お母さんへのサプライズ
【やり残したこと】
和馬さんの家に遊びに行った日。
一旦外に出ていた和馬さん。
お父さんと一緒に戻ってきた。
「花音も一緒に考えて」
和馬さんに言われて、首を傾げつつ。
お父さんの話を聞くことに。
「二人にお願いがあるんだ」
お父さんの手には本らしきもの。
お母さんが、喜んで見ていた結婚式の特集。
「実は。家内の話なんだ」
お義父さんが言うには。
二人の結婚式は、神社だったらしい。
そのあと、色打掛には着替えたものの。
色々な事情からドレスは着なかったそう。
当時は何も言わなかったらしいのだけど。
「今になって着たかったと言われても」
お父さん、落ち込んでいるんですけど。
「写真だけなら出来そうなんだ」
和馬さんも担当者に聞いてみたらしい。
前写しの時に、私と一緒に着ることは可能。
私としても協力するのは吝かではない。
「ただ。遠慮しそうで困っている」
問題は、着てもらう理由。
和馬さんの言葉にお父さんも頷いている。
幸い、お母さんズは2人で出かけている。
3人で、唸る。
「うちのお母さんとならいけるかも」
そう言えば、お母さん。
冗談で、一緒に試着しようかしら?
なんて言っていたのを思い出す。
お父さんの顔が輝いた。
「そういや母さん。来年還暦じゃ無かったっけ?」
本をぱらぱらとめくっていた和馬さん。
とあるページを開く。
なるほど。
お母さんズは同級生。
還暦フォトなら話をしても違和感がない。
「来週、花音のドレス見に行くよね。
花音のお母さんと一緒に来てもらおう」
3人で頷く。
話をしてみて、そこからどうするか考えよう。
【ドレス選びの日】
「花音ちゃん、こっち着てみて」
「これも良いわよ」
案の定、お母さんズは盛り上がっている。
お父さんズは、早々にソファへ避難。
和馬さんはひたすら写真係。
「私も着たかったわ」
和馬さんのお母さんの一言。
「良いわよね。ウエディングじゃなくても。
可愛いドレス一杯あるもの」
うちのお母さんも乗ってきた。
話をするなら今。
和馬さんに目で合図。
和馬さんも頷いて、担当者の方に歩いて行った。
「記念に撮る?還暦フォトなんてあるみたいよ」
私の言葉に、お母さんズ興味を持ったよう。
「還暦フォトねえ。面白そう」
うちの母は乗り気。
「恥ずかしいわよ。今更」
和馬さんのお母さんは少し考えているよう。
「でも、同級生呼べば楽しそうよ?
グループだと恥ずかしいより同窓会みたいで」
うちの母、いつの間にかパンフレットを持っている。
さすが担当者。ちゃんと営業している。
「じゃあ、何人か聞いてみる?」
和馬さんのお母さんも、その気になった?
「よろしければ、試着されますか?」
担当者の人。すかさず、お母さんズを誘導。
お母さんズちょっと照れながらドレスを選んでいる。
私と和馬さんは、休息も兼ねてソファへ移動。
入れ替わりに、お父さんズがカメラを構えた。
「これでいいの?」
隣の和馬さんを見上げて聞く。
「うん。もう担当の人とは話した。
還暦フォトは担当者が違うらしいけど。
これで、前写しの時は一緒に撮影できるって」
両親たちは、こっちの話なんて気づいていない。
ふふ。うちのお母さんもびっくりするかもなあ。
【撮影は】
前写しは、桜の咲く頃。
これは大事。
初めて2人で出かけた日。
手を繋いだ日。
私のお弁当を食べてもらったのも、花見が最初。
担当の人からは、予約した時、
確実じゃ無いですよ?と念を押されたけど。
同じ日なら、ある意味記念にもなる。
場所も記念公園。
自分がここで写真を撮るとは。
一年前の私が聞いたらびっくりするなと思いつつ。
スタジオで準備。
先にスタジオで撮影がある。
私が出るのと入れ替わりに。
お母さんズが担当者に呼ばれた。
お母さんズ、多分着物を着ると思っているはず。
用意されたのを見たら驚くだろうな。
お父さんズもそわそわ。
そりゃ、何度も試着の写真を見て選んだものが。
今晴れ舞台になると思うと気になるのはわかる。
「今、主役が誰か忘れているね」
思わず、和馬さんに耳打ち。
和馬さん、顔が近づいてきた。
耳打ち、じゃない。
頬に当たった。
思わず、目の前に居た担当者を見る。
預けたカメラを構えていた担当者。
サムズアップしているんですけど。
「花音独り占め出来るからこれはアリ」
だから、そういう問題じゃない。
お母さんズが気にはなるけど、自分の方が大事。
言われるがままに、ポーズを取る。
さすがプロ。
淀みなく、次々とカメラに収める。
一応最初の予定が終わったらしい。
次の準備が終わるまで、一旦待機。
丁度その頃、お母さんズの支度も終わったよう。




