情報収集に出る
【ホワイトデーと誕生日】
「鈴。どうしよ」
ホワイトデーの日が和馬さんの誕生日。
本気で悩む。
来年から息子の誕生日を祝う!
お父さん、すでに張り切っている。
だから、二人で祝う誕生日は最初で最後。
バレンタインのリベンジもある。
忙しい。でもやりたい。
かといって何をしていいか。
「とりあえず、クッキーでも作る?」
鈴からの助言。
定番ではあるけど。
この前、鈴からおめでたい話を聞いたばかり。
鈴に手伝って貰うのは無理。
作り方をお父さんに聞く?
それは、違う。
ネットで検索?
「そういえば、茜さんから。
花音に会いたいって人たちがいるって」
茜さんの友達ってことは。
和馬さんのことを知る人たち。
ここで辞退したら、負けた気がする。
それに、もしかしたらヒントが得られるかも。
なら、会う以外の選択肢はない。
鈴は行けないとのことなので、私1人。
【作るもの作れないもの】
ファミレスに着くと、そこには。
「こっちこっち」
茜さんと、そのお友達。
茜さんのお友達だけあって。
雰囲気は華やか。
こっちも、万全の態勢で受ける構え。
「ごめんね。説明しても、皆納得してくれなくて」
茜さんがいきなり謝る。
皆の様子を見ても、私に対する敵対心というより。
なぜか、同情されている視線。
「花音ちゃん、和馬くんに騙されてない?」
えっと?何故でしょう。
茜さんの左隣りの人からも。
「和馬くんにいじめられてない?」
この人たち、何を言っているのでしょう。
「だから、花音ちゃん困っているでしょ?」
茜さん、通訳お願いします。
「大学時代の和馬さん。
男の人相手には普通に話すけど。
女の人相手には塩対応だったと?」
要約するとそんな感じのようだ。
もしかして、この中に告白した人がいる?
「ないない。だったらそんな話をしない」
それもそうか。
ジュースを飲んで、落ち着いて。
「何故そう思ったんですか?」
まずは、理由から聞こう。
「私の誕生日に彼がケーキをくれて。
食べたら美味しくてさ。
聞いたら、和馬くんに材料渡して作って貰ったって」
その話は聞いたことある。
材料持ってきて貰って。
作った材料の余りを貰っていたらしい。
買うと高い。
でも、材料だけなら意外に安い。
もちろん、状況によって高くなることもあるけど。
その辺は皆で上手く調整していたようだ。
「だから、和馬くんにレシピ聞いたのよ。
そしたら、レシピ渡されたの。
今まで見たこともない数式が並んでいてさ。
どうやって作るのと聞いても後は考えてと」
うん。わかった。
茜さんを見ると頷いている。
たぶん、肉じゃがと同じ光景。
分量を好みに合わせてとかそんな理由。
でも、彼女にそれを教えてあげる義理はない。
もう1人の方にも聞く。
「うちも、レシピ貰ったのよ。
こっちも同じで、魔法陣を渡されて。
これ何?って聞いたら。
相手の好みに合わせた。
いや、いちごの切り方の角度なんて知らない。
おまけに後日、お礼にクッキー持っていったら。
彼氏経由で戻ってくるし」
茜さんを見る。
やはり頷いている。
その理由もなんとなくわかる。
おそらく、固まっている間に押し付けられて。
その後、返し方が判らず、彼氏経由になった。
いちごは、何だろう。
おそらく、何か出来そうな気がするけど。
だからと言って、教える理由も無いけど。
「絶対結婚したら苦労すると思うのよ。
でも、茜は大丈夫だって言うんだけど。
花音ちゃんから見てどうなの?」
なんとなく、事情は分かった。
心配される理由も。
ここでお礼を言うのは違う気がする。
かと言って、庇うのは嫌。
庇わないのも嫌。
加減が難しい。
「女心がわからないは当たっているかも」
私の返事に、皆が頷く。
慎重に言葉を探す。
でも、正解が見当たらない。
だから確実なことだけ。
「でも、それ込みで好きだから。
仕方ないんです」
沈黙。
ふふん。これ以上の反論があったら聞くよ?
「ほら、大丈夫って言ったでしょ?」
茜さんの一言でこの話はおしまい。
ジュースを一口。
思っていたより喉が渇いていたみたい。
でも、ここに私が来た理由。
本当は別のところにある。
「それよりも、何か興味あるもの知りませんか?
和馬さんの誕生日が近くて」
思い切って聞いてみる。
これまでの話の様子では。
あまり当てにならないかも。
「興味のあるものねえ?
本じゃない?
よく図書館に居たみたいだし」
本は知っている。
一緒に図書館に行くし。
「あと、変なところでロマンチストじゃ無かった?
ほら学園祭の時、台本お願いしたら」
そう言えばと皆が頷く。
なんの話?
「シンデレラだっけ。
主役の二人それで付き合い出したの」
そういえば、私のこと人魚姫とか言っていたし。
そういう物語が好きなのは当たってそう。
「そうそう、王子役の子。
可哀想に会場中走らされてさ。
あれはウケたかも」
身内で、だんだん盛り上がってきている。
私は、完全に聞き役。
「でさ、いまだに謎なんだけど。
ラスト、会場の中で見つけた後。
クルッと周ったらドレスに変わったの。
あれ、どうなっていたの?」
いや、私に聞かれましても。
それは、さすがにわからない。
「その動画あるよ。観る?」
茜さんの一言。
観たい!
会場中をガラスの靴を持って走る王子役らしき人。
あ、彼女を見つけたみたい。
手を取って中央の開けた場所へ。
当たるスポットライト。
会場で紛れてもわからない服装。
本当に普通の服装に見える。
あ、女の子がくるりと周った。
一瞬にして、服がドレスに変わった?
ドレスが煌めいて綺麗。
二人が手を取って舞台に上がると。
誰かがティアラを乗せている。
ここで、映像は終了。
「このドレス作ったのも和馬くんらしい。
当事者に聞いても仕掛けは教えてくれないし。
マジックの応用らしいけど。
どんだけ器用なのよ」
なんか、すいません。
あ、でもそう言われれば。
思い当たることが一つ。
「だから、結婚式の余興の衣装。
和馬さんが持っていたのね」
その言葉に皆が止まる。
「ちょっと待って。
料理出来る。裁縫出来る。
洗濯出来る。掃除出来る。
彼氏にはアレだけど、結婚するには当たりじゃ」
…そんな目で見てもあげませんよ?
「そもそも相手にすらされないし、ナイナイ。
花音ちゃんみたいなのが好みなら更にないわ」
私の視線を感じた1人が吹き出している。
「だよね。可愛いは作れるけど、天然は作れない」
それ、褒めています?天然って、酷くありません?
結局、ヒントを得たのかわからないまま解散。




