続く話
【本当の】
「花音。帰るよ」
和馬さんの声に顔を上げる。
いつの間にか、二次会が済んでいたらしい。
和馬さんが私の手を引いて車に乗せる。
周りの視線は感じるけど。
今更感の方が大きい。
「花音、大丈夫?」
こくりと頷く。
でも、頭の中がぐちゃぐちゃで言葉にならない。
出る前は、あれほど言いたい言葉があったのに。
そんな私を知ってか知らずか。
左に曲がる道を右へ曲がる。
「あれ?この道」
途中で同じ道に合流するから。
行き先は変わらない。
でも、この道は海沿いをうねりながら走る。
「ライトアップ見たいから」
目の前には瀬戸大橋が光って見える。
「本当だ」
海の向こうには岡山。
途中の広い場所で車を停めて降りる。
「暗いから気をつけて」
ガードレール横にある階段。
和馬さんに案内されながら。
月明かりを頼りに降りると。
そこには、2人のためだけにあるような景色が存在した。
満月の光。
橋の光。
岡山の街の光。
全ての光が海に反射して、別世界のよう。
「ちょっとした穴場」
ここは通ることはあっても、普通なら気づかない場所。
いつからかはわからない。
あの忙しい中、探したんだろう。
私のために。
「結婚しよ」
自然に口からセリフが溢れる。
「いや、先にセリフ取らないで欲しいんだけど」
いや、さっき言ったよね。
和馬さんの目を見る。
和馬さんの中ではやり直したいらしい。
初デートが4回もある私たちだ。
プロポーズだって、何度あってもいい。
続きを促す。
「好きだよ花音。ずっと一緒に居よう」
こくりと頷く。
「料理は頑張る。和馬さんより下手だけど。
掃除は得意。任せて。それから、それから…」
嘘みたいに止まらない言葉。
和馬さんの両手が私の頬に触れる。
…続きまだ、あったんだけど。
目を瞑ると。
少し前まで一緒に飲んでいたコーヒーの味がする。
それと、私より早い鼓動の音。
耳元に聞こえる、愛の言葉。
多分、私の鼓動の方が早い。
その後の返事は、なんて返したか覚えていない。
【そして、今】
「…花音?」
その言葉にはっとする。
目の前には、ご飯に飽きた子供たちが。
ボールを追いかけて走っている。
「寝ていた?」
ちょっとぼんやりしていたみたいだ。
「仕方ないよ。朝早くからお弁当作っていたし」
和馬さん、あの頃より笑顔が穏やかだ。
「リクエスト全部入れたかったから」
キャラ弁は可哀想だからと言って食べない。
でも、その代わりのようにリクエストは多い。
だから、手間はどっちもどっちな気がする。
「花音が作ったら全部食べるのに。
僕が作ったら残すのは納得がいかない」
和馬さんのボヤキ。
和馬さんが作った力作。
子供たちが泣いて可哀そうと食べなかったあの時。
あの時は、写真に撮って慰めてと。
大変だったのを思い出す。
「それは、判っている。それじゃなくて普段の方」
あ、子供たちが気づいて戻ってきた。
「お母さん、あのね。
今度水族館行きたい」
「今度は、お城。お城にしよ」
やっぱり子供たちは、誰に似たのか賑やかだ。
「花音、散歩しよう」
いつのまにか、お弁当は片付けられている。
和馬さんが差し出す手を握って立ち上がる。
和馬さんと子供たちが協力して、シートを片付ける。
「もう少しで、桜が咲きそう」
走り去る子供達の後ろを。
2人で手を繋いで歩く。
ギュッっと握ると、握り返してくれる。
そこは、あの頃と変わらない。
「次は、僕が作る」
そんなにムキにならなくても。
それに、子供たちが残す理由は。
和馬さんが、苦手な野菜食べさせようと。
こっそり入れているのがバレているからだよ。
「あ、ずるい」
手を繋いでいるのを見た子供たちが戻ってくる。
残念。もう少し見つからないと思っていたのに。
でも、こうやって皆で手を繋ぐのも。
幸せを感じる瞬間だから、大事にしたい。
ここで、本編は最後です。
あとは、書き残した部分をぼちぼちあげる予定です。




