞く。
「うちは、醤油、顆粒だし、砂糖」
醤油必要かも。
ネットで検索。
「えっと、塩と砂糖でも大丈夫なのね」
よし、準備万端。
今日は寝よう。
―朝。
「ご飯。炊けてない」
炊飯器は空っぽ。
お母さんは、朝食のトーストを食べている。
「基本、うちじゃ朝はパンじゃない」
そうだった。
「早炊きモード使わないの?」
トーストを食べ終えたお母さんが、隣に立つ。
「やり方知らない」
お母さんは、ささっと、お米を測り終える。
「だから聞いたでしょ。大丈夫?って」
と言いながら、お米を研ぎ、炊飯器へ。
ボタンをピッピと押して、炊飯モードへ。
「で、何するの?」
私は、えっと。
「とりあえず、卵焼き作る」
レシピを見ながら作る私をお母さんは眺めている。
「何?」
お母さんが変な顔をしている。
「少し塩入れすぎじゃない?」
見比べる。書いてある通り。
「まあ、食べる人がそれで良ければよいのよ」
謎の言葉を聞き流しつつ、お弁当を詰めた。




